048 自動車産業の変化 - 国内事業の生産性と給与水準
日本の自動車産業は、メーカー別で見れば海外生産が増え拡大していまが、統計データから日本の自動車産業の変化を可視化してみます。
1. 自動車産業の売上高・付加価値・給与総額
前回は、自動車の生産、販売、輸出のデータをご紹介しました。
国内生産と海外生産の比較をすると、国内生産は横ばいなのに対して海外生産が増加し、既に海外生産の方が2倍以上の状態であることが分かりました。
今回は、このような自動車産業の変化を法人企業統計調査からみてみたいと思います。
図1 日本 自動車・同付属品製造業 売上高・付加価値・給与総額・利益
(法人企業統計調査 より)
図1が、自動車産業(自動車・同付属品製造業)のフロー面の推移です。
売上高(赤、左軸)は1990年に一度ピークとなり、その後停滞しますが近年増加傾向です。
直近では75兆円ほどとなります。
付加価値(青)はアップダウンしながらも増加傾向、給与総額(緑)は1990年以降横ばいが続きましたが、2011年あたりから増加傾向です。
最近では10兆円前後の経済規模となりそうです。
営業利益(橙)はリーマンショックやコロナ禍の影響もありますが、全体的に増加傾向が続きますね。
一方で、営業外損益(水色)は増加傾向が続き、近年では営業利益と同じくらいです。
そして、営業利益よりも当期純利益(ピンク)の方が大きい状況になっていますね。
これは、前回見たように海外事業からの配当金などが、営業外収益を大きく嵩上げしている事を窺わせます。
自動車産業の企業活動は、アップダウンがありながらも上向き傾向ではあるようです。
2. 自動車産業の労働者数・生産性・平均給与
続いて、労働者数の推移や、労働者1人あたりの生産性などを見ていきましょう。
図2 日本 自動車・同付属品製造業 労働者数・1人あたり付加価値・平均給与
(法人企業統計調査 より)
図2が自動車産業の労働者数、1人あたり付加価値、平均給与です。
まず労働者数(従業員数+役員数、図中赤、左軸)の推移を見ると、1993年をピークにして、減少・停滞している事がわかります。
国内の自動車産業に携わる労働者が目減りしているというのは意外でした。
派遣労働者の増加なども考えられるかもしれませんね。
この場合は、派遣労働者は自動車産業の労働者ではなく、職業紹介・労働者派遣業(その他のサービス業)などの労働者としてカウントされている可能性があります。
労働者1人あたりの付加価値(生産性、青)は、リーマンショックやコロナ禍での減少があるものの、全体を通じて緩やかな上昇傾向のようです。
平均給与(緑)も増加傾向ではありますが、リーマンショック期の減少があり、2018年にリーマンショック前の水準を超えたような推移です。
そこへコロナ禍によりまた減少している様子が示されています。
1人あたり付加価値(青)も平均給与(緑)も、全産業の平均値(橙、ピンク)を大きく上回る水準で推移しています。
自動車産業は、比較的生産性や給与水準の高い産業であることがわかります。
3. 日本の自動車産業の特徴
今回は法人企業統計調査から、自動車産業の活動についてご紹介しました。
付加価値(GDP)は10兆円規模ということになりそうです。
製造業のGDPが100兆円程度ですので、約1割を自動車産業が占める事になります。
労働者数はやや減りつつも、売上高や付加価値は増加傾向と言えます。
生産性や給与水準も全産業の平均値と比べると非常に高い水準ですね。
今後EVへのシフトが加速すると言われますが、どのように変化していくのか継続して注視していきたいと思います。
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