163 住宅という家計の資産 - 住宅資産の国際比較

住宅は家計にとっての生産資産の多くを占めます。人口1人あたりの水準で、住宅資産の推移を国際比較してみます。

1. 日本の住宅資産

前回は、非金融資産の国際比較をしてみました。
非金融資産は、土地や漁場などの非生産資産と、住宅、機械設備などの固定資産を主とする生産資産に分かれます。

日本の非金融資産は主に1980年代後半に不動産バブルによる非生産資産の急激な上昇によって、大きく増大しました。
バブル崩壊後、非生産資産が徐々に下落し、生産資産が徐々に増加することで、合計値として停滞しているような状況です。

今回からは、生産資産の大部分を占める固定資産を構成する住宅機械・設備その他の建物・構築物それぞれがどのような変化をしてきたのか確認していきます。

GDPのうち総固定資本形成が1年間の流れを示すフローとなりますが、生産資産はその蓄積としての残高=ストックを表しますね。
蓄積した富の大きさを表す指標といえます。
もちろん、固定資産は減耗により価値を減らしていきますので、投資分と減耗分の差引で現在価値が推移していきます。

まずは日本の住宅の資産残高の推移を眺めてみましょう。

生産資産 住宅 日本

図1 生産資産 住宅 日本
(OECD統計データより)

日本の生産資産(固定資産)のうち、住宅は1990年代半ばから約400兆円でほぼ一定で推移しています。

総固定資本形成(投資)は目減りしているので、固定資本減耗により目減りする分とちょうど釣り合うくらいの水準で推移しているという事になりますね。

2. 1人あたり住宅資産の推移

続いて、人口1人あたりのドル換算値で住宅の資産価値を国際比較してみましょう。

生産資産 住宅 1人あたり

図2 生産資産 住宅 1人あたり ドル換算
(OECD 統計データ より)

図2が生産資産のうち住宅について、1人あたりのドル換算値の推移をまとめたグラフです。

日本は他の指標同様に1995年まで、住宅の資産額が増大しアメリカを抜く水準まで高まっています。
ただし、当時のフランスやドイツと比較すると、かなり低い水準であったようです。

日本はその後停滞を続け、最近では韓国に抜かれています。
アメリカや、ドイツ、フランスには大きく差をつけられていることがわかりますね。

住宅は家計の主要な固定資産ですが、フローが停滞することで、その価値の蓄積も相対的に下がっているようです。

3. 1人あたり住宅資産の国際比較:1997年

つづいて、日本の経済指標がピークとなった1997年の住宅資産について国際比較してみましょう。

生産資産 住宅 1人あたり 1997年

図3 生産資産 住宅 1997年 1人あたり ドル換算
(OECD 統計データ より)

図3が1997年の国際比較です。
この時日本は国内経済(平均給与、1人あたりGDPなど)がピークとなり、ドル換算値(為替レート換算)でも非常に経済指標の高かった時期です。
先進国の中でも1人あたりGDPや、平均給与がOECDで3~4番目に位置した時代ではありますが、生産資産 住宅の価値はそこまで高くない事がわかります。
22,824ドルと平均値(21,474ドル)をやや超えて、30か国中13番目の水準ですね。

平均よりやや多い程度です。
この時はドイツ(40,830ドル)が非常に高い水準であることも興味深いですね。

4. 1人あたり住宅資産の国際比較:2018年

つづいて、2018年の国際比較です。

生産資産 住宅 1人あたり 2018年

図4 生産資産 住宅 2018年 1人あたり ドル換算
(OECD 統計データ)

図4が2018年の国際比較です。

相変わらずドイツ(77,734ドル)やフランス(82,267ドル)は高い水準です。
日本は26,926ドルで32か国中23番目で、G7中最下位で韓国に抜かれています。

OECDの平均値は47,643ドルなので、先進国の中では非常に低い水準です。
日本は金融資産は先進国の中でも上位なので、住宅などの固定資産よりも、金融資産(主に現金・預金)を資産として持つ傾向にあるのかもしれません。

5. 住宅資産の成長度合い

次に1997年を基準とした成長度合いを眺めてみましょう。

生産資産 住宅

図5 生産資産 住宅
(OECD統計データ より)

図5が1997年を基準(1.0)とした住宅の倍率です。
ドル換算値だと為替の影響を受けますので、自国通貨ベースでの倍率を計算した比較です。

日本は横ばいで全く増えていませんが、ドイツやイタリアで約2倍、フランスで2.5倍、韓国で5.5倍になっています。

6. 住宅資産の特徴

日本の住宅は、1990年代に比較的高い水準に達しましたが、その後は横ばい傾向で近年では先進国で少ない方になる事がわかりました。

日本の場合、少子高齢化と勤労世帯の低所得化が進み、家を買う(買える)人が減っているという事も事実ですね。
 参考記事: 家を建てなくなった日本人?
 参考記事: 意外と多い日本人の金融資産

また、日本は木造住宅が多いので、コンクリート造などと比べると耐用年数が短いとされています。
固定資産としての資産価値が目減りするスピードが速いという事も加味する必要があるかもしれません。

住宅投資によって増える分と、減価していく価値がちょうど釣り合う程度で推移しているという特徴は大変興味深いと思います。

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