168 貿易の少ない日本 - 1人あたり輸出・輸入の国際比較

輸出、輸入、純輸出について人口1人あたりの水準の国際比較をしてみます。日本の貿易は人口や経済規模からすると相対的に少ないようです。

1. 1人あたり輸出額の推移

前回は先進国各国の輸出輸入純輸出について着目してみました。
総額で見ると日本はアメリカ、中国、ドイツに次ぎ輸出額では世界第4位です。

輸入も同様に第5位の水準です。
ただし、対GDP比で見ると、日本はOECD36か国中35位で、非常に低い水準であることがわかりました。

日本の輸出や輸入は多いのでしょうか?少ないのでしょうか?

今回は、人口1人あたりの指標で確認していきたいと思います。

輸出 1人あたり

図1 輸出 1人あたり 推移
(OECD 統計データ より)

図1は1人あたり輸出額の推移を示したグラフです。
実は日本は輸出大国というイメージが強いと思いますが、人口あたりに直すとそれほど多くないという事がわかります。

むしろ内需大国と言われるアメリカと同じくらいのレベルですね。
ドイツや韓国、その他主要国の方が高い水準であることがわかります。

2. 1人あたり輸出額の国際比較:2018年

それでは、近年のデータで1人あたりの輸出額を国際比較してみましょう。

輸出 1人あたり 2018年

図2 輸出 1人あたり ドル換算 2018年
(OECD 統計データ より)

図2は2018年の数値を大きい順に並べたグラフです。
日本は1人あたり7,259ドルで、アメリカ(7,729ドル)よりも少なく、OECD36か国中33番目の水準です。
ドイツは22,647ドルで11位で、日本の約3倍の水準です。

もちろん、欧州諸国はEU圏での結びつきが強まっての状況だとは思いますが、それだけお互いの得意な事を生かしあっているような関係になっているのかもしれませんね。

3. 1人あたり輸出額の国際比較:1997年

日本の様々な経済指標がピークとなった1997年の国際比較です。

輸出 1人あたり 1997年

図3 輸出 1人あたり ドル換算 1997年
(OECD 統計データ より)

図3は日本経済のピークだった1997年のグラフです。

日本は3,691ドルで22番目の水準です。
確かに近年よりは相対的な輸出の程度は大きかったようですが、この頃で既にドイツやフランスなどとは大きく差があったようです。

日本は1人あたりの指標に直すと、輸出の極めて少ない内需型の経済であるという事がわかるのではないでしょうか。

4. 1人あたり輸入額の推移

それでは、輸入についてはどうでしょうか。
1人あたり輸入額についても見ていきましょう。

輸入 1人あたり

図4 輸入 1人あたり ドル換算
(OECD 統計データ より)

図4は、1人あたり輸入額のドル換算値です。

概ね1人あたりの輸出額と同じような傾向に見えますね。
やはり日本は先進国の中で、低い水準が続いているようです。
アメリカは、輸出より輸入の方が大きいので、日本とアメリカの差がやや開いています。7

5. 1人あたり輸入額の国際比較:2018年

つづいて2018年の国際比較です。

輸入 1人あたり 2018年

図5 輸入 1人あたり 2018年
(OECD 統計データ より)

図4は2018年の輸入額の大きな国順に並べたグラフです。
日本は7,168ドルで、OECD36か国中33位です。
アメリカは9,592ドルで、輸出額よりも幾分か大きな数値です。
逆にドイツは、19,707ドルで輸出よりも少ない数値です。

6. 1人あたり輸入額の国際比較:1997年

つづいて、1997年の国際比較です。

輸入 1人あたり 1997年

図6 輸入 1人あたり ドル換算 1997年
(OECD 統計データ より)

図6は1997年のグラフです。

日本は3,321ドルで25位です。
やはり輸入も以前からそれほど多くない水準であるという事がわかりますね。
実は日本は輸出も輸入も貿易に対する依存度が少ない国と言えそうです。

7. 1人あたり純輸出額の推移

これまで見てきたように、各国とも輸出額と輸入額はそれぞれほぼ同じような水準で相殺する傾向にあります。

ドイツがやや輸出超過、アメリカが輸入超過といった傾向はありそうです。
この輸出額から輸入額を引いた純輸出についても見てみましょう。
純輸出はそのままGDPの支出面にも加算される数値ですね。

1人あたりの水準にしたらどのような傾向があるでしょうか。

純輸出 1人あたり

図7 純輸出 1人あたり ドル換算
(OECD 統計データ より)

図7が1人あたり純輸出についての推移を表すグラフです。

ドイツや韓国が近年になり大きく純輸出がプラスであることがわかります。

逆にアメリカは、純輸出がマイナスの期間が長く続いていますね。
特に2000年あたりからはマイナス額も大きいようです。
イギリスも似たような状況ですね。
近年ではフランスや加太も純輸出マイナスです。

日本は、比較的プラスの状況が長く続いてきましたが、リーマンショック後は大きくマイナスとなり、現在はややプラス~ゼロ近辺です。
この大きくマイナスになった期間は、1ドル80円台まで下がった超円高の時期と重なりますね。
企業の海外進出が加速した時期でもあります。

純輸出で見ると、工業の盛んなドイツ、韓国や輸入の超過するアメリカに比べ、日本は貿易の水準が比較的小さい国です。

8. 1人あたり輸出・輸入・純輸出の特徴

今回は、人口1人あたりの輸出額、輸入額、純輸出額について国際比較してみました。

1人あたりにすると日本の水準が低い事が良くわかりますね。

欧州諸国は主にEU内での貿易を活発化し、経済活動の合理化が進んでいる面もあると思います。

ただし、韓国などではかなり水準が高い事もあり、やはり日本の水準は相対的に見て低い事がわかりますね。

どちらかと言えば、日本の産業は輸出よりも海外現地生産を活発化させているように見受けられます。
もちろん、輸出も増えてはいますが、その伸び率で言えばかなり緩やかである可能性がありますね。

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