089 先進国の成長産業とは? - GDP生産面の変化
産業別GDPの変化度合について、各国の推移をご紹介します。各国とも専門サービス業や情報通信業の伸びが大きいようです。
目 次
1. アメリカのGDP生産面の変化
前回は、G7各国のGDP生産面について可視化してみました。
それぞれの国で、経済を牽引する強みのある産業が異なる事がわかりました。
今回はそれぞれの産業の成長率に着目して、どのような産業が成長しているのかを可視化してみましょう。
まずは成長の大きな、アメリカ、イギリス、カナダについて着目してみましょう。
図1 アメリカ GDP 生産面
(OECD 統計データ より)
図1がアメリカの産業別名目GDP(付加価値)の成長度合いを表すグラフです。
1997年時点の値を1.0とした場合の倍率として表現しています。
黒い直線が年率1%の成長曲線、破線が2%、点線(太)が3%、点線(細)が4%の成長曲線です。
参考までに赤い実線で消費者物価指数(CPI)を表現しています。
厳密には産業ごとのデフレータがあり、それぞれで成長率への関与度合が異なりますが、今回はCPIだけ併記しておきます。
CPIよりも上であれば、平均的な消費者物価の上昇よりもその産業の実質的な成長がプラスである事を示します。
アメリカの場合は全ての産業で、大きくプラス成長です。
CPIは年率2%程度で上昇しています。
工業、農林水産業以外は非常に大きな成長率であることが分かります。
20年程の間に、いずれも2倍以上、年率4%以上の成長です。
特に情報通信業、専門サービス業、不動産業、金融保険業の成長が著しいようです。
建設業も一時は大きく減少しますが、2011年あたりか急回復している様子が分かります。
2. イギリスのGDP生産面の変化
つづいてイギリスのデータを見てみましょう。
図2 イギリス 生産面
(OECD 統計データ より)
図2がイギリスのグラフです。
アメリカよりも極端に成長産業と停滞産業が分かれているようですね。
CPIはやはり年率2%程度の増加です。
工業と農林水産業が若干のプラスとなっていますが、CPIよりも低い水準のようです。
一般サービス業と不動産業は2~3%成長で、約20年の間に1.8~2倍の成長です。
それ以外の産業が大きく伸びていて、年率4%を大きく超える成長ですね。
その中でも専門サービス業と情報通信業が著しく成長しています。
専門サービス業は20年程の間に3.4倍も拡大しているようです。
3. カナダのGDP生産面の変化
次にカナダのデータです。
図3 カナダ GDP 生産面
(OECD 統計データ より)
図3はカナダのグラフです。
CPIはやはり2%程度の増加です。
アメリカやイギリスと異なるのは、建設業の成長が最も大きい点です。
3.2倍ほども増加しています。
次に専門サービス業、情報通信業の増加が大きいですね。
不安定ながらも農林水産業の成長が大きい事もカナダの特徴です。
情報通信業と専門サービス業が全体の成長を引き上げているように見受けられます。
4. ドイツのGDP生産面の変化
次にドイツのデータです。
図4 ドイツ GDP 生産面
(OECD 統計データ より)
図4がドイツのグラフです。
アメリカやイギリスなどと比べると、3倍を超えるような大きな成長産業がありません。
それでも、専門サービス業、情報通信業は年率3%を超える成長で、20年間に2倍近くに増大しています。
次いで、公務・教育・保健、工業、不動産業と続きます。
ドイツの場合は、工業もプラス成長です。
ドイツは、産業別GDPで工業が断トツのシェアを誇ります。
その工業が、低成長ながら他の産業と同程度で増大している事は、非常に興味深いですね。
建設業と農林水産業がマイナス成長だったのですが、近年で回復しています。
特に建設業は大きくマイナス成長だったのが、2006年あたりから安定してプラス成長に転じています。
5. フランスのGDP生産面の変化
続いてフランスのデータです。
図5 フランス GDP 生産面
(OECD 統計データ より)
図5がフランスのグラフです。
ドイツと比べると、成長産業とそうでない産業がはっきりとしていますね。
イギリスに近い形のようです。
やはり製造業、農林水産業が名目では成長していますが、CPIを下回る程度の低水準です。
専門サービス業が最も大きな成長で、年率4%、20年ほどで2.4倍ほどの増大です。
それ以外の産業も概ね年率3%を超える高い成長率です。
近年停滞傾向ですが、1997年と比べると建設業の成長が大きい事もフランスの特徴ですね。
6. イタリアのGDP生産面の変化
続いてイタリアのデータです。
図6 イタリア GDP 生産面
(OECD 統計データ より)
図6がイタリアのグラフです。
全体ではすべてプラス成長ですが、農林水産業、工業だけでなく、建設業もCPIよりも低い成長率となっています。
建設業は2008年のリーマンショックを機に減少し始めていますね。
近年ではやや持ち直しているようですが、ピークと比べるとかなり減少しているようです。
不動産業が比較的大きな成長で年率4%近くで、金融保険業も高い伸びでしたが近年ではやや減少しています。
他の先進国で成長の大きい専門サービス業や情報通信業があまり伸びていないようです。
全体的に2008年頃からの停滞が目立ちますので、リーマンショックからの回復に時間がかかっている様子が見て取れます。
7. 日本のGDP生産面の変化
最後に日本のデータを確認してみましょう。
図7 日本 GDP 生産面
(OECD 統計データ より)
図7が日本のグラフです。
他国とスケールを合わせたままだとちょっとわかりにくいので、縦軸を拡大してみます。
図8 日本 GDP 生産面 拡大
(OECD統計データ より)
CPIはほぼゼロですね。
マイナス成長なのが、農林水産業、工業、建設業、一般サービス業、金融保険業、その他サービス業です。
これだけの産業が縮小していることになります。
特に建設業、農林水産業の縮小の割合が大きいようです。
最近では持ち直していますが、それでも1997年から2割程度マイナスになってしまっています。
工業や金融保険業も1~2割程の減少で、縮小産業となっています。
一般サービス業が、良くてマイナス気味のゼロ成長といったところです。
1%成長が、不動産業、公務・教育・保健、情報通信業です。
20年程で2割程度増大しています。
専門サービス業が、やや高い水準での成長を示しています。
年率2%程度、20年程で4割程度の増大です。
日本は、マイナスの縮小産業が多いようです。
また、年率3%や4%を超えるような成長産業がありません。
低成長で比較的状況の近いイタリアでも全てプラス成長です。
この中でも成長が大きな専門サービス業も、全体のシェアとしては8%弱ですので、経済全体を支えるだけの大きな産業とは言えません。
8. 主要先進国のGDP生産面の変化の特徴
今回も含め、ここ数回ほどは敢えてG7の主要国に絞って比較をしています。
経済的に豊かな先進国ほど成長率は低いわけですから、他の国ではもっと成長率が高い事になります。
例外的には2008年以降のギリシャの停滞などがあげられますが、そのような国は非常に限定的です。
これらの低成長な先進国と比較しても、日本は縮小している産業が多いようです。
多くの国では農林水産業や工業が低成長です。
しかしプラス成長はしています。
日本は農林水産業、工業がマイナス成長で、しかも建設業や金融保険業、その他サービス業などほかにもマイナス成長の産業があります。
プラス成長している産業も極めて低成長です。
経済の柱となるような成長産業も見いだせていないように見受けられます。
日本はこれからどんな産業を軸に国民生活を成り立たせていく事になるのか、大変興味深いです。
近年で各産業とも若干持ち直し気味な所に期待したいところです。
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