216 気になる日本人の年金水準 - 家計の保険・年金の国際比較

家計の金融資産のうち、保険・年金の水準について国際比較してみます。日本の家計は先進国で中程度の保険・年金を持っているようです。

1. 日本の家計の保険・年金

前回は、家計の金融資産のうち株式等についてフォーカスしてみました。
日本の家計は現金・預金は主要国で圧倒的な高水準ではありますが、株式等ではむしろ低い水準であることがわかりました。
現金・預金の大部分は高齢層が保有していますが、それが消費に回っているわけでも、金融投資に回っているわけでもない実態がありそうです。
経済としては止まったお金という事になりますね。

今回は、家計の金融資産のうち、現金・預金株式等以外の項目についてフォーカスしてみます。
それが、保険・年金です。

これらは、まだ手元にないけれども将来貰えることが決まっているお金といえますね。
英語表記では、Insurance pension and standardised guaranteesとなります。

さっそく、家計全体の総額から見ていきましょう。

金融資産 保険・年金 家計 日本

図1 金融資産 保険・年金 家計 日本
(OECD統計データより)

図1が日本の家計の金融資産のうち、保険・年金の推移です。

2002年にかけて右肩上がりに増加していましたが、その後一時減少し、停滞傾向が続いています。
2008年あたりから緩やかに増加しているようにも見えます。

近年では500兆円強といった水準です。

2. 家計の保険・年金の推移

続いて、家計の保険・年金についてのドル換算値での国際比較をしてみましょう。

家計 金融資産 保険・年金

図2 家計 金融資産 保険・年金
(OECD統計データ より)

図2が家計の金融資産のうち、保険・年金の推移です

やはりアメリカが圧倒的な水準ですが、日本の約半分の人口のイギリスが近年では日本を上回って第2位となっている点が特徴的です。
日本は停滞気味で、他国との差が少しずつ縮まっているような推移です。

3. 家計の1人あたり保険・年金の推移

それでは、人口1人あたりの水準についても比較してみましょう。

金融資産 保険・年金 1人あたり 家計

図3 家計 金融資産 保険・年金 1人あたり
(OECD 統計データ より)

図3が人口1人あたり保険・年金の推移です。

日本は1990年代にアメリカやイギリスと同じくらいの高水準でしたが、その後横ばい傾向が続いています。
直近ではカナダに抜かれ、フランスやドイツと同じくらいの水準のようです。
イギリスがアメリカと同じくらいの高水準であるのが特徴的ですね。

4. 家計の1人あたり保険・年金の国際比較:1997年

それでは、特徴的な年の具体的な数値で比較してみましょう。

家計 金融資産 保険・年金 1人あたり 1997年

図4 家計 金融資産 保険・年金 1人あたり 1997年
(OECD統計データ より)

図4は日本経済の転換点となった1997年のグラフです。
水準の高い国順に並べています。

家計 金融資産 保険・年金 1人あたり
1997年 単位:ドル 26か国中
1位 40,320 イギリス
2位 36,302 アメリカ
4位 26,388 日本
6位 21,069 カナダ
8位 10,838 ドイツ
10位 9,451 フランス
14位 4,399 イタリア
OECD平均 9,840

この頃は為替の影響もあると思いますが、イギリスがアメリカを抜いて1位となっていますね。
日本も4位と非常に高い水準で、ドイツの2.5倍です。

5. 家計の1人あたり保険・年金の国際比較:2019年

続いて2019年の国際比較です。

家計 金融資産 保険・年金 1人あたり 2019年

図5 家計 金融資産 保険・年金 1人あたり 2019年
(OECD統計データ より)

図5が2019年のグラフです。

家計 金融資産 保険・年金 1人あたり
2019年 単位:ドル 36か国中
5位 94,398 アメリカ
6位 74,424 イギリス
8位 57,942 カナダ
11位 38,253 日本
13位 36,026 フランス
14位 32,278 ドイツ
17位 21,845 韓国
18位 20,767 イタリア
OECD平均 34,647

日本は1997年の時点よりも増えてはいますが、アメリカやイギリスの増え方からすると大きく見劣りするようです。
ただし、1人あたりGDPや平均所得が20位程度であることと比較すれば、比較的上位にとどまっている印象です。

6. 家計の保険・年金の増加度合

続いて、各国の成長度合についても比較してみましょう。

家計 金融資産 保険・年金

図6 家計 金融資産 保険・年金 成長率
(OECD統計データ より)

図6が1995年を起点とした倍率のグラフです。

日本はやはり停滞が続いています。
アメリカ、イギリス、カナダ、ドイツがほぼ一致して成長しているのが興味深いですね。
イタリアとフランスは非常に高い成長率のようです。

やはり日本は1990年代の水準がもともと高く、その後の成長は鈍化していることがよくわかるのではないでしょうか。

7. 家計の保険・年金の特徴

今回は、家計の金融資産のうち、保険・年金についてご紹介しました。
やはり日本は過去の水準が高かったようですが、その後の成長率は非常に低く、他国にキャッチアップされている状況です。

近年では先進国でもまだ高い順位ではありますが、今後はさらに順位が低下していくことが予想されます。
保険・年金は、今後条件を満たせば支給される予定のまだ手元にないお金ですね。

家計 金融資産・負債

図7 家計 金融資産・負債 詳細
(日本銀行 資金循環 より)

図7は、日銀 資金循環のデータで、家計金融資産負債の詳細項目をグラフ化したものです。

今回の年金・保険は、このグラフ中の保険・年金・定型保障に相当すると考えられます。
日本の場合、現金・預金が圧倒的に多い水準ですが、次いでこの保険・年金・定型保障が多いようです。
ただし、2004年ころから現金・預金の増加傾向が強まるのに対して、保険・年金・定型保障は停滞傾向となります。

一見右肩上がりに豊かになっているように見える家計ですが、他国と相対的に比較してみると、そう楽観的にはいられない状況であることがわかるのではないでしょうか。

日本は、すでに平均給与などのフロー面では先進国下位にまで立ち位置を低下させています。
このままだと様々なストック面でも相対的に低下していく事が考えられそうです。

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