160 製造業の海外生産 - 海外現地生産と逆輸入
日本の製造業は積極的に海外現地生産を増やしています。その特徴や傾向を統計データで確認してみます。
1. 製造業の海外現地生産を行う企業の割合
前回は、日本の労働生産性について改めて考えてみました。
日本の労働生産性(1時間あたりの付加価値)は、日本経済がピークとなった時期にも、それほど高まっておらず、長時間労働によって高成長を実現していた側面もあったようです。
現在(2021年時点)の労働生産性は、OECD35か国中20位程度と低迷しています。
非製造業よりも製造業の方が一般的に労働生産性が高いと言われます。
以前は産業ごとのGDPを見ることで、その製造業が最も変化し、国内では縮小しているという事をご紹介しました。
参考記事: 工業の縮小する工業立国日本
一方で、企業のグローバル化は進んでいて、海外事業は右肩上がりで成長しています。
参考記事: 日本型グローバリズムを考える
海外事業での利益は、当該企業関係者以外にはほとんど直接的なメリットがありません。
国内で労働生産性が高く、最も規模の大きな製造業が率先して海外に進出しています。
日本の国内産業の空洞化と相対的に少ない貿易は、この事と無関係ではないようです。
この日本企業のグローバル化は、実態としてはどの程度進んでいるのか、興味深いデータがありましたので、ご紹介したいと思います。
内閣府の企業行動に関するアンケートには、製造業の海外事業に関する統計データが公開されています。
図1 海外現地生産を行う企業の割合 製造業 前年度実績
(企業行動に関するアンケート調査 より)
図1が海外現地生産を行う企業の割合です。
製造業のみの前年度実績のデータとなります。
上場企業は1987年から、中堅・中小企業は2016年からのデータです。
上場企業で現地生産を行う企業の比率は、1987年の時点では30%程度でしたが、2014年には70%を超えています。
その後やや停滞していますが、7割前後で推移しています。
上場企業はその多くが海外生産を行っているという事になります。
一方で、中堅・中小企業は10~15%程度にとどまりますね。
中堅・中小企業と上場企業とで、大きく海外展開の割合が異なることがわかります。
2. 製造業の海外現地生産比率
つづいて、海外現地生産比率について眺めてみましょう。
図2 海外現地生産比率 製造業 前年度実績
(企業行動に関するアンケート調査 より)
図2が海外現地生産比率のグラフです。
海外現地生産比率は、海外現地生産と国内生産の生産高の合計に占める、海外現地生産による生産高の割合です。
海外現地生産は、対外直接投資における現地法人による生産高と考えてよいようです。
上場企業は1987年時点では3%未満でしたが、2019年には23%にも達します。
上場企業の生産高のおよそ4分の1が海外生産となっているわけですね。
一方で、中堅・中小企業は4%前後にとどまります。
3. 製造業の逆輸入比率
図3 逆輸入比率 製造業 前年度実績
(企業行動に関するアンケート調査 より)
図3が逆輸入比率のグラフです。
逆輸入比率は、海外現地生産高に占める、日本向け輸出高の割合となります。
販売価格による円ベースでの為替換算値で計算されるようです。
上場企業は、海外生産したうち15~25%程が日本に逆輸入されているという事になります。
2000年ころは25%程度ですが、長期的な傾向としては減少傾向ですね。
海外で生産したものは、ほとんどが日本に逆輸入するわけではなく、日本以外の国に向けて販売しているという事になります。
中堅・中小企業は、逆輸入比率が25~30%程度でやや高めです。
4. 製造業の海外現地生産の特徴
今回はアンケート調査という形ですが、製造業の海外展開についての実態を示す統計データをご紹介しました。
上場企業の製造業は、その多くが海外現地生産を行っていて、生産高の4分の1は海外生産となっています。
さらに、海外で生産したものの多くは日本に逆輸入されるわけではなく、日本以外の海外で販売されているわけですね。
当然雇用されているのはほとんどが現地人ですし、生み出された付加価値(GDP)は現地国に計上されます。
海外事業での利益に対する税金も現地国に納税されますね。
当該企業には配当金等として、利益の一部が還流する事になります。
これだけ成長している海外事業ですが、国内経済にはそれほど寄与していない事になりそうです。
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<ブログご利用の注意点>
・本ブログに用いられる統計データは政府やOECDなどの公的機関の公表しているデータを基にしています。
・統計データの整理には細心の注意を払っていますが、不整合やデータ違いなどの不具合が含まれる可能性がございます。
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