225 男性でも進む非正規化 - 雇用形態別の労働者数

日本では非正規労働者が増えていますが、主に女性と高齢労働者によるものと考えられているようです。年齢階層別の労働者数を見ると、現役世代でも男性の非正規労働者が増えているようです。

1. 男性の年齢階層別有業者数

前回は、日本の労働者数の推移についてフォーカスしてみました。
労働者数全体としては横ばいながらも、非正規雇用が増加しているようです。
特に女性労働者で顕著なようです。

この労働者数の変化は、高齢労働者の増加を伴っているわけですが、各世代でどのような状況なのかも確認してみましょう。

今回は男性労働者、次回は女性労働者の変化についてご紹介していきます。
まずは男性労働者の全体的な変化についてみてみましょう。

有業者数 男性

図1 有業者数 男性
(就業構造基本調査 より)

図1が男性労働者の世代ごとの有業者数の変化です。
日本経済のピークだった1997年と、直近のデータの2017年の比較になります。

1997年と比較すると50代以下の現役世代が減少していて、特に20代は290万人も減少している事がわかります。
一方で、60歳以上の高齢層は240万人も増加している状況です。

2. 男性の雇用形態別有業者数

続いて、男性の雇用形態別有業者数の変化を見てみましょう。

有業者数 男性 変化

図2 有業者数 男性 就業上の地位・雇用形態別
(就業構造基本調査 より)

図2が男性労働者について、就業上の地位・雇用形態別のグラフです。

有業者数 男性
1997年→2017年 単位:百万人
39.5 → 37.1 (-2.4) 合計
5.6 → 4.2 (-1.4) 自営業主
0.7 → 0.2 (-0.5) 家族従業者
3.0 → 2.6 (-0.4) 役員
26.8 → 23.3 (-3.5) 正規職員・従業員
3.4 → 6.7 (+3.3) 非正規職員・従業員

合計で240万人減少している中で、主に自営業主と正規職員・従業員が減少し、非正規職員・従業員が増えています。
非正規職員・従業員は高齢労働者が多いと予想はされますが、男性労働者の非正規化が進んでいる事が窺えますね。

ここで、非正規職員・従業員は、パート、アルバイト、嘱託、派遣社員、契約社員を合計した人数です。

3. 20代男性の雇用形態別有業者数

それでは、世代ごとの変化について眺めていきましょう。
まずは20代からです。

図3 有業者数 男性 20代 1997年・2017年
(就業構造基本調査 より)

図3が男性20代の変化です。
労働者数が約290万人減少する中で、明らかに非正規職員・従業員の人数も割合も増えています。
1997年には非正規職員・従業員の割合は13%程度でしたが、2017年には26%とシェアとしては倍増しています。

男性 有業者数 20代
1997年→2017年 単位:百万人
7.9 → 5.0 (-2.9) 合計
0.2 → 0.1 (-0.1) 自営業主
0.2 → 0.0 (-0.2) 家族従業者
0.1 → 0.0 (-0.1) 役員
6.4 → 3.6 (-2.8) 正規職員・従業員
1.0 → 1.3 (+0.3) 非正規職員・従業員

4. 30代男性の雇用形態別有業者数

続いて、30代男性の雇用形態別有業者数です。

図5 有業者数 男性 30代 1997年・2017年
(就業構造基本調査 より)

図5が男性30代の変化です。
労働者数は780万人から708万人と約70万人減少しています。

シェアで見ると、もともと少ない自営業主や家族従業者、役員などがやや減っています。
正規職員・従業員のシェアも84%から81%へと減少していますね。
非正規職員・従業員のシェアは3%から10%へと大幅に増大しています。
やはり30代でも労働者数が減っている割に、非正規化が進んでいるという傾向がありそうです。

男性 有業者数 30代
1997年→2017年 単位:百万人
7.8 → 7.1 (-0.7) 合計
0.5 → 0.4 (-0.1) 自営業主
0.2 → 0.1 (-0.1) 家族従業者
0.3 → 0.2 (-0.1) 役員
6.5 → 5.7 (-0.8) 正規職員・従業員
0.3 → 0.7 (+0.4) 非正規職員・従業員

20代、30代の若年世代は、人数が減りながらも正規雇用から非正規雇用への転換が進んでいる状況ですね。

5. 40代男性の雇用形態別有業者数

続いて、40代の男性労働者の変化も見ていきましょう。

図6 有業者数 男性 40代 1997年・2017年
(就業構造基本調査 より)

図6が男性40代の変化です。
合計人数では918万人から893万人と約25万人減少しています。

自営業主や役員のシェアが小さくなり、非正規職員・従業員のシェアが大きくなっていますね。
非正規職員・従業員のシェアは3%から8%へと大幅に増大しています。
40代は正規職員・従業員が685万人から692万人とわずかながら増加しています。

どちらかと言えば、自営業主や役員が非正規職員・従業員に置き換わったような変化ですね。

男性 有業者数 40代
1997年→2017年 単位:百万人
9.2 → 8.9 (-0.3) 合計
1.2 → 0.7 (-0.5) 自営業主
0.1 → 0.0 (-0.1) 家族従業者
0.7 → 0.5 (-0.2) 役員
6.9 → 6.9 (+0.0) 正規職員・従業員
0.3 → 0.7 (+0.4) 非正規職員・従業員

6. 50代男性の雇用形態別有業者数

つづいて50代男性の雇用形態別有業者数です。

図7 有業者数 男性 50代 1997年・2017年
(就業構造基本調査 より)

図7が男性50代の変化です。

労働者数は802万人から726万人へと76万人の減少です。

この世代になると、自営業主や役員の割合も大きくなりますね。
1997年には、自営業主と役員で29%のシェアがあったようです。
それが2017年には19%に減少していて、代わりに非正規職員・従業員のシェアが4%から9%に増大しています。

この世代は、正規職員・従業員の人数が微減していますが、シェアは67%から72%へと増大しています。

男性 有業者数 50代
1997年→2017年 単位:百万人
8.0 → 7.3 (-0.7) 合計
1.4 → 0.7 (-0.7) 自営業主
0.0 → 0.0 (-0.0) 家族従業者
0.9 → 0.6 (-0.3) 役員
5.3 → 5.2 (-0.1) 正規職員・従業員
0.3 → 0.6 (+0.3) 非正規職員・従業員

40代、50代の中年労働者は、正規雇用が比較的守られているながらも、経営者が減り、その分非正規雇用に置き換わっているような変化になっています。

7. 60歳以上男性の雇用形態別有業者数

最後に60歳以上の高齢労働者についても変化を確認してみましょう。

図8 有業者数 男性 60歳以上 1997年・2017年
(就業構造基本調査 より)

図8が男性60歳以上の変化です。

自営業主や役員のシェアが大きいですね。
1997年には自営業主で40%、役員で15%と経営者が55%だったようです。
一方2017年は自営業主が28%、役員が14%で42%です。
自営業主のシェア低下が大きいようですが、人数自体はそれほど変化はありません。

正規職員・従業員は人数が増えながらもシェアとしては22%から21%とやや低下している一方、非正規職員・従業員は20%から36%と大幅に増大しています。

男性 有業者数 60歳以上
1997年→2017年 単位:百万人
5.8 → 8.2 (+2.4) 合計
2.3 → 2.3 (-0.0) 自営業主
0.2 → 0.1 (-0.1) 家族従業者
0.9 → 1.1 (+0.2) 役員
1.3 → 1.7 (+0.4) 正規職員・従業員
1.2 → 3.0 (+1.8) 非正規職員・従業員

60歳以上の場合は、人数が大幅に増加している中で、主に非正規雇用が大きく増えています。
以前は経営者として事業に携わる割合が大きかったのに比べ、非正規雇用でも働かざるを得ない人が増えているという実態もありそうですね。

8. 男性の雇用形態有業者数の特徴

今回は、男性労働者の雇用形態別の変化について着目してみました。

若年世代(40歳未満)は、労働者数が減りながら非正規雇用の割合が増えています。
中年世代(40代、50代)は、労働者数はそこまで減っていませんが、経営者の割合が減り、非正規雇用の割合が増えています。
高齢世代(60歳以上)は、労働者数が大きく増え、主に非正規雇用が増加しています。

いずれにしろ、男性労働者でも非正規雇用の割合が増えているのが特徴と言えそうですね。
その分、若年世代で正規雇用が減っていて、中年世代以上では経営者が減っている傾向にあるようです。

平均給与 男性

図9 平均給与 男性
(民間給与実態統計調査)

図9は男性労働者の世代別平均給与です。
それぞれの世代で低所得化しています。
非正規雇用の増加なども影響しているのかもしれませんね。
非正規社員は、正規社員や経営者と比べて一般に低所得な傾向です。
 参考記事: 非正規社員という働き方

このような雇用形態の変化も、男性労働者の低所得化とも関係しているのではないでしょうか?
 参考記事: 豊かになれない日本の労働者

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