095 高齢者の働く国 - 性別・世代別労働者数の変化

日本は少子高齢化が進んでいると言われますが、労働者の構成にも変化があるようです。性別・世代別の労働者数を見ると日本ではかなり多くの高齢労働者が働いている事がわかります。

1. 世代別労働者数

前回は、G7各国の人口について1997年を起点とした増減数を可視化してみました。
いずれの国も、少子高齢化が進んでいるのは間違いなさそうですが、それぞれで少しずつ事情も異なるようです。

アメリカ、カナダ、イギリスなど人口の増えている国もあれば、人口や労働者数が停滞気味なフランス、ドイツ、イタリア、明らかに減少傾向に転じた日本という特徴があるようです。

アメリカ、カナダ、イギリスはG7の中でも経済成長率の高い国、フランス、ドイツ、イタリアは低成長な国、日本は停滞している国、と考えると、人口の増減との関連は明らかなようにも見えます。

労働者のうち男性と女性の割合や、高齢者の割合についてのご要望もいただいたので、今回は労働者数の内訳についてご紹介します。

労働者数 シェア 2019年

図1 労働者数 シェア 2019年
(OECD 統計データ より)

図1が、G7各国の労働者のシェアを示したものです。

男性の労働世代(15~64)が青、女性の労働世代が赤、男性の高齢世代(65歳以上)が緑、女性の高齢世代が紫です。

ドイツ、アメリカ、イギリス、フランス、カナダは似通っています。
男性の労働世代が約50%で、女性の労働世代が45%前後です。
男性に対して女性の割合が約9割といったところですね。
高齢世代は男女合わせて数%に過ぎません。
フランス、ドイツ、イタリアは高齢世代の割合が1.5~3%程度と特に小さいようです。

日本とイタリアは他の主要先進国と傾向が異なってるようです
イタリアは労働世代の男女の差が大きいですね。
男性に対して女性は8割に満たないようです。
女性の労働参加率が低いのかもしれません。

日本は明らかに高齢世代の割合が高いのが特徴です。
男女合わせて13%となっています。
また、男女の割合も男性に対して女性は8割程度で少ない事も特徴的です。

2. アメリカの世代別労働者数の変化

各国ごとにもう少し詳細の推移を見ていきましょう。
1997年を起点とした、労働者の増減数の推移をグラフ化してみます。

まずはアメリカからです。

アメリカ 労働者 増減数

図2 アメリカ 労働者 増減数 推移
(OECD 統計データ より)

図2アメリカ増減数のグラフです。

リーマンショックによる減少時期が見られるものの、労働者数の合計が基本的に右肩上がりですし、労働世代の労働者の増加が大きいですね。
女性の方が男性よりもやや増加傾向が大きいですが、ほぼ連動して増えている事がわかります。
高齢世代も増加傾向ですが、労働世代に比べると増加傾向は緩やかです。

約20年の間に3000万人近く労働者が増えていて、労働世代では男性も女性も1000万人以上増加しています。

3. イギリスの世代別労働者数の変化

つづいてイギリスのデータです。

イギリス 労働者 増減数

図3 イギリス 労働者 増減数
(OECD 統計データ より)

図3がイギリスの労働者の増減数です。

アメリカと同じような推移で、リーマンショック時の減少時期が見られるものの、全体的に増加傾向であることがわかります。

リーマンショック時に男性労働者の方が減少しているというのも共通しています。

約20年の間に600万人の増加ですが、男性も女性も現役世代で200万人以上ずつ増えています。

高齢世代の増加はかなり少ないようです。

4. カナダの世代別労働者数の変化

カナダ 労働者 増減数

図4 カナダ 労働者 増減数
(OECD 統計データ より)

図4がカナダの労働者数の変化です。

やはり、アメリカ、イギリスと同じような推移です。

20年ほどの間に500万人以上労働者が増加していて、労働世代では男性も女性も200万人以上増えています。

高齢世代の労働者の増加数はかなり少ないようです。

5. フランスの世代別労働者数の変化

続いてフランスのデータです。

フランス 労働者 増減数

図5 フランス 労働者 増減数
(OECD 統計データ より)

図5がフランスのグラフです。

アメリカやイギリスと異なり、労働者数の増加が2002年以降緩やかなのが特徴的です。
男性の労働世代は人数が停滞している中、女性の労働世代が増加しています。
一方で高齢世代の増加はほとんどありません。

女性労働者の急激な増加が労働者数の増加に大きく影響しているようです。

6. ドイツの世代別労働者数の変化

次がドイツです。

ドイツ 労働者 増減数

図6 ドイツ 労働者数 増減数
(OECD 統計データ より)

図6がドイツのグラフです。

2003年頃に労働者の合計数は一度減りますが、その後は増加を続けています。
フランスと同様に女性の労働者の増加が大きいので、女性の労働参加率が上昇しているものと考えられます。
男性の労働者数は一度大きく落ち込んで(マイナス100万人くらい)、その後若干戻ってはいますがあまり増えていません。

ドイツでは、移民が増える事で労働世代の労働者も増えていると言われているようです。
高齢世代の増加が少ない事も特徴ですね。

7. イタリアの世代別労働者数の変化

続いてイタリアです。

イタリア 労働者 増減数

図7 イタリア 労働者 増減数
(OECD 統計データ より)

図7がイタリアのグラフです。

他の主要国と随分と様相が異なるようです。
労働者数合計が2008年を機に減少して、2014年から再び増え始めているという推移です。

男性の労働者数が2003年以降マイナスから横ばい傾向です。
女性の労働者数が大きく増加しています。

図1で見ると2019年時点では、女性の労働者が男性と比べるとかなり少ない特徴がありました。

元々女性の労働参加率が低かったため、急激に女性労働者が増えている途中であるのかもしれませんね。

8. 日本の世代別労働者数の変化

最後に日本の労働者数です。

日本 労働者 増減数

図8 日本 労働者 増減数
(OECD 統計データ より)

図8が日本のグラフです。

明らかに他の主要国と異なりますね。
労働者の合計数が2011年にかけて大きく減っていて、その後急激に増えていますが1997年の水準を超えたのは2018年に入ってですね。
男性の労働世代が減少し続けています。
1997年から、400万人も減少している事になります。

女性も2011年までは減少傾向でしたが、その後増加に転じ近年ではプラスとなっています。
高齢世代の労働者は男女とも右肩上がりで、合計すると400万人以上増加しています。
特に2011年以降で増加傾向が強まっているように見えます。

日本の場合は、女性の労働参加率向上に加えて、高齢世代の労働者が大きく増加している事になります。

9. 主要先進国の世代別労働者数の特徴

アメリカ、イギリス、カナダは人口が増え続けていて、男性の現役世代も増えている国です。
労働者としてもやや女性の方が増え方が多いながらも、男性労働者も大きく増えていますね。

フランス、ドイツ、イタリアは男性労働者の停滞が見られますが、女性労働者が大きく増えている状況です。

それに対して日本は、男性労働者が大きく減少しており、女性労働者も近年増加していますがそこまで増えていません。
一方で高齢労働者が大きく増加しています。
他の国と比べて、日本は多くの高齢者が多く働く国という特徴がありそうです。

そして男性の労働世代が明らかに減少しているのも特徴的ですね。
女性と高齢世代がその埋め合わせをしているような印象です。

今後は世界的に人口が減少していくと言われています。
世界一の人口を抱える中国ですら人口が減少に転じると言われていますね。
一時的に移民を増やしたところで、長期的には結局人口減少が進むという指摘もあるようです。

日本は、世界に先駆けて人口が減りながらも豊かに暮らせる社会を実現できるかどうか試されている国とも言えるかもしれません。

皆さんはどのように考えますか?

参考:高齢労働者のシェア

(2023年12月追記)

労働者シェア 65歳以上

図9 労働者 シェア 65歳以上
(OECD統計データより)

図9は65歳以上の高齢世代労働者の、全体の労働者に対するシェアをグラフ化したものです。

日本は他のG7各国と比べると圧倒的な水準で、かつ上昇傾向も急激な様子がわかります。

ただし、他国も近年はどの国も上昇傾向ではありますね。

2021年だと日本が13%、アメリカ6%、ドイツ3%、フランス2%といった水準です。

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