191 日本企業の機械・設備は多い? - 残高の国際比較

日本企業は事業投資を増やしていませんが、特に機械・設備は製造業や生産性の向上にも重要な投資となるはずです。日本企業の機械・設備の水準を、国際比較によって可視化してみます。

1. 日本企業の機械・設備

前回は、企業固定資産について各国の比較を行ってみました。
企業は負債を増やして、事業投資を行い、生産性を上げる経済におけるエンジンとも言うべき存在ですね。
事業投資によって、機械・設備や工場などの固定資産が増える事でこの事が確認できます。
この固定資産の蓄積により、生産性や付加価値が向上し、その分配も増えていくというのが一般的と思います。

日本企業の固定資産は、1990年代に非常に高い水準に達し、その後停滞していて他の先進国並みの水準にまで落ち着いてきた状況です。

現在はアメリカやドイツと同じくらいのやや高めの水準は維持されているものの、成長率からみるとこの後続々と他国にも抜かれていく事が予測されます。
企業の固定資産は機械設備、工場などのその他の建物・構築物住宅(社宅など)、知的財産生産物に分かれます。

今回はこのうち、生産性の肝となる機械・設備について着目してみましょう。

まずは日本企業の推移からです。

固定資産 機械・設備 非金融法人企業 日本

図1 固定資産 機械・設備 企業 日本
(OECD統計データより)

図1が日本企業の固定資産のうち、機械・設備の推移です。

1990年あたりから急激に停滞傾向となり、180~210兆円の間でアップダウンしているような状況ですね。

投資によるプラスと、減耗によるマイナスが釣り合うくらいで推移しているという事になります。

2. 企業の機械・設備の推移

続いて、ドル換算値で企業の機械・設備の水準を国際比較してみましょう。

企業 固定資産 機械・設備

図2 企業 固定資産 機械・設備 推移
(OECD統計データより)

図2がOECD各国の企業の固定資産のうち機械・設備の推移となります。
やはりアメリカが圧倒的ではありますが、日本も1990年代中頃にはアメリカにかなり近い水準であったことになります。

日本はその後横ばいとなっていて、他国に追いあげられている状況ですね。
ドイツとの差も縮まっていますが、ドイツやイギリス、イタリアなどはリーマンショック以降横ばいです。

日本とドイツの間に急上昇している国はメキシコになります。

3. 企業の機械・設備の増加度合

企業の機械設備がどれくらいの勢いで増えているのかを、各国の自国通貨ベースでの成長度合いで見てみましょう。

企業 固定資産 機械・設備

図3 企業 固定資産 機械・設備

図3が機械・設備の1995年を基準(1.0)としたときの倍率となります。

日本はほぼ横ばいで機械設備が増えていない事がわかります。
低成長なイギリスやドイツで1.5~1.7倍、アメリカ、フランス、カナダで2倍、韓国は4.5倍の水準に増えています。

4. 企業の1人あたり機械・設備の推移

それでは、企業の機械・設備の水準が人口1人あたりにするとどの程度か比較してみましょう。

企業 固定資産 機械・設備 1人あたり

図4 企業 固定資産 機械・設備 1人あたり

図4が機械・設備の金額を人口1人あたりの数値に直したグラフです。

1995年に日本は極めて高い水準に達していて、その後横ばいであることがわかります。
日本は当時アメリカの2倍程度の水準でした。
ドイツも比較的近い水準だったようです。

当然当時の円高(年平均で94円/ドル)の状況もありますが、この為替レートは近年の100~120円/ドル程度とそれほど変わりません。

その後両国とも停滞が続き、現在はアメリカと同程度ですね。

韓国は増加が続いていますが、フランスやイギリスは横ばい、イタリアやカナダは減少傾向です。

5. 企業の1人あたり機械・設備の国際比較:1997年

1人あたりの水準が先進国の中でどの順位になるのか見ていきましょう。

企業 固定資産 機械・設備 1人あたり 1997年

図5 企業 固定資産 機械・設備 1人あたり 1997年

図5は日本経済の絶頂期だった1997年のグラフです。

日本は12,553ドルで、OECD20か国中ルクセンブルクに続いて2番目の水準です。
OECDの平均値8,411ドルに対して1.5倍程度と高水準だったわけですね。

6. 企業の1人あたり機械・設備の国際比較:2018年

続いて2018年の国際比較です。

企業 固定資産 機械・設備 1人あたり 2018年

図6 企業 固定資産 機械・設備 1人あたり 2018年

図6が2018年のグラフです。

日本は14,028ドルで1997年の水準とほとんど変わりませんが、順位はOECD30か国中11位にまで後退していますね。
8位のドイツ(15,967ドル)や、9位のアメリカ(15,692ドル)にも抜かれ、韓国(12,316ドル)にも追い上げられている状況です。

7. 企業の機械・設備の特徴

今回は、OECD各国企業の機械・設備の1人あたりの水準を比較してみました。

日本は1990年代に極端に高い水準に達し、その後停滞しつつもその水準を維持しています。
近年ではアメリカやドイツに抜かれていますが、相対的にはまだ機械・設備が多い国と言えそうです。

企業の借入が他国並みに落ち着いてきて、近年では増加傾向に転じていますので、今後は機械・設備への投資も増えていくかもしれませんね。

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