084 経済成長の共通点とは - GDP > 給与・生産性 > 物価
日本は経済停滞が続いてきましたが、他国は成長が続いていました。GDP、平均給与、生産性、物価など代表的な指標で、どのような相互関係での成長が一般的なのかを可視化してみます。
目 次
1. カナダのGDP・給与・生産性・物価
前回、前々回と、各種経済指標ごとにG7各国と日本の1997年以降の成長率の比較を行いました。
GDP、家計消費、平均給与、1人あたりGDP、労働生産性、消費者物価指数(CPI)どの指標を見ても、他の先進国は右肩上がりの成長を遂げています。
ゼロ成長で推移しているのは日本だけだという事がわかりました。
1997年はまさに日本の転換点と言えます。
今回は、先進国としての経済成長の形を可視化すべく、これらの指標を国ごとに整理し直したグラフをご紹介していきたいと思います。
日本が今後経済成長していくにあたって、参考となるような他国の傾向はあるのか探ってみたいと思います。
図1 カナダ 各種経済指標
(OECD 統計データ より)
図1は、カナダについて経済指標の推移を1つのグラフにまとめたものです。
青がGDP、赤が家計最終消費支出、緑が1人あたりGDP、オレンジが平均給与、水色が労働生産性、紫が消費者物価指数(CPI)です。
1997年を起点として、1%、2%、3%、4%の成長曲線も黒い線で描いています。
縦軸はこのカナダに合わせて固定する事で、各国の比較をしやすくしてみます。
このグラフを見れば、各国のどの指標がどういった増え方で成長しているのかが比較できると思います。
注目したいのは、グラフの傾きと順番です。
カナダの場合、GDP、家計消費が大きく、2018年で1997年の2.5倍もの水準となっています。
4%の成長曲線を超えているレベルですね。
次に大きいのが1人あたりGDP、労働生産性で、その次に平均給与です。
これらは1.7~2.0倍で約3%の成長率ですね。
消費者物価指数は最も傾きが小さく、1.4倍程度の2%成長です。
平均給与の伸びよりも労働生産性の伸びが高く、GDPや消費の伸びはもっと高い、というのはとても重要な順番だと思います。
そして、消費者物価指数が緩やかに上昇していく形です。
物価が上がれば同じお金でも買えるモノが減ってしまいますが、それ以上に平均給与も増えているので、差し引きではより多くのモノを買えるようになり豊かになっているわけですね。
2. アメリカのGDP・給与・生産性・物価
続いてアメリカの経済指標の推移を見てみましょう。
図2 アメリカ 各種経済指標
(OECD 統計データ より)
図2はアメリカについて同様にまとめたグラフです。
カナダのグラフとかなり似ていますね。
成長の度合いは、1:GDP、家計消費、2:1人あたりGDP、労働生産性、平均給与、3:物価という順番です。
GDPも消費も2倍以上に成長しています。
労働生産性や平均給与も2倍近くの水準(年率3%成長)、物価は5割以上の水準(年率2%成長)です。
アメリカはGDPの傾きよりも家計消費の傾きが大きい事が特徴的ですね。
3. イギリスのGDP・給与・生産性・物価
続いてイギリスのデータです。
図3 イギリス 各種経済指標
(OECD 統計データ より)
図3はイギリスについて同様にまとめたグラフです。
イギリスもカナダのグラフとかなり似ていますね。
やはり成長の度合いは、1:GDP、家計消費、2:1人あたりGDP、労働生産性、平均給与、3:物価という順番です。
4. フランスのGDP・給与・生産性・物価
他のG7の国はどうでしょうか。
カナダやアメリカと比べれば低成長の国となりますが、どのような形でしょうか。
成長率の高い国から順に見ていきましょう。
まずはフランスです。
図4 フランス各種経済指標
(OECD 統計データ より)
図4がフランスのグラフです。
カナダやアメリカと比べると、大分傾きが小さくなっていますね。
それでも、GDPは各国とも6割以上、平均給与は5割以上、物価も3割以上上昇していることがわかると思います。
そして成長の順番も、1:GDP、消費、2:労働生産性、平均給与、3:物価であることは概ね変わりません。
5. ドイツのGDP・給与・生産性・物価
図5 ドイツ 各種経済指標
(OECD 統計データ より)
図5がドイツのグラフです。
フランスよりも更に成長の度合いが緩やかです。
他国と異なるのは、家計最終消費支出の成長度合いがGDPとやや差がある事です。
ただし、全ての項目が右肩上がりである事は変わりません。
6. イタリアのGDP・給与・生産性・物価
続いてイタリアについて見てみましょう。
図6 イタリア 各種経済指標
(OECD 統計データ より)
図6がイタリアのグラフです。
他の主要先進国と比べると、リーマンショック以降は横ばい傾向となっています。
また、物価上昇の度合いよりも他の指標の横ばい傾向が強いため、実質ではマイナス成長になっている可能性が窺えます。
7. 日本のGDP・給与・生産性・物価
それでは、日本のグラフを見てみましょう。
図7 日本 各種経済指標
(OECD 統計データ より)
図7が日本のグラフです。
グラフの縦軸を固定していますので、このようなグラフとなっていますが、かえって他の国と比べてまったく成長していない状況がわかると思います。
完全に成長が止まっているわけですね。
いずれの指標も1%成長にすら達していないばかりか、平均給与はマイナスのままです。
少し見やすくするように、縦軸の表示範囲を変えてみます。
図8 日本 各種経済指標 拡大
(OECD 統計データ より)
図8が日本用に縦軸の表示範囲を変更したグラフです。
散々な結果ではありますが、いくつかの特徴が見えると思います。
まず、傾向として確認できるのが2011年あたりを底にして全体的に上昇傾向に転じている点です。
2020年のコロナ禍でこの後どうなるかわかりませんが、ひとまず10年近く上昇傾向が続いていて、リーマンショック前の水準を超えている指標が多いですね。
グラフの順番を見ると、上から労働生産性、消費、物価、GDP、平均給与となっています。
他の先進国とは順番が異なります。
物価はほぼゼロで推移していますが、平均所給与はマイナスのままです。
つまり、物価が変わらないのに、相対的に買えるモノが減っていて貧しくなっているわけですね。
そしてGDPも近年では上昇傾向ではありますが、ピークよりも目減りしていた時期が長かった事になります。
消費がそれほど下がっていないのは、生活するためにぎりぎりの水準で推移していると読み取れるかもしれませんね。
消費よりもGDPが下がっているという事は、消費以外のものが減っている事を意味します。
今度取り上げますが、政府支出よりも総資本形成(家、橋梁、設備など)が大きく減っている影響と思います。
労働生産性はそこまで下がっていないのも特徴的です。
他の先進国を見てもわかりますが、本来は労働生産性と平均給与は同じくらいの成長率でないとおかしいと思います。
日本の場合は、労働生産性に比べて平均給与はむしろ下がっていますね。
労働に対して、正当な対価が得られていないという事になると思います。
労働者の賃金水準が低い事が日本の課題と読み取れそうです。
8. 主要先進国の経済成長の共通点
今回は主要国の各種経済指標の成長率を比較してみました。
日本以外の各国で共通しているのは、概ね1.GDP、家計最終消費支出、2.1人あたりGDP、平均給与、労働生産性、3.物価という順番で成長率が高いという事です。
GDPと家計最終消費支出は全人口の総額で強い関係があります。
1人あたりGDP、平均給与、労働生産性は1人あたりの指標で、やはり強い関係がありますね。
そして最後に物価が成長していて、名目値でも実質値でも成長している様子がわかります。
他の先進国の例を見れば、平均給与の増加以上に消費やGDPが増大し、結果的に緩やかに物価が上がる関係があるわけですので、まずは継続的に賃金を上げていく事が経済成長に繋がるようにも見えます。
企業が労働者の労働に対して正しく価値を認め、対価である賃金と売値を継続的に上昇させていく事が必要なのかもしれませんね。
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