164 日本の機械・設備の水準とは? - 1人あたり資産残高の国際比較
生産資産のうち、機械・設備は製造業や生産性と大きく関係します。機械・設備残高の水準を国際比較し、日本の立ち位置について確認してみます。
目 次
1. 日本の機械・設備残高
前回は、日本の生産資産のうち、住宅について取り上げてみました。
OECDの中で比較した場合、日本は1人あたりで見た場合の住宅資産がかなり低い方だという事がわかりました。
日本は災害が多い国なので、そもそもの建物自体が毀損しやすく、資産価値が目減りするスピードが速いという事情もあるようです。
本来は新しく住宅を建て替える需要も多いという事と思いますが、日本の場合は、住宅資産への投資(フロー)も停滞しています。
今回は、同じ生産資産の中でも、特に企業(とりわけ製造業)との関係が強い機械・設備(Machinery and equipment and weapon system)について取り上げていきます。
まずは日本の状況を確認してみましょう。
図1 生産資産 機械・設備 日本
(OECD統計データより)
図1が日本の生産資産(固定資産)のうち、機械・設備の推移です。
1997年をピークにしていったん減少し、その後アップダウンしながらも停滞しているような状況ですね。
長期的に見れば横ばい傾向で、220兆円~250兆円の間で推移しているようです。
2. 1人あたり機械・設備残高の推移
続いて、OECD各国の1人あたりドル換算値で国際比較してみましょう。
図2 生産資産 機械・設備 1人あたり ドル換算
(OECD 統計データ より)
図2は生産資産のうち、機械・設備の推移グラフです。
人口1人あたり ドル換算値です。
日本は円高だった1995年をピークに上昇し、その後停滞しています。
このあたりの傾向は水準の高低はあるものの、機械・設備、住宅、その他の建物・構築物ともに同じような動きですね。
ストック面だけでなく、フロー面(総固定資本形成)でも同じような推移です。
日本の水準は一時はアメリカを超え高い水準となったものの、長い停滞のうちに同じ工業立国のドイツに抜かれ、OECDの平均値程度にまで落ち込んでいるのがわかります。
3. 1人あたり機械・設備残高の国際比較:1997年
日本の様々な経済指標がピークとなった1997年の国際比較をしてみましょう。
図3 生産資産 機械・設備 1997年 1人あたり ドル換算
(OECD 統計データ より)
1997年の状態を切り取って、水準の高い順に並べたのが図3です。
この年は、円高だったという事もありますが、日本のGDPや平均給与がピークとなったタイミングです。
この頃日本は、機械・設備の保有額でも先進国で高い水準だった事がわかります。
日本の機械・設備は1人あたり16,231ドルで、ルクセンブルクやデンマーク、ノルウェーに次いで4番目、アメリカ(14,292ドル)、ドイツ(12,720ドル)よりも高く、OECD平均(10,302ドル)の1.6倍の水準です。
4. 1人あたり機械・設備残高の国際比較:2018年
次に2018年の国際比較です。
図4 生産資産 機械・設備 2018年 1人あたり ドル換算
(OECD 統計データ より)
図4が2018年のグラフです。
ルクセンブルクが突出して高い数値に達しているのが印象的です。
アメリカやドイツはそれぞれ5位と10位で順位を上げています。
日本は16,450ドルで1997年とほとんど変わらない水準ですが、大幅に順位が下がっています
OECD31か国中12番目で、平均値16,505ドルよりも少ない水準です。
1997年には倍以上の差をつけていた韓国にもかなり肉薄されているのがわかりますね。
機械・設備については相対的に高めの順位ですが、金額面では平均値並み(ルクセンブルクに引っ張られて平均値が上がっている影響も大きいですが)です。
日本は、機械・設備の投資額(総固定資本形成)が減少・停滞しています。
参考記事: 日本の設備投資は少ない?
参考記事: 設備投資の減る日本企業
その蓄積である生産資産の残高でも停滞している事になります。
5. 機械・設備残高の成長度合い
次に1997年からの成長率についても見てみましょう。
図5 生産資産 機械・設備
(OECD統計データ より)
図5は1997年を基準(1.0)とした時の機械・設備の倍率です。
他の主要国は1.5倍以上に成長していますが、日本はマイナス成長です。
確かにバブル期に大きな設備投資を進めていたと見られますが、その後は資産金額としても目減りしている事になりますね。
6. 機械・設備残高の特徴
今回は生産資産のうち機械・設備についての水準を比較してみました。
日本は1990年代にかなり高い水準に達しますが、その後やや目減りしています。
近年では先進国の平均値を若干下回る程度の水準です。
同じ工業国のドイツにはずいぶん差をつけれているようです。
機械・設備は生産能力を高めるものでもありますので、成長する世界の中で停滞しているという事は、相対的に生産性が落ちている事になると思います。
日本企業の生産性が低いといわれる理由の一つがこの機械・設備の停滞ともいえるかもしれませんね。
特に製造業の国内での事業活動の停滞を窺わせます。
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