194 先進国の産業構造の変化 - 産業別GDPシェア
1. 産業のバランスを見てみよう!
前回は、主要国各国の名目GDPと実質GDPの変化率についての相関図をご紹介しました。
各国のほとんどの産業は、名目値も実質値も物価もプラス成長しています。
共通しているのは情報通信業が名目値、実質値もプラス成長ながら、物価がマイナス成長という点です。
PCやスマートホンの普及、低価格化や、通信料の値下げなどが関係していそうですね。
今回は、各国の産業のバランスについて着目してみたいと思います。
各国の産業シェアがどのように変化しているのかを見ていくと、意外な共通点があるかもしれません。

図1 GDP産業別 シェア アメリカ
(OECD統計データ より)
図1はアメリカの産業別GDPのシェアをグラフ化したものです。
1997年と2019年の比較となります。
アメリカは1997年に工業が約20%のシェアがありましたが、直近では14.5%となっています。
一方でシェアを増しているのは、公務・教育・保健や専門サービス業ですね。
今まで見てきた通り、シェアが減っている産業でも、経済規模自体はプラス成長している事はご留意ください。
決してシェアが落ちたからと言って衰退している産業というわけではありません。
アメリカ 産業別 GDP シェア
1997年→2019年 単位[%]
20.6 → 21.7 公務・教育・保健
17.4 → 16.1 一般サービス業
19.9 → 14.5 工業
11.4 → 12.7 不動産業
10.1 → 12.0 専門サービス業
アメリカはやはり、防衛産業も含まれる公務・教育・保健が大きな産業ですね。
2. 他の主要国はどんな産業構造?
アメリカ以外にも、ドイツやイギリスなどの主要国についても見ていきましょう。

図2 GDP 産業別 シェア ドイツ
(OECD統計データ より)
図2がドイツのグラフです。
やはり工業国らしく工業のシェアが高く、変化もほとんどありません。
ドイツはGDPの約4分の1が工業という事になります。
他の産業もシェアの変化は大きくありませんが、やや専門サービス業の割合が増えているようです。
ドイツ 産業別 GDP シェア
1997年→2019年 単位[%]
25.5 → 24.8 工業
17.3 → 18.6 公務・教育・保健
15.7 → 16.0 一般サービス業
10.0 → 11.5 専門サービス業
11.1 → 10.5 不動産業

図3 GDP 産業別 シェア イギリス
(OECD統計データ より)
図3がイギリスのグラフです。
イギリスは工業のシェアが大きく減っていますね、その代わり公務・教育・保健と専門サービス業のシェアが増えています。
工業のシェアは減っていますが、GDP自体は成長していますのでご注意ください。
イギリス 産業別 GDP シェア
1997年→2019年 単位[%]
15.5 → 18.3 公務・教育・保健
18.7 → 17.4 一般サービス業
21.4 → 13.7 工業
14.7 → 13.1 不動産業
9.1 → 12.5 専門サービス業

図4 GDP 産業別 シェア フランス
(OECD統計データ より)
図4がフランスのグラフです。
やはりフランスも工業のシェアが大きく低下していますね。
一方で大きく増えているのがやはり専門サービス業です。
フランス 産業別 GDP シェア
1997年→2019年 単位[%]
21.8 → 21.9 公務・教育・保健
17.9 → 17.9 一般サービス業
10.9 → 14.1 専門サービス業
19.3 → 13.9 工業
11.0 → 12.8 不動産業
これらの国々を見てみると、工業立国であるドイツ以外は、工業のシェアが低下し、専門サービス業のシェアが増加しているという共通点がありそうです。
また、どの国も公務・教育・保健の割合が高いのも特徴ですね。
情報通信業も経済規模としては小さいですが、各国ともシェアを増加させています。
3. 日本の産業構造の変化とは!?
それでは日本のグラフも見ていきましょう。

図5 GDP 産業別 シェア 日本
(OECD統計データ より)
図5が日本のグラフです。
特徴的なのは、公務・教育・保健と専門サービス業のシェアが大きく増加しているところですね。
一方で、最大産業である工業のシェアは縮小しています。
一般サービス業や建設業のシェアもそれなりに低下しているのも特徴ですね。
とはいえ、イギリスやフランスが工業のシェアが15%未満であるのに対して、日本は直近でも23.6%と4分の1近くの水準を保っています。
また、一般サービス業も日本は直近で20.5%と、16~18%の他国に対してシェアが大きめである事も特徴です。
日本 産業別 GDP シェア
1997年→2019年 単位[%]
26.8 → 23.6 工業
22.0 → 20.5 一般サービス業
12.9 → 16.4 公務・教育・保健
10.4 → 11.8 不動産業
4.8 → 8.2 専門サービス業
日本の場合はGDPの総量が停滞していて、特に工業のGDPが縮小している事にも注意が必要です。
シェアも経済規模も縮小しているわけですね。
一方で、各国同様に公務・教育・保健や専門サービス業のシェアが大きく増大していますが、これらの産業も物価は下落しています。値段を安くしながら規模を拡大している状況です。
4. 日本の産業変化の特徴とは
今回は、各国のGDPの産業別シェアについて着目してみました。
日本はドイツ同様に、工業立国である事には変わりありませんが、ドイツはそのシェアをほぼ維持しているのに対して、日本は低下傾向です。
日本は工業立国ですが、その工業が最も変質し、縮小してしまっています。
成長著しい公務・教育・保健は公共性の高い事業で、低賃金の仕事が多い分野でもあります。
専門サービス業も、コンサルティングや士業という高付加価値な仕事もありますが、労働者派遣業も含まれています。
これらがどの程度の割合で含まれているのかは統計データからは見えませんが、物価が低下していますので派遣業の割合が増えているのかもしれません。
一般的に言われるのは、サービス業よりも工業の方が労働生産性が高いという事ですね。
日本はその工業が縮小していて、一般サービス業の割合が他国よりも高い状況です。
日本が成長していくために必要な産業のバランスとはどのようなものなのか、よく考えていく必要があるように思います。
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