182 少子高齢化する先進国 - 世代別人口比率の国際比較
日本は世界に先駆けて少子高齢化が進んでいると言われます。高齢人口、若年人口、労働世代人口の世代別に人口比率を計算すると、日本の特徴がよくわかります。
1. 高齢人口比率の推移
前回は、OECD各国とBRICSについて人口の推移をご紹介しました。
G7の主要国でも、日本やドイツなど人口が減少する国と、アメリカやイギリスのように人口が増加していく国とに分かれるようです。
一方で、ラトビアやハンガリーなど既に人口が減少して久しい国々もある事がわかりました。
少子高齢化は先進国各国共通の問題とされています。
日本は他国に先駆けて急激に少子高齢化が進み、人口が減少していくと予測されています。
今回は、高齢人口(65歳以上)、若年人口(20歳未満)、生産年齢人口(20~64歳)が全体の中でどういった割合で推移していくのか、可視化していきたいと思います。
日本は長寿命である事で有名ですね。
まずは高齢人口の比率から見ていきましょう。
図1 高齢人口 比率 OECD+BRICS
(OECD統計データ より)
図1はOECDとBRICS各国の人口のうち、65歳以上の高齢人口の占める割合をグラフ化したものです。
2018年までは実績値、2019年以降は推測値となります。
直近の2018年時点では、日本は突出して高齢人口比率が高い事がわかります。
28%程度と、4人に1人以上は65歳以上の高齢者という事になります。
今後の推移を見てみると、日本は徐々に増加が緩やかになっていき2050年では37%程度になる見通しとなります。
3人に1人以上は高齢者という事になります。
他国の状況を見ると、各国とも高齢人口比率は右肩上がりに増加していきます。
韓国の増加具合が特に急激である事が特徴的ですね。
2018年時点では日本と大きく差がありますが、2050年には日本を抜いて40%にまで達します。
その他の国でもイタリアやドイツが比較的高い水準に達する事になります。
イギリスやフランスよりも、中国の割合が高くなると予測されているのも意外ですね。
2. 若年人口比率の推移
続いて、20歳未満の若年人口の割合を見ていきましょう。
図2 若年人口 比率
(OECD統計データ より)
図2が20歳未満の若年人口比率です。
日本は1970年の時点で既に低い方ではありましたが、ドイツやイギリスなどよりも大きな割合だったようです。
2018年時点では17%程度と最も低い水準でが、ドイツ、イタリア、韓国と近い数値です。
2050年には15%を切る事になります。
韓国がすごい勢いで少子化が進み、2050年には13%を切り先進国で最も若年人口比率の低い国となっています。
イタリア、ドイツも日本に近い程度になりますね。
アメリカやイギリス、フランスなども含め、全体的に若年人口比率は下降していきます。
3. 生産年齢人口比率の推移
続いて、20歳~64歳の生産年齢人口についてみていきましょう。
実際にこの生産年齢人口の労働で、全人口を支えていく事になりますので、経済的には最も重要な指標と言えると思います。
図3 生産年齢人口 比率
(OECD統計データ より)
図3が20歳以上65歳未満の生産年齢人口比率です。
日本はもともと比較的高い水準でしたが、2000年あたりから急激に下降し始め、2018年時点では55%程度とOECDで2番目に低い水準です。
その後はそのまま最低水準をキープしながら、2050年には48%程度まで下降し、韓国と同水準となると推定されています。
グラフの縦軸に注目していただきたいのですが、生産年齢人口は各国ともかなり狭い範囲に収斂していく事が予想されています。
2050年には48%(日本・韓国)~56%(アメリカ)の範囲に多くの国が収まるようです。
高齢人口比率が22~40%、若年人口比率が12~24%と開きがあるのに比べて、非常に狭い範囲に収斂していきます。
図4 生産年齢人口比率
縦軸範囲を0~100%にすると、図4のようになります。
確かに日本は生産年齢人口比率が低い水準で推移していきますが、実はこれくらいの範囲の差でしかないというのは意外な事実ではないでしょうか。
4. 世代別人口の特徴
今回は各国の世代別人口の比率をご紹介しました。
日本は、高齢化と共に少子化も進むため、生産年齢人口の占める割合がそこまで大きく他国と差が付いているわけではないようです。
つまり、経済においての生産年齢人口の負う負担は、先進国各国とも似たり寄ったりで、そこまで差異はなさそうだという事になりますね。
直近の2018年においても、日本の55%に対してカナダが61%で、その間にほとんどの主要国が収まります。
高齢人口が多い事ばかりがフォーカスされがちですが、少子化も進んでいるため若年人口が減っている事はあまり意識されていないように思います。
「日本は少子高齢化が進むから経済成長ができない」とか、「1人あたりGDPで評価しようとすると仕事をしていない高齢者が多い日本は数値が低くなって不利になる」といった意見を聞く事もありますが、生産年齢人口比率の差異はせいぜい10%前後である事からその影響は限定的であると言えるのではないでしょうか。
もちろん日本は少子高齢化や人口減少の影響を強く受けている事は間違いないと思います。
しかし、世代別に見ても各世代で平均給与が下がっている事は、人口問題だけからは説明がつかないように思います。
参考記事: 豊かになれない日本の労働者
人口問題はあったとしても、さらに他の要因もあると考えるのが自然だと思います。
皆さんはどのように考えますか?
参考:最新データ
(2024年1月追記)
図5 生産年齢人口比率
(OECD統計データより)
最新の2022年の状態では、日本の生産年齢人口比率は55.0%でフランスの55.3%とかなり近い水準です。
日本は低下傾向から停滞が続いていますが、他の主要先進国は低下傾向が継続していますので差は少し縮まっているようですね。
カナダが60.1%、ドイツが59.2%、アメリカ、イギリスが58.3%です。
このグラフは1960年からと範囲を広げていますが、1960~1970年で他国の生産年齢人口比率が低下していくのに反して、日本は上昇していたのが特徴的です。
その後、日本は60%今日で高い水準が続いています。
高度成長期は、この人口ボーナス期とも重なっていた事が良くわかりますね。
逆に言えば、他の主要先進国のうち特にフランス、イギリス、アメリカは日本よりも低い水準がずっと続いてきたことになります。
既に高齢世代の割合の多い社会に順応してきたことが窺えます。
図6 生産年齢人口に対する高齢人口比率
(OECD統計データより)
図6は生産年齢人口に対する高齢人口比率です。
分母を総人口から生産年齢人口に変えたものになります。
このグラフを見ると、図1よりも近年の日本の水準が突出している事がわかりますね。
日本で高齢人口の比率が高まっているのは、世代人口の多い団塊の世代が高齢人口に加わっているのと、長寿命化が進んでいる事、少子化により生産年齢人口が減少しているためと思われます。
他の主要先進国は1990年代後半まで日本よりも高い水準だったことがわかります。
図7 生産年齢人口に対する若年人口比率
(OECD統計データより)
図7は生産年齢人口に対する若年人口比率です。
生産年齢人口が減少している事もあり、日本の生産年齢人口に対する若年人口比率は30%程度で停滞しています。
水準としてはドイツ、イタリアと同程度となりますね。
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