288 一般労働者の雇用保護 - 集団・大量解雇と総合指数

1. 集団解雇についての雇用保護指標

前回までは、一般労働者個別解雇(Individual dismissals)についての雇用保護指標をご紹介しました。
日本は個別解雇については総合すると先進国の中で比較的雇用保護が緩い方になるようです。

今回は集団解雇(Collective dismissals)と、一般労働者の総合指標についてご紹介したいと思います。
参照するのは、OECD Employment Protection 2020です。

また、雇用保護指標の構造については、2013年の改定時に日本の労働政策研究・研修機構でも紹介されていますので、日本語表記などはこのサイトの表記を一部利用しています。
 参考URL: 経済協力開発機構の雇用保護指標2013について:OECD

集団解雇に関する冒頭部分を下記の通り引用いたします(Google翻訳で翻訳後、抜粋・編集)。

「需要の持続的な減少や必要な技術革新などにより経済的困難が続くと、企業は比較的短期間に大量の労働者を解雇するなど、労働力の再構築を行う可能性があります。 このような状況では、特定の規制が適用されるのが一般的です。
新しい OECD データは、個別解雇の雇用保護指標と同様に計算される集団解雇の雇用保護指標を示しています。 集団解雇は通常経済的理由で発生し、集団解雇規制の包括的な評価の重要性がさらに高まっています。

世界的な金融経済危機を受けて、「ゾンビ企業」、つまり財務上の義務を果たすことが困難な企業の数が増加しています。 さらに、名目賃金の下向き硬直性、低インフレ、名目賃金の伸びの弱さを背景に、労働力ではなく賃金の調整が困難な企業の余地は縮小しています。 デジタル化とグローバル化の傾向により、より多くの企業が従業員を再編する可能性もあります。

実際には個別解雇の規制が集団解雇に対する最低限度の役割を果たすことが多いため、個別解雇の規制が厳しい場合には、集団解雇の規制も厳しくなる傾向があります。 国を問わず、集団解雇に対する追加の制限(集団解雇と個別解雇の規制の違い)は、個別解雇の規制の厳格さとはあまり関係がありません。 したがって、集団解雇がどの程度特定の規制の対象となるかは、個別の解雇規制の自然な結果というよりも、政府や国の選択によるものと考えられます。

集団解雇の極端な形態は大量解雇であり、OECDでは1か月に少なくとも120人の労働者を一時解雇することと定義しています。 この定義により、一連の個別解雇に適用される特定の規制の基準は、一連の個別解雇専用の法律を制定しているすべての OECD 諸国で確実に満たされます。 測定された規制の度合いは、一般に、大量解雇の場合と、特定の規制の閾値を超える解雇数を伴う小規模解雇の場合と同じです。 したがって、個別の解雇と比較して特定の規制の基準値が高く、追加の規制がより広範であるほど、集団解雇の規制の厳しさを示す指標と集団解雇の規制の厳しさの指標との差は大きくなります。」

OECDの最新の指標では、集団解雇も個別解雇と同様に評価されているようです。

比較的少人数の場合の集団解雇と、大量解雇の場合での指標が公開されています。

2.集団解雇に対する雇用保護

まず集団解雇についての雇用保護指標を見てみましょう。

雇用保護指標 一般労働者 集団解雇 2019年

図1 雇用保護指標 一般労働者 集団解雇 2019年
(OECD統計データより)

図1が雇用保護指標のうち一般労働者集団解雇(Collective dismissals)についての比較です。
集団解雇は、1カ月に数名程度の規模と定義されているようです。

日本は2.04で、OECD平均値(2.44)を下回り、フランス(3.25)、イタリア(3.19)、ドイツ(2.61)、韓国(2.33)、イギリス(2.31)を下回ります。
雇用保護でイギリスを下回るのは珍しいですね。

日本では集団解雇に対する規制がかなり緩いという事になりそうです。

また、OECDのサイト中では、個別解雇の場合との比較もされていますが、個別解雇の指数と集団解雇の指数には強い関係があるようです。

3. 大量解雇に対する雇用保護

OECDでは、集団解雇だけでなく大量解雇(Mass dismissals)についても指数が公開されています。
大量解雇は、1カ月に120人以上の規模と定義されています。

雇用保護指標 一般労働者 大量解雇 2019年

図2 雇用保護指標 一般労働者 大量解雇 2019年
(OECD統計データより)

図2が大量解雇に対する雇用保護指標となります。

集団解雇とそれほど傾向は変わりません。
ドイツがやや厳しくなる方向に、韓国がやや緩くなる方向に相対的な順位が変わっている程度ですね。

やはり、主要先進国では、フランス、イタリア、ドイツが厳しく、日本、カナダ、アメリカが緩いという評価になるようです。

4. 総合的な雇用保護指標

最後に、個別解雇と集団解雇の指数を合算した雇用保護指標総合指数について比較してみましょう。

雇用保護指標 一般労働者 2019年

図3 雇用保護指標 一般労働者 2019年
(OECD統計データより)

図3が一般労働者雇用保護指標 総合指数となります。
個別解雇と集団解雇で重みづけした数値を合算しているとの事です。

最も厳しいのはチェコで3.03、最も緩いのはアメリカで1.31となります。

OECDの平均値は2.31です
イタリア(2.86)、フランス(2.68)はかなり雇用保護が厳しい国、韓国(2.37)、ドイツ(2.33)は平均的~やや厳しい国と言えそうです。
日本は2.08で平均値を大きく下回りますので、雇用保護が緩い国の部類に入りそうです。

日本より緩い主要先進国はイギリス(1.90)、カナダ(1.68)、アメリカ(1.31)です。

5. 雇用保護の特徴

今回は一般労働者の雇用保護について、集団・大量解雇の指数と、総合指数をご紹介しました。

日本は集団・大量解雇の場合も、個別解雇との総合で見ても相対的に雇用保護の弱い国と言えそうです。
日本より緩い国は、イギリス、アメリカ、カナダです。
一方欧州各国の主要国フランス、ドイツ、イタリアは雇用保護が厳しい国となります。

欧米として一括りにされがちですが、その中でもずいぶんと傾向が異なるのが興味深いですね。
日本はアメリカやカナダ寄りで、先進国の中では雇用保護が弱いという事に意外と感じた方も多いのではないでしょうか。

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