027 日本はデフレなのか? - GDPデフレータの変化
日本は長期間デフレだったとされています。具体的な統計データで物価指数の変化を確認してみます。
1. GDPデフレータとは
前回は、OECD各国のGDPや消費、賃金の成長率をご紹介しました。
日本だけ名目成長が停滞を続けているという特殊な状況が続いたようです。
その原因は日本がデフレだから(だったから)という話もよく聞きます。
今回は、デフレ(デフレーション:Deflation)について考えてみたいと思います。
デフレは「物価が持続的に下落していく現象」の事だそうです。
それと逆なのが、物価が持続的に上昇していくインフレ(インフレーション:Inflation)ですね。
基本的には、需要が供給を下回ることで引き起こされると言われています。
つまり、需要に対して供給が多すぎるので、生産者はモノを売るために値下げをするという解釈となるようです。
物価が下がりますので、その反面貨幣の価値が上昇するという側面があります。
つまり、同じ額面のお金で買えるモノが増えるという事ですね。
また、デフレ・インフレの影響については、こんな解説もされるようです。
「デフレは貨幣価値が上昇する事で、固定的な収入のある人からすると、一見家計の購買力が高まり歓迎すべき状況です。
ただし、デフレはそれと同時に、企業業績の悪化をもたらしますので、失業の増加や賃金の悪化を招き、結局は家計の消費を引き下げる事になります。逆に、適度なインフレは、需要が供給よりも多い状況となりますから、企業業績を向上させ、労働者の賃金が上昇し、家計の消費も伸びる事になります。」
したがって、各国とも無難な経済成長に必要な適度なインフレ状態を目指すという事ですね。
デフレか、インフレかを判断するための指標はどのようなものがあるでしょうか。
一般には物価が上がっているかどうかを示す、物価指数で判断するようです。
主要な物価指数はGDPデフレータと呼ばれるものです。
これは、額面のGDPである名目GDPと、物価変動を加味した実質GDPの比率として表されます。
身近な物価の指標としてもう1つ消費者物価指数がありますが、GDPデフレータの方がより現実的なデフレ/インフレの判断ができるとも言われているようです。
GDPデフレータ = 名目GDP ÷ 実質GDP
GDPデフレータが大きくなっていけば、実質GDPよりも名目GDPの成長率が大きいためインフレ状態を示します。
逆にGDPデフレータが小さくなっていけば、実質GDPよりも名目GDPの成長率が小さいためデフレ状態です。
それでは、まず国際比較のためにOECDの統計データを示してみましょう。
2. GDPデフレータの国際比較
図1 GDPデフレータの推移
(OECD統計データ より)
図1は1991年時点を基準(1.0)とした、各国のGDPデフレータの倍率です。
OECD各国とも基本的には右肩上がりです。
他の国は、1991年からの30年間で40%以上数値が上昇しています。
G7各国でも1.4~1.9くらいまで上昇していますね。
日本だけ1991年と比べてマイナスですね。
1998年頃から下がり始め、2014年頃から少し上昇していますがそれでも横ばい傾向です。
少なくとも1998年から2013年にかけては日本はデフレであったことがわかります。
2014年以降はややインフレ気味という事ですね。
長期的にみれば、一度物価が下がり停滞が続いているような状態です。
3. デフレーション対策とは
日本は明らかに物価が減少した後、停滞が続いています。
デフレが進行しているというわけではありませんが、物価が大きく上がっているわけでもなさそうです。
厳密には2年連続で物価が上がればインフレという定義もあるそうで、その定義通りに言えば近年はインフレともいえるかもしれません。
長期的に見た場合は、明らかなインフレである各国に対して、日本は物価は停滞しています。
インターネットを調べると、デフレに関する議論が展開されていますが、主にデフレーション対策として考えられているのは次のようなことのようです。
① 量的緩和: 政策金利や公定歩合を引き下げる
② 通貨高の是正: 円安に誘導する
③ 金融機関への資本注入
④ 累進課税制度など、自動的な減税効果(ビルト・イン・スタビライザー)
⑤ 財政出動
⑥ 現預金や国債への課税
⑦ 政府紙幣の発行
つまり、デフレ状況ではお金の価値が上がり、皆がお金を貯め込もうとするので、主に市中に出回るお金の量を増やしてお金の価値を下げる、お金を貯め込むことにペナルティを課すという対策が取られるとの事です。
4. デフレと企業活動
上記で見てきた通り、日本で物価が上がっていないという事は、つまり企業の販売価格が上がっていないことになりますね。
むしろ一時期よりも値段が下がっていて、その分数量を増やしている経済活動となっているようです。(実質成長)
近年の日本では、企業業績が上向いているのに、賃金が上がらない異常な状況が続いています。
デフレと言われるような時期(主に1998~2013年)に、企業の業績(純利益)は向上しています。
一般的な解釈では、賃金が上がらなければ消費は増えず売り上げも上がらないはずなのに、企業は儲かっている状況ですね。
どうやら一般に言われるデフレの解釈と、日本で進んでいる状況は異なるようです。
特に2010年以降は右肩上がりで、当期純利益が増加しており、かつてない水準で利益を積み上げている状況は以前取り上げました。
参考記事: 利益ばかりが増える日本企業
逆に上がっていないのは、付加価値や賃金です。
図2 日本 法人企業 労働者1人あたり 成長率
(法人企業統計調査より)
これまで見てきたように、日本では賃金水準などの指標は1997年がピークです。
参考記事: サラリーマンの貧困化
労働者の賃金水準が下がっているのに、企業の利益は大きく増えています。
何故このように、企業業績と賃金がリンクしなくなったのでしょうか。
私には現在の日本経済の停滞は薄利多売のビジネスを続けながら、人件費を抑制し、コストカット最優先の平成的な経営を続けてきた企業自体が引き起こしているようにも見えます。
つまり、デフレそのものというよりも、「より安く」を求めるデフレマインドが根強く残っているようにも見受けられます。
国内の労働者の賃金水準を上げられるだけの仕事の価値を上げていくことが必要なのかもしれませんね。
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<ブログご利用の注意点>
・本ブログに用いられる統計データは政府やOECDなどの公的機関の公表しているデータを基にしています。
・統計データの整理には細心の注意を払っていますが、不整合やデータ違いなどの不具合が含まれる可能性がございます。
・万一データ不具合等お気づきになられましたら、「お問合せフォーム」などでご指摘賜れれば幸いです。
・データに疑問点などがございましたら、元データ等をご確認いただきますようお願いいたします。
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