049 自動車産業の設備投資 - 資産・負債と純資産

日本の自動車産業は、日本経済の中でも重要な基幹産業と言えますが、投資や資産・負債の状況について可視化してみると意外な事実がわかります。

1. 自動車産業の資産・負債・純資産

前回は、自動車産業の売上高や労働者、生産性などのフロー面についてご紹介しました。
今回は、資産・負債などのストック面と設備投資についてご紹介していきます。

まずは、ストック面の推移です。

日本 自動車産業 資産・負債・純資産

図1 日本 自動車・同付属品製造業 資産・負債・純資産
(法人企業統計調査 より)

図1が自動車産業(自動車・同付属品製造業)に属する企業の、資産負債純資産の推移をまとめたものです。
資産がプラス側、負債がマイナス側で表現しています。

1990年のバブル崩壊までは資産(青)も負債(赤)も対称的に増えていきますが、バブル崩壊後はやや成長が鈍化しています。

基本的にはどちらも増加傾向が続いていますね。
全産業の合計値では停滞傾向が強いのですが、自動車産業は負債も増え続けているのが特徴的です。

純資産(緑)も右肩上がりに増大が続いています。

停滞しているのが、資産側の有形固定資産(土地以外、薄緑)と、借入金(ピンク)です。
国内での投資を増やしていれば、これらは増加が続くはずなのですが、1990年代前半から横ばいが続いている状況ですね。

一方で増え続けているのが投資有価証券です。
投資有価証券は、株式、公社債、その他の有価証券の合計値です。
この投資有価証券には、対外直接投資による外国子会社の株式(再投資分含む)も含まれるかもしれませんね。

自動車産業は利益も増え、純資産も増えています。
ただし、前回見たように、付加価値や賃金は停滞気味で従業員数も一時期より減少している事を考えると、国内での事業活動そのものはやや停滞傾向であった事が窺えます。

2. 自動車産業の設備投資

続いて、自動車産業の国内での設備投資を見てみましょう。

日本 自動車産業 設備投資

図2 日本 自動車・同付属品製造業 設備投資
(法人企業統計調査 より)

図2が日本の自動車産業の設備投資の推移です。

バブル崩壊に向けて大きく増大し、その後急減してアップダウンを繰り返しています。
リーマンショックで落ち込んだ後増加傾向が続いていますが、コロナ禍でまた減少傾向となっています。

合計してみると、2兆円前後で推移しているような状況ですね。

リーマンショック以降、増加傾向が続いてきたとも見て取れますし、2015年頃になってやっとリーマンショック前の水準に回復したとも読み取れそうです。

少なくとも国内での設備投資が継続して増えているわけではなさそうです。

3. 自動車産業のストック面での特徴

今回は、日本の自動車産業のストック面と設備投資について眺めてみました。

自動車産業は利益が増え、純資産も増えていますが、その多くは投資有価証券の増加によるもののようです。

もちろん、いわゆる証券投資と言われるような投資もあると思いますが、海外も含め子会社の株式取得(直接投資)も多いのではないでしょうか。

いずれにしろ、国内事業への投資は限定的で、継続的に増えているわけではないようです。
これは資産面の有形固定資産が停滞している事でもわかりますね。

今後自動車産業は、海外事業ばかりになっていくのか、国内生産が戻っていくのか、行く末が気になるところです。

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