137 政府の消費支出は多いのか? - 政府最終消費支出の国際比較

日本のGDP支出面のうち、政府最終消費支出は唯一増加が続く項目です。政府最終消費支出に含まれる項目を確認し、その水準の国際比較をしてみます。

1. 政府最終消費支出とは

前回は、GDP支出面の項目のうち、将来の投資とも言うべき総資本形成の国際比較をしてみました。
日本は2000年代中頃まで、他の先進国と比べて極めて高い水準で総資本形成の支出を継続していました。
いわば、先行投資をし続けてきたような状況ですが、2000年中頃から急激に投資規模を減少させています。
この間、日本企業の海外進出が進み、労働者の低所得化も進んできました。
現在は、総資本形成は他国並みの水準となっています。

今回は政府の最終消費支出についてご紹介します。
政府の公的需要は、総固定資本形成 公的と、政府最終消費支出です、現在のところ日本の政府支出はGDPのおよそ25%を占めます。

公共投資と関係の深い一般建造物に関する総資本形成は以前取り上げましたので、今回は政府最終消費支出にフォーカスしてみたいと思います。

政府最終消費支出は、次のように区分されます。

・一般行政サービス
・防衛
・公共の秩序・安全
・経済業務
・環境保護
・住宅・地域アメニティ
・保健
・娯楽・文化・宗教
・教育
・社会保護

政府最終消費支出のうち、環境保護など国民全体に貢献する支出は集合消費支出と呼ばれます。
一方で、個人の消費となる支出は個別消費支出として分類されます。

日本国内の統計データを見ると、政府最終消費支出は右肩上がりの状況です。

このような推移や水準は先進国として一般的なのか見ていきましょう。

2. 1人あたり政府最終消費支出の国際比較

まずは人口1人あたりの政府最終消費支出の国際比較です。

政府最終消費支出 1人あたり 2018年

図1 政府最終消費支出 1人あたり 2018年
(OECD統計データ より)

図1がOECD35か国について、政府最終消費支出のドル換算(為替レート換算)したグラフです。
総固定資本形成はどどちらかと言えば上位でしたが、政府最終消費支出は中位でもやや下の方ですね。

日本は、1人あたり7,759ドルで20位で平均値をやや下回ります。
G7で6番目です。

上位はやはり北欧が多いようです。
高負担、高福祉の国々なので、医療費等の政府支出が大きいという事だと思います。
カナダやフランス、ドイツなどは9,500ドル前後で同じくらいですね。

3. 1人あたり政府最終消費支出の推移

つづいて、1人あたりの政府最終消費支出の推移を見てみましょう。

政府最終消費支出 1人あたり

図2 政府最終消費支出 1人あたり 推移
(OECD 統計データ より)

図2が主要国の推移です。

傾向としては各国とも右肩上がりで増大しています。
当然為替や物価の影響もあるわけですが、日本も他国と足並みを揃えて増大している状況です。

日本は、直近の水準としては先進国の中でも少ない方ですが、他の主要国同様に政府最終消費支出を増やしている事が確認できました。

4. 対GDP比の政府最終消費支出の国際比較

もう一つの見方として対GDP比でも眺めてみましょう。

政府最終消費支出 対GDP比 2017年

図3 政府最終消費支出 対GDP比 2017年
(OECD 統計データ より)

図3は政府最終消費支出対GDP比です。
GDPに占める割合は少し印象が異なりますね。

日本は19.6%で15番目の水準です。
ドル換算の1人あたりが20番目だったのに比べて、かなり上位に上がりました。

GDP自体が停滞しているので、必然的にGDPに占める割合が高いのかもしれませんね。
逆にアメリカは、1人あたりの数値では日本より上位でしたが、対GDPのシェアでは下から4番目の水準です。

5. 対GDP比の政府最終消費支出の推移

最後に、対GDP比の推移です。

政府最終消費支出 対GDP比

図4 政府最終消費支出 対GDP比
(OECD 統計データ より)

図5が、政府最終消費支出 対GDP比推移グラフです。

全体的に横ばいの印象ですが、増加傾向なのが日本と韓国ですね。
日本は1970年頃にはかなり低い割合でしたが、近年では他の主要先進国と同等のレベルです。

日本はGDP自体が停滞していて、政府最終消費支出を増やしているので、対GDP比ではこのようなグラフになるのだと思います。
アメリカはやや減少傾向、フランスとイタリアがやや増加傾向ですね。

6. 日本の政府最終消費支出の特徴

今回は政府最終消費支出について、国際比較をしてみました。

日本の政府消費は、増加傾向ではありますが、金額としてはまだ先進国中位~下位レベルです。
ただ、GDPが停滞していますので、対GDP比ではかなり大きな割合を占めていて、他の主要国と同じくらいのレベルと言う事がわかりました。

現在、日本では政府最終消費支出が増大する一方で、総固定資本形成 公的が減少し停滞しています。
そして、現在ではどちらも他の先進国並みの水準になっているようです。

もちろん、医療費の個人負担割合など、国によって家計と政府の支出バランスが異なる項目も多く存在します。
政府の消費支出ばかりを見ていても、国民の豊かさを比較できるわけではありませんね。

このような観点から、家計がどれだけ消費をしたかに着目した、現実個別消費が各国の家計の豊かさを見る指標として注目されているようです。

皆さんはどのように考えますか?

参考:現実個別消費

(2024年1月追記)

現実個別消費 1人あたり 2021年 購買力平価換算

図5 現実個別消費 1人あたり 2021年 名目 購買力平価換算
(OECD統計データより)

図5が、人口1人あたりの現実個別消費です。

日本は28,262ドルと、OECD38か国中20位、G7最下位となります。
アメリカが圧倒的ですがその半分程度で、ドイツやフランス、イギリスなどと比べて2割ほど低い水準となります。

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