135 日本の建物や構築物は多い? - 建造物投資の国際比較

1. 日本では公共投資が減っている!

前回は、機械・設備投資について国際比較をしてみました。
国内では主に企業による設備投資は停滞していますが、国際比較をしてみると少し違った印象である事がわかります。
1980~1990年代で日本は他国に先駆けて、金額的には極めて大きな設備投資をしてきたことがわかりました。

さらにその後も停滞しつつも、先進国では高い水準であり続けています。
これは機械・設備に限った話でしょうか?

今回は、その他の建物・構築物についても同様に比較をしてみたいと思います。

日本 GDP 支出面 総固定資本形成

図1 GDP支出面 総固定資本形成
(国民経済計算 より)

一般に公共投資と呼ばれるものは、総固定資本形成のうち公的に分類されるものです。
主体が政府による、固定資本形成になりますね。
この中に、住宅や企業設備も入りますが、最も大きな項目は一般政府になりますね。

この部分が橋梁や道路といった構築物になるのだと思います。
私たちがイメージする、公共投資は正にこのようなものではないでしょうか。

総固定資本形成 公的(赤線)は、1997年から大きく減少し停滞しています。
企業設備が停滞気味なのに対して、公共投資は明らかにピークから大きく減少し停滞しています。
政府最終消費支出が増加し続けている事と対照的です。

そして、総固定資本形成 公的と政府最終消費支出を合わせた公的需要は、近年ではGDPの約25%と一定で推移しています。
政府最終消費支出の増額と引替えに、総固定資本形成が削減されている、というように見る事も出来ますね。

この総固定資本形成 公的とも関係の深い道路や橋梁と言った構築物は、先進国の中で見て多いのでしょうか、少ないのでしょうか。

2. 1人あたりの推移を見てみよう!

OECDの統計データでも、GDP支出面の項目別の推移が公開されています。

前回は、そのうち総固定資本形成の機械・設備を取り上げました。
今回は、その他の建物・構築物(Other buildings and structures)を取り上げます。

機械・設備(兵器含む)や住宅以外の一般構造物になりますので、総固定資本形成 公的のうち一般政府に近い数値となると思います。 
ただ、このデータは建物や構築物全般を含みますので、民間企業の工場オフィスビルなども含まれていると考えた方が良さそうです。
つまり、日本のデータのうち総固定資本形成 公的の一般政府よりも、数値が大きくなっているはずですね。

そのあたりをご留意いただいたうえで、下記についてご覧いただければと思います。  

総固定資本形成 その他の建物・構築物 1人あたり 2018年

図1 総固定資本形成 その他の建物・構築物 1人あたり 2018年
(OECD 統計データ より) 

図1は総固定資本形成 その他の建物・構築物の1人あたりの金額をドル換算したグラフです。 

日本は、2,934ドルでOECD35か国中、14番目の水準となります。
どちらかと言うと、大きい方という事ですね。 

カナダが3,710ドルで7番目、韓国が3,126ドルで12番目、アメリカが2,937ドルで13番目です。
 緊縮と言われるドイツは、1,923ドルで下位に属しますね。
経済的に厳しいと言われるイタリアは1,313ドルで30位です。

 日本は先進国としては、中くらいよりやや多いくらいの投資がある事になります。 

総固定資本形成 その他の建物・構築物 1人あたり

図2 総固定資本形成 その他の建物・構築物 1人あたり 推移
(OECD統計データ より) 

図2が主要国の時系列推移です。 
なんといっても1990年代の日本の突出ぶりが目立ちます。

もちろん、為替や物価水準の影響で大きく見えている部分もありますが、1995年のピークも含め1980年代後半から2000年代前半まで日本は圧倒的に大きな金額をその他の建物・構築物に投資していたことになります。 
近年ではカナダが突出していたことがわかります。

日本は2000年代以降で停滞していき、他の先進国に追いつかれてきた、といった印象ですね。
それでも高めの水準が維持されているようです。

3. GDPに対するシェアは?

それでは、別の視点からも眺めてみましょう。 

総固定資本形成 その他の建物・構築物 対GDP比 2017年

図4 総固定資本形成 その他の建物・構築物 対GDP比 2017年
(OECD 統計データ より) 

図4が総固定資本形成 その他の建物・構築物の対GDP比です。
 GDPの中でどれだけその他の建物・構築物への投資が大きな割合を占めるかを表します。

ドル換算したグラフだけだと、為替や物価水準の影響も含みますので、違った視点での評価も大切と思います。

日本は7.3%とOECD35か国中で11番目の水準です。
比較的上位に位置するという事ですね。 

韓国が9.8%で2番目、カナダが7.9%で8番目、ドイツとイタリアが最下位争いと言った状況です。
アメリカも4.7%と非常に低い割合である事がわかります。 

総固定資本形成 その他の建物・構築物 対GDP比

図5 総固定資本形成 その他の建物・構築物 対GDP比 推移
(OECD 統計データ より) 

図5が主要国の推移です。 

韓国は非常に大きな割合を占め続けている事がわかりますが、日本も2000年代前半頃までは極めて大きな割合をその他の建物・構築物に投資していたことがわかります。
どうやら為替や物価水準の影響だけではないようですね。
日本は公共事業叩きが多かったと聞きますが、多くはこの頃のことを指しているのかもしれません。

対GDP比が下がり、2006年頃を底にして近年ではやや上昇傾向ではあります。
ただ、他の主要国に比べると、まだやや高い水準ではあるようです。

現在でも、ドイツに比べれば2倍近くの割合をその他の建物・構築物への投資に振り分けているという事になりますね。 

4. 建物・構築物への投資は多いのか?

今回はその他の建物・構築物について取り上げてみました。

OECDのデータによるその他の建物・構築物は必ずしも公共投資を指していませんが、多くは包含されるものと思います。
日本は1980~1990年代で、極めて高い水準の投資が行われていたことになりそうです。

その後減少して、停滞している状況が続きます。
現在は、他国よりもやや多い程度ですね。

建設の物価水準が高い事を考えると、量的な割合は他国並みと考えても良いかもしれません。
もちろん、各国で事情が異なる中での比較となりますのでご注意ください。

日本は台風や地震など天災の多い地域で、必然的に防災・減災の需要が大きい国ではあると思います。
一時は他国に比べて極めて高い水準でお金を使っていましたが、現在は他国並みにまで落ち着いてきています。

また、部門別にみると、企業の投資は他国に対して高い水準が続いてきたようです。
それでも生産性が高まらなかったというのはとても不思議な状況に思えます。

施設や設備にばかり頼った事業となり、本来労働者が稼ぐ付加価値を高める事が出来ていなかったのかもしれませんね。

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