079 共働きが増える現役世帯 - 収入階級別の持ち家率・共働き率

2人以上の勤労世帯について、収入階級別の持家率や、共働き、平均年齢などをご紹介します。

1. 収入階級別の持ち家率

前回は、勤労世帯の資産分布から中所得世帯が困窮化する様子を取り上げました。
中所得世帯では資産は増えているものの、負債も大きく増加し、差し引きの金融資産がマイナスとなっています。
このような勤労世帯では、一体どのような変化があったのでしょうか。

今回はもう少し詳細な変化を追ってみたいと思います。
ここでは便宜的に、年間収入450万円未満を低所得層、450~750万円を中所得層、750~1,500万円を高所得層、1,500万円以上を超高所得層と呼びます。

2000年と2019年では、低所得層16.8%→17.9%、中所得層39.3%→42.0%、高所得層39.9→37.2%、超高所得層4.0%→2.9%の割合です。
低所得層、中所得層が増大し、高所得層、超高所得層が減少しています。

持家率 年間収入階級別

図1 持ち家率 年間収入階級別 2人以上の勤労世帯
(家計調査 より)

図1が2人以上の勤労世帯の持ち家率の変化です。
2002年に比べ、2018年は全体的に持ち家率が上昇しています。

特に450万円未満の低所得層で大きく増加していますが、450~750万円の中所得層でも増加が大きいですね。
1,500万円以上の超高所得層では少し減っているのも印象的です。

後述する高齢化を合わせて考えると、低所得層では高齢層が増えています。
低所得層では既に持ち家を持っている高齢層が勤労世帯としてカウントされている事で、持ち家率が底上げされている事も考えられます。

また、フラット35など、固定の低金利で月々の返済負担の少ない住宅ローンの組み方が広がってきた事で、低所得でも家を持つ世帯が増えてきているのかもしれませんね。

2. 収入階級別の平均年齢

世帯主の平均年齢

図2 世帯主の平均年齢 2人以上の勤労世帯
(家計調査 より)

続いて、図2が世帯主の平均年齢です。

2000年と2019年の比較です。

2000年の時点では、基本的には高所得層になるほど平均年齢が上がっている関係だったのですが、2019年には低所得層、中所得層の平均年齢がグッと上がって平坦な分布になっています。

現在では概ね40代後半から50代前半となっています。
特に低所得層での高齢化が進んでいますね。

また、1,500万円以上の超高所得層の平均年齢が微減しているのも特徴的です。
低所得層で特に高齢化が進んでいるのは、定年退職後も働く世帯主が増えた事が考えられそうですね。

また、若年層の世帯主が減っているので、相対的に高齢化が進んでいる事も大きな要因と思います。

3. 収入階級別の働き方

世帯主の臨時及び日々雇労務作業者割合

図3 世帯主の臨時及び日々雇い労務作業者割合 2人以上の勤労世帯
(家計調査 より)

図3が、世帯主の非正規雇用の割合です。

低所得層、中所得層で大きく増加しています。
特に低所得層で激増していると言ってよい状況ですね。

200万円未満の層では、16%以上に上ります。

もちろん全世代で非正規雇用が増えている事が考えられますが、
特に高齢化と合わせて考えると、定年退職後に、非正規で仕事を持つ高齢者が増えている事が言えそうです。

4. 収入階級別の共働き率

平均有業人員数

図4 平均有業人員数 2人以上の勤労世帯
(家計調査 より)

世帯主の配偶者のうち女性の有業率

図5 世帯主の配偶者のうち女性の有業率 2人以上の勤労世帯
(家計調査 より)

図4が世帯の平均有業人員数、図5が世帯主の配偶者のうち女性の有業率のグラフです。

まず、図4から見てみましょう。
このグラフは、世帯の中で仕事を持っている人の平均人数ですね。

2000年の時点では高所得層になるにつれて平均有業人員数が増えていく傾向でした。
実際には高所得層では平均2人以上の有業者ですので、世帯主夫婦だけでなく所得のある世帯人員が多いわけですね。

これが2019年になると、1,250万円以上の高所得層で減少がみられますが、それ以外の層で全体的に増加しています。
2019年では概ね低所得層で1.5~1.6、中所得層で1.6~1.8、高所得層で1.8~2.0くらいです。

特に低所得、中所得層での増加が大きいですね。
全体的に平坦な分布になっています。

図5は世帯主の配偶者のうち女性が働いている割合です。
勤労世帯の定義が世帯主が仕事を持っている世帯になりますので、夫婦共働き世帯の割合という事になると思います。

これは全体的に大きく増加していますね。
特に中所得者層以上で増大が顕著です。

高所得層では40~55%→65~70%くらいの変化です。
中所得層では30~40%→45~55%くらいでこちらも大きく増大しています。

5. 収入階級別で見た勤労世帯の特徴

今回は勤労世帯の分布について様々な切り口から可視化してみました。

まず特徴的なのが若年世帯が減少し、高齢世帯が増えている事です。
そして、高齢でも仕事を持つ世帯(勤労世帯)が増加している事で、勤労世帯の高齢化が進んでいます。
低所得層で平均年齢が大きく増加しており、非正規率が高まっている事でもそれが確認できると思います。

また、持ち家率も低所得層、中所得層で高まっています。
低所得層の持ち家率増加は、高齢者の割合が増えたことと密接に関係しているようにも見受けられます。

中所得層では、世帯主の給与が下がる中で、夫婦共働きの割合が増えています。
前回見たように、中所得層で特に負債が大きく増大しています。

つまり、住宅ローン返済のために夫婦共働きをしながら家計を支えている中所得層が増えていると言えそうです。
この傾向は750~1,500万円の高所得層でも同様のようです。

高所得層は世帯数も多く全体の約4割を占めます。
高所得層は資産も増えていますが、シェアは少しずつ減っています。

その分中所得層に移動していると考えてみてよさそうです。

一方で、1,500万円以上の超高所得層は傾向が異なります。
むしろ平均年齢は下がり、家庭内で仕事を持っている人の人数が減っています。
金融純資産を唯一大きく増大させている層です。

勤労世帯では世帯主が高齢低所得化して、働く人数を増やす大多数の層と、極端に所得が多く大きく資産を増やしている極一部の超高所得層で歪な2極化が進んでいると言えそうです。

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