112 従業員と経営者の給与水準 - 企業規模別の平均給与と格差
日本の法人企業について、企業規模別にみた従業員と役員の平均給与水準と格差について、統計データを確認してみます。
1. 企業規模別の従業員の平均給与
前回は日本企業のうち、中小零細企業、中堅企業、大企業の企業規模ごとに、従業員数、役員数とその給与総額についてご紹介しました。
中小零細企業は、従業員数で約7割、給与総額(給与+賞与)で約65%を占める最も大きな存在です。
また、中小零細企業の経営者(=役員)だけでも500万人以上が存在する事もわかりました。
これは、日本企業の経営者の97%を占めます。
中小零細企業の経営者が多すぎるという批判もある中、実際には経営だけでなく、労働力として実務をこなす経営者が多いですね。
今回は、中小零細企業、中堅企業、大企業でそれぞれの給与について、もう少し詳しく見ていきたいと思います。
図1 従業員 平均給与 企業規模別
(法人企業統計調査 より)
図1が企業規模別の従業員の平均給与(給与+賞与)の推移です。
どの企業規模も、1997年までは右肩上がりでしたが、それ以降は一度減少してから、停滞しているのが分かりますね。
直近ではまだピーク値を更新できていない状況です。
ただし、大企業は2009年あたりから徐々に増加傾向にあります。
大企業の従業員は全体の2割弱ですが、この層が全体の平均値を引き上げていると言えそうです。
転換点となった1997年と直近の2018年の数値を比較してみましょう。
全規模平均 : 391万円 → 367万円 (-24万円、-6%)
中小零細企業: 318万円 → 297万円 (-21万円、-7%)
中 堅 企 業: 464万円 → 427万円 (-37万円、-8%)
大 企 業 : 604万円 → 578万円 (-26万円、-4%)
いずれも平均値が大きなマイナスとなっています。
この間、中小零細企業の労働者は、2,581万人から2,879万人と1割以上増えています。
大多数の人が、大きく収入を下げている事を示唆していると思います。
(より実感値に近い中央値については、今後改めてご紹介します)
2. 企業規模間の従業員の給与格差
図2 従業員 平均給与格差
(法人企業統計調査 より)
図2が中小零細企業の平均給与を1とした場合の、中堅企業と大企業の平均給与の比率(所得格差)を示します。
1960年台前半は、ものすごい差があったわけですね。
1965年あたりから横ばいのように見えます。
中堅企業は中小零細企業の大よそ1.4~1.5倍くらいでしょうか。
大企業は中小零細企業の1.8~2.0倍くらいです。
3. 企業規模別の役員の平均給与
同様に役員についても数値を見ていきましょう。
図3 役員 平均給与 企業規模別
(法人企業統計調査 より)
図3が役員の平均給与です。
中小零細企業と、中堅企業、大企業で様相が全く違います。
中小零細企業は1992年をピーク(537万円)にして、減少し、近年は停滞しています。
それに対し、中堅企業は停滞(1993~2008年くらい)の後、上昇傾向です。
大企業は趨勢的には右肩上がりです。(2005年あたりのピークが気になりますが、、)
1997年と2018年の数値を比較してみましょう。
中小零細企業: 529万円 → 457万円 (-73万円、-14%)
中 堅 企 業: 1,040万円 → 1,152万円 (+112万円、+11%)
大 企 業 : 1,526万円 → 2,019万円 (+493万円、+32%)
中小零細企業の経営者は従業員以上に貧しくなっている事になります。
一方で、中堅企業や大企業では、経営者が豊かになっています。
特に大企業では、平均で500万円近くも平均給与が増加しているわけですね。
そして、中小零細企業の経営者の平均給与は中堅企業の従業員とほとんど変わらない水準という事も驚きです。
数値上は「経営者という既得権益」と言えるようなものではないと言えます。
もちろん、零細企業では配偶者が低収入で名前ばかりの役員になっていたりと、平均値を下げる要因はあるとは思います。
4. 企業規模別の役員の給与格差
つづいて企業規模別に見た役員の給与格差についても眺めてみましょう。
図4 役員 平均給与格差
(法人企業統計調査 より)
図4は、中小零細企業の役員の平均給与を1とした場合の、中堅企業、大企業役員の平均給与との比率(所得格差)です。
従業員の平均給与に比べると、格差が大きい事が特徴的ですね。
1993年頃にかけて格差が縮小する方向でしたが、それ以降は徐々に開いていっています。
直近では、大企業で4.4倍、中堅企業で2.5倍もの開きがあるようです。
5. 企業規模別の平均給与と格差の特徴
今回は従業員や役員の平均給与と給与格差についてご紹介しました。
中央値などの詳細は、今度ご紹介するとしても、平均値を追うだけでも傾向はつかめそうですね。
労働者は企業規模関係なく低所得化して停滞しています(大企業では近年若干の持ち直し傾向)。
経営者は中小零細企業の経営者(97%以上)が貧しくなっていますが、中堅企業や大企業の経営者は順調に豊かになっています。
特に中小零細企業経営者は、従業員以上に低所得化の度合いが大きい事が確認できました。
この中小零細企業経営者という存在は、500万人以上にものぼる非常に大きな存在です。
まずは、従業員も経営者も合わせて働く全ての人が豊かになるための社会を実現していく必要性を感じます。
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