130 家を建てなくなった日本人? - 新設住宅戸数と床面積

日本では住宅に対する投資(総固定資本形成)が減少しています。利用関係別の新設住宅戸数や床面積の推移から、より具体的な変化を確認してみます。

1. 新設住宅の個数・床面積

前回まで、日本の物価比率について着目してみました。

日本の物価比率を構成する食品や建設など、一部極端に価格が高いものもありますが、全体としては1990年代の高い水準から、近年ではやや先進国平均並みまで下落しているという事がわかりました。

名目上の価格は下がっていても、実質的に豊かになっていれば良いのではないかというご指摘もあるかと思います。

今回は、日本経済の実質的(数量的)な変化がわかる指標として、新設住宅の統計データを見てみましょう。

新設住宅 戸数・床面積

図1 新設住宅 戸数・床面積 推移
(建築着工統計調査 より)

図1は建築着工統計調査から、長期の新設住宅戸数合計床面積の推移データです。

戦後1950年あたりから急激に増加し、1972年頃をピークにして一度急落して上下した後、1997年あたりから急激に減少しています。
よく見ると、1984年あたりから上昇し、バブル崩壊とともに減少傾向となっている様子も見て取れますね。

新設住宅の戸数のピークは1973年の191万戸です、2019年では91万戸ですので半減している状況です。
現役世代の人口そのものが減少している事もありますが、当時からすると家を建てる個数そのものが大きく減少している事になります。

2. 利用関係別の新設住宅戸数

新設住宅 戸数 利用関係別

図2 新設住宅 戸数 利用関係別
(建築着工統計調査 より)

図2はもう少し詳細な、利用関係別の新設住宅戸数の推移データです。
それぞれの区分は次のように説明されています。

持  家: 建築主が自分で居住する目的で建築するもの
貸  家: 建築主が賃貸する目的で建築するもの
給与住宅: 会社・官公署・学校等が、その社員、職員、教員等を居住させる目的で建築するもの
分譲住宅: 建て売り又は分譲の目的で建築するもの

このグラフをみると、利用関係によって特徴が分かれるようですね。
持家は1970年代後半から、減少傾向が続いている状況です。
貸家は1971年と1988年に2つのピークがありますが、現在はピークからかなり減少しています。

一方で、分譲住宅は1973年まで急増した後、多少のアップダウンはありますがある程度一定した推移をしています。
特に分譲の一戸建て(いわゆる建て売りなど)はずっと一定しているのは興味深いですね。

日本経済の転換点である1997年と、直近の2019年の新設戸数の変化を見てみましょう。

日本 新設住宅 戸数
   1997年→2019年
総  数: 139万→91万 (-48万)
持  家: 48万→29万 (-19万)
貸  家: 53万→34万 (-19万)
分譲(一戸建)  : 14万→15万 (+1万)
分譲(マンション): 21万→12万 (-9万)

この20数年で3割以上も新設住宅が減っています。
持家に至っては、4割の減少です。
一方で、分譲の一戸建てはむしろ若干のプラスとなっています。

3. 利用関係別の平均床面積

新設住宅 1戸あたり平均床面積 利用関係別

図3 新設住宅 1戸あたり平均床面積
(建築着工統計調査 より)

合計床面積と新設住宅戸数の合計から、1戸あたりの平均床面積を算出したグラフが図3です。

平均床面積は、1980年頃にかけてどの区分でも増加を続けています。
1980年を機に貸家が、1986年を機に給与住宅が減少・停滞していますね。

持家は1996年の140.6m2をピークに減少しています。
分譲マンションは2001年の94.9m2をピークに減少傾向ですね。

興味深いのは分譲の一戸建てです。
新設戸数は横ばいでしたが、平均床面積もずっと横ばいですね。
近年では持家との差が縮まっているようです。

1997年と直近の2019年とで、平均床面積の変化を比べてみましょう。

日本 新設住宅 平均床面積
  1997年→2019年
総  合: 93.1→ 82.7 (-10.4)
持  家: 139.6→119.1 (-20.5)
貸  家: 52.5→ 47.4 (-5.1)
給与住宅: 71.9→ 65.6 (-6.3)
分譲(一戸建)  : 104.0→103.9 (-0.1)
分譲(マンション): 85.4→ 71.5 (-13.9)

やはり持家の減少が大きいですね。
一方で分譲の一戸建はほとんど変わっていません。
分譲マンションや給与住宅、貸家も相応に減少しています。

総合すると、住む家が総じて小さくなっているという事が言えそうです。

核家族化単身世帯の増加が進み、1戸あたりの居住人数が減っている事もあるでしょうし、単純に建築費を抑えるためなどコンパクトな住居を志向するといった事も考えられそうですね。

4. 日本の新設住宅の特徴

今回は、建築着工統計から、日本人の住宅事情について着目してみました。
1990年代後半から、家を建てる人が少なくなり、建てる家も小さくなっている事がわかりました。

住宅は結婚や出産を機に購入する人が多いですね。
若い世代の人数が減っている事もあると思いますが、更に低所得化により購入が減っている事も考えられそうです。
特に男性の労働者は1998年から2010年頃にかけて、どの世代でも平均給与が減少していました。

1戸あたりの平均床面積が減少傾向なのも、所得の低下を反映しているのかもしれませんね。

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