161 生産資産の増えない日本 - 非金融資産の国際比較

金融資産や負債の面だけを見ていると、固定資産など非金融資産も含めた正味資産という観点が抜け落ちてしまいます。今回は、非金融資産についての統計データを確認してみます。

1. 非金融資産とは

前回は、製造業海外展開について取り上げてみました。
上場企業はそのほとんどが海外に生産拠点を持ち、右肩上がりで現地生産を増やしています。
一方で、国内産業は停滞し、国民の貧困化も進んでいます。

日本はGDPなどフローの面では停滞が続いていますが、ストック=資産の面ではどうでしょうか?
今までは、資産の中でも金融資産を取り上げることが多かったのですが、今回からは非金融資産について取り上げてみたいと思います。

資産や負債などのストックは、金融資産(Financial assets)と非金融資産(Non-financial assets)に分けられます。
非金融資産は、さらに次の通り分けられます。

N 非金融資産(Non-financial assets)
N1 生産資産(Produced assets)
N11 固定資産(Fixed assets)
N111 有形固定資産(Tangible fixed assets)
N1111 住宅(Dwelling)
N1112 その他の建物・構築物(Other buildings and structures)
N1113 機械・設備(Machinery and equipment and weapon system)
N1114 育成生物資源(Cultivated biological resources)
N112 知的財産生産物(Intellectual property product)
N1121 鉱物探査・評価(Mineral exploration and evaluation)
N1122 ソフトウェア・データベース(Computer software and database)
N1123 娯楽作品原本(Entertainment, literary or artistic originals)
N1124 研究開発(Research and development)
N1125 その他知的財産生産物(Other intellectual property product)
N12 在庫(Inventories)
N2 非生産資産(Non-produced assets)
N21 自然資源(Natural resource)
N211 土地(Land)
N212 鉱物・エネルギー資源(Mineral and energy reserves)
N213 非育成生物・水資源(Non-cultivated biological resources and water reserves)

以前は、日本の統計データから、日本の正味資産=国富について取り上げてみました。
参考記事: 国富って何だろう?

日本は1980年代後半に、不動産バブルが起こり、土地≒非生産資産の価値が急激に上昇した時期がありました。
バブル崩壊から非生産資産の価値も下がり続け、2005年ころには一度底を打ちます。
バブル及びバブル崩壊の影響は、一度このあたりで解消されたと見れそうですが、その間に日本経済の停滞と構造の変化が進んだようにも見受けられます。

非生産資産は、もともとある土地につく値段が変わることで、その価値が上下します。
新しく土地を開拓しない限り総量としてはほとんど変わらないはずですが、地価によって現在価値が変動する事になりますね。

一方で、住宅や機械設備、橋梁などの構造物は生産資産と言われます。
国民生活で必要な、いわゆる固定資産ですね。
国民にとっての物質的豊かさの一つの指標ともいえると思います。
日本の場合は、生産資産は緩やかにしか上昇していません。

今回は、これら非金融資産についての推移についてみていきましょう。

2. 日本の非金融資産

まずは、日本の非金融資産の推移を見てみます。

非金融資産

図1 非金融資産 日本
(OECD統計データより)

図1は日本の非金融資産の推移です。
日本の非金融資産は1994年から徐々に減少し、近年では少しずつ増加傾向が続いているようです。
1994年の3,594兆円から、2020年では3,327兆円へと300兆円近く目減りしている状況となります。

非生産資産は減少していて、1994年の水準よりも大きく目減りしています。
バブル期に嵩上げされた土地の価格が下落したことに伴って、非生産資産の価格も減少している事を示しているようです。
1994年に1,973兆円だったのが、2020年には1,271兆円と約700兆円も減少している事になります。

一方で生産資産はやや増加していて、1994年で1,620兆円に対して2020年では2,055兆円と約400兆円のプラスです。

3. 非金融資産の推移

つづいて、各国の非金融資産の推移を見てみましょう。

非金融資産

図2 非金融資産 ドル換算 推移
(OECD統計データより)

図2が非金融資産(Non-financial Assets)の推移のグラフです。
残念ながら、ドイツやアメリカ、イタリアなどのデータはなく、比較的最近のデータのみとなります。

ただ、これを見るだけでも日本の特異さは際立つのではないでしょうか。

ドル換算で見ると日本は1990年代後半ですでに極めて高い水準の非金融資産となり、そのまま停滞しています。
イギリスやフランスなどの主要国は右肩上がりの推移です。

4. 非生産資産の推移

続いて、非金融資産のうち、非生産資産の推移を見てみましょう。

非金融資産 非生産生産

図3 非金融資産 非生産資産 ドル換算 推移
(OECD 統計データ より)

図3が非金融資産のうち、非生産資産の推移です。
非生産資産は多くが土地ですが、漁場なども含まれます。

極めて特徴的なグラフですね。
他国は右肩上がりに対して、日本は右肩下がりのグラフです。

バブルにより嵩上げされた土地の価格が下落している状況という事になりますね。
近年では他国とかなり近い水準にまで差が縮まっていますね。

5. 生産資産の推移

それでは、国民生活の物質的豊かさともいえる生産資産のグラフを見ていきましょう。

非金融資産 生産資産

図4 非金融資産 生産資産 ドル換算 推移
(OECD 統計データ より)

図4が非金融資産のうち、生産資産の推移です。
このデータはアメリカ他いくつかの国についてもデータが追加されています。

まず目につくのが、アメリカの圧倒的な存在感ですね。
右肩上がりで成長し続けています。

一方で日本は停滞傾向です。
フランスや韓国などとの差が縮まってきていることも見て取れるのではないでしょうか。

生産資産は、フロー面の総資本形成の蓄積とも言えますね。
物質的豊かさの一つの指標ともいえると思います。

日本の場合は、それがずっと停滞しています。
一時はアメリカの7割ほどの水準に達していたわけですが、直近では約4分の1にまでその割合を縮小しています。

当然、アメリカは日本の約3倍の人口を抱えていますので、1人あたりの指標ではまた異なった見え方になるかもしれません。

6. 日本の生産資産と固定資産

生産資産は在庫や含み、あまりデータの揃っている国がありません。
生産資産の大部分を占める固定資産についても国際比較してみましょう。

生産資産 日本

図5 生産資産 日本
(OECD統計データより)

図5が生産資産の推移となりますが、その内訳を見てみると固定資産(赤)が大多数を占める事になります。
在庫(青)は僅少で1割にも満たない割合であることが確認できますね。
基本的には生産資産≒固定資産と見ても良いのではないでしょうか。

7. 固定資産の推移

各国の固定資産の推移も見てみましょう。

固定資産

図6 非金融資産 生産資産 固定資産 ドル換算 推移
(OECD統計データ より)

図6が生産資産のうち固定資産の推移です。

1980年からのデータとなります。
長期で見ると、日本は1995年にかけて急激に増加し、その後横ばいであることが良くわかりますね。

他国も生産資産に対して、固定資産が大部分を占める事も読み取れます。

8. 日本の固定資産の詳細

せっかくですので、日本の固定資産≒生産資産のうち、どのような項目が多いのか、その内訳も見てみましょう。

固定資産 日本

図7 固定資産 日本
(OECD統計データより)

図7が日本の固定資産の内訳推移です。

圧倒的に大きいのがその他の建物・構築物(緑)です。
全体の6割ほどを占めます。

続いて住宅(赤)で全体の2割強、機械・設備(青)が1.5割ほどとなります。
住宅と機械・設備は1990年代から横ばいが続いていますが、その他の建物・構築物と知的財産生産物は増加傾向が続いています。

9. 非金融資産の特徴

今回は、非金融資産についてご紹介しました。
日本経済はフロー面の停滞だけでなく、ストック面でも停滞しているという事実を共有できたのではないかと思います。

非生産資産を見ると、バブルによる土地価格の高騰とその後の下落が良くわかりますが、バブル期の影響はそれだけではないことも読み取れると思います。
つまり、生産資産(固定資産)も実はバブル期に極端に増え、その後長期間停滞しているという事です。
これは、企業の多くが常に供給過剰と考えている事とも一致しますね。

バブル期に大きく設備投資などを行い、供給過剰となった末、物価停滞が継続し、経済停滞が長期間続いたと考えれば、これまで見てきた経済指標の推移とも合致し納得感があります。
その間、他の国々は成長が続き、相対的な優位性が薄れてきているという事だと思います。

その結果、現在は相対的に後れを取りつつありますので、見方を変えれば再び成長する余地が出てきたのかもしれません。

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