174 消費者物価指数の中身とは? - 詳細項目の国際比較
消費者物価指数は、食料や通信、教育など私たち消費者が購入するモノやサービスの価格の総合指数です。詳細項目ごとの物価指数を見る事で、その傾向や特徴を可視化してみます。
目 次
1. 消費者物価指数とは
前回は、国政選挙の投票率について、日本と他国との比較をしてみました。
日本の投票率は、先進国の中でもかなり低い水準であることがわかりました。
また、投票率と生活満足度には強い関係があり、日本はいずれも低い水準の国となっているようです。
今回は、少し目線を変えて物価についての統計データを見てみたいと思います。
物価については、今までも取り上げてきました。
参考記事: 物価ってなに!?
参考記事: 実質と名目の違いとは?
物価はモノやサービスの値段を総合した指標ですね。
私たち企業からすれば、売値=販売価格を総合した指標となります。
日本は長い間物価が停滞してきたとされます。
この物価の代表的な指標は消費者物価指数とGDPデフレータです。
これらの指標はどのように決まっているのでしょうか?
私も経済素人なので、実際的な計算手法を詳しく知っているわけではありませんが、これらの物価指数は個別の価格を統合して作成されたものだそうです。
具体的には、消費者物価指数は、食品や家具、住居など、私たちの身近なモノやサービスの物価から成り立っています。
GDPデフレータは、家計最終消費支出や総資本形成などの支出面の物価や、工業や一般サービス業などの生産面の各産業の物価を統合したものになるようです。それぞれの構成項目は更に詳細項目を統合した指標となり、最終的には個別の価格となるようです。
今回はまず消費者物価指数(CPI: Consumer Price Index)について、各国ごとに詳細項目の推移を見ていきたいと思います。
OECDで集計されている消費者物価指数は、次の項目から構成されているようです。
・食品・飲料
・アルコール・たばこ
・衣料
・住居・水・電気・ガス
・家具・家電
・健康
・交通
・通信
・文化・レジャー
・教育
・外食・外泊
・その他
・エネルギー
今回は主要先進国の国ごとに各指標の推移を見ていきましょう。
2. イギリスの消費者物価指数
まずは、イギリスの消費者物価指数の詳細項目の推移です。
図1 消費者物価指数 イギリス
(OECD 統計データ より)
図1がイギリスの消費者物価指数の推移です。
1996年を基準(1.0)とした場合の倍率として推移を示しています。
CPI(黒)が総合の消費者物価指数を表しています。
CPIは概ね年率2%の成長がある事がわかります。
各詳細項目は、CPIよりも高い項目もあれば、低い項目もあります。
また、マイナスとなり値段の下がっている項目がある事もわかりますね。
具体的に見てみましょう。
「教育」を筆頭に、「エネルギー」「たばこ・アルコール」「外食・外泊」「健康」「交通」といったあたりが大きく物価上昇しています。
一方で「家具・家電」「文化・レジャー」は物価上昇していますが、低い水準ですね。
「食品・飲料」は総合指数CPIとほぼ同じレベルで推移しています。
「通信」は一度マイナスになった後に上昇しています。
「衣料」が大きくマイナスになり停滞しています。
衣料は1996年の水準から約半分になっているのが特徴的ですね。
総合指数は直近値で1996年の1.6倍になっています。
3. 韓国の消費者物価指数
続いて韓国のデータです。
図2 消費者物価指数 韓国
(OECD 統計データ より)
図2が韓国の消費者物価指数です。
やはり「エネルギー」と「アルコール・たばこ」が大きく増大していて、「通信」がマイナスです。
「食品・飲料」も大きく値上がりしているのも特徴的です。
総合指数(CPI)は2012年ころまでは年率3%以上で推移していますが、この8年程は緩やかになっています。
1996年と比べると1.8倍ほどの物価になっています。
4. ドイツの消費者物価指数
次はドイツのデータです。
図3 消費者物価指数 ドイツ
(OECD 統計データ より)
図3はドイツのグラフです。
「エネルギー」「アルコール・たばこ」が値上がり、「通信」がマイナスという傾向は共通です。
通信以外は概ね右肩上がりですね。
総合指数(CPI)は1.4倍ほどとなっています。
5. フランスの消費者物価指数
続いてフランスです。
図4 消費者物価指数 フランス
図4がフランスの消費者物価指数です。
「通信」がマイナスで、他の物価指数の多くが上昇傾向なのは他国と共通です。
一方で、「健康」や「文化・レジャー」がややマイナス気味なのが特徴的ですね。
2020年では、総合値(CPI)は1996年に対して1.4倍弱となります。
6. イタリアの消費者物価指数
次はイタリアの消費者物価指数です。
図5 消費者物価指数 イタリア
(OECD 統計データ より)
図5がイタリアのグラフです。
やはり共通するのは「アルコール・たばこ」「エネルギー」が値上がりし、「通信」が値下がりしている事ですね。
それ以外は概ね右肩上がりで値上がりしています。
総合指数は1996年に対して2020年で1.5倍程度です。
7. 日本の消費者物価指数
それでは、最後に日本の消費者物価指数を見てみましょう。
図6 消費者物価指数 日本
(OECD 統計データ より)
図6が日本のグラフです。
他の国と比べると大きく値上がりしている項目がなく、マイナスの項目が多いですね。
ちょっとわかりにくいので、縦軸の範囲を変えてみます。
図7 消費者物価指数 日本 拡大
(OECD 統計データ より)
図7が縦軸の表示範囲を変えて拡大したグラフです。
他国と同様に、「エネルギー」や「アルコール・たばこ」が値上がり気味である事と、「通信」が値下がりしている事は共通のようです。
特徴的なのは、「家具・家電」と「文化・レジャー」が大きく値下がりしている事ですね。
それ以外の項目も、他国と比べるとほぼ横ばいですが、2014年以降でやや増加傾向にあるようです。
特に「食品・飲料」が急激に値上がりしています。
「外食・外泊」も値上がりが大きくなっていますね。
総合指数(CPI)は、1996年時点に比べて1.04程度でほとんど変化がありません。
8. 消費者物価指数の特徴
今回は私たちに身近なモノやサービスの値段を表す消費者物価指数について、主要国との比較をしてみました。
各国とも共通するのは「アルコール・たばこ」「エネルギー」が値上がりしていて、「通信」が値下がりしている事ですね。
アルコール・たばこは税率が高くなるなどで値上がりしている事が想定されますし、エネルギーは原油価格の継続的な値上がりという面があると思います。
通信は携帯電話料金の継続的な値下げが、日本だけでなく先進国全般で進んでいるという事が言えそうですね。
物価にはある程度性能面も加味されているそうですので、通信速度の向上により、単位性能あたりの値段が下がっている事も含まれているようです。
日本は多くの項目で横ばいかマイナスの傾向です。
物価はまさしくモノやサービスの総合的な値段ですね。
物価が横ばいという事は、私たち企業から見れば販売価格をこの数十年間上げられていないという事になります。
他国はインフレの中で、日本だけ物価が停滞しているという事になります。
表現を変えれば、モノやサービスの値段を上げるのが普通の世界にあって、日本だけ値段を据え置きまたは値下げをしているという事になります。
国際的な物価の成長度合いで比べると、日本国内で物価が停滞している間に、他国のモノやサービスが高くなっているわけですね。
日本は1990年代に物価水準が極めて高くなり、国内物価の停滞と共に下落し、現在は先進国中位です。
このまま物価が停滞していると、他国のモノやサービスが高くて買えないといった事態にもなっていくのではないでしょうか?
つい最近も、iPhoneが他国と比べると日本での販売価格が大幅に安いというニュースなども出ていました。
つまり、家計の購買力が下がっているので、モノを安くしないと売れないという事ですね。
世界標準の価格になったときに、日本の家計はそれを容易に買えるだけの購買力があるのかといった観点も必要と思います。
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