139 日本の家計支出は平均的? - 家計最終消費支出の国際比較
GDP支出面の最大項目である家計最終消費支出について、主要先進国との国際比較をしてみます。
目 次
1. 家計最終消費支出とは
前回は、GDP支出面の政府支出についてフォーカスしてみました。
日本は一時期多い時期もあったようですが、最近ではちょうど先進国で平均的な水準のようです。
政府の支出は、多くも無く少なくもないという事ですね。
それでは、家計の支出はどうでしょうか?
今回は家計最終消費支出についてご紹介いたします。
家計最終消費支出は、家計による消費支出の総額となります。
項目別には下記のものが含まれます。
・食料・非アルコール
・アルコール飲料・たばこ
・被服・履物
・住宅・電気・ガス・水道
・家具・家庭用機器・家事サービス
・保健・医療
・交通
・情報・通信
・娯楽・スポーツ・文化
・教育サービス
・外食・宿泊サービス
・保険・金融サービス
・個別ケア・社会保護・その他
2. 1人あたり家計最終消費支出の国際比較
まず人口1人あたりの家計最終消費支出(名目、為替レート換算値)について国際比較してみましょう。
家計最終消費支出 1人あたり 2018年
(OECD 統計データ より)
図1はGDP支出面のうち、家計最終消費支出の1人あたり、ドル換算した数値を比較したグラフです。
日本は、21,244ドルで、OECD35か国中20番目の水準ですね。
どちらかと言えば下位に属します。
フランスやイタリアと同じくらいの水準のようです。
OECDの平均値が21,033ドルですので、日本は丁度平均並みと言えそうですね。
アメリカは、41,430ドルで2番目の水準です。
スイスは別格としても、アメリカの水準の高さは目を引きます。
日本の2倍近くの家計消費がある事になります。
イギリスが26,814ドルで8番目、カナダが26,219ドルで9番目、ドイツが24,301ドルで12番目ですね。
3. 1人あたり家計最終消費支出の推移
次に1人あたり家計最終消費支出の推移を見てみましょう。
図2 家計最終消費支出 1人あたり 推移
(OECD 統計データ より)
図2が主要国の推移を表したグラフです。
ドル換算なので、アメリカ以外は為替の影響を受けてアップダウンがあります。
やはり物価水準の最も高かった1995年がピークとなっていて、この時はアメリカよりもドル換算の家計消費が多かったことになります。
その後は、横ばいになりながらも他国に抜かれているような状況です。
イギリスやドイツ、カナダ、イタリア、フランスなども2006年あたりから停滞しているように見受けられますね。
順調に伸びているのが、アメリカと韓国です。
4. 対GDP比の家計最終消費支出の国際比較
それでは、もう一つの尺度としてGDPに占める割合についても見てみましょう。
図3 家計最終消費支出 対GDP比 2017年
(OECD 統計データ より)
図3は家計最終消費支出の対GDP比を大きい順に並べたグラフです。
やはりアメリカが66.3%と非常に大きい数値である事がわかります。
イギリス(62.1%)やイタリア(59.7%)も比較的大きな数値ですね。
日本は54.0%で、35か国中16番目の数値です。
OECD35加工の平均値が52.8%なので、やはり先進国の平均並みと言えそうですね。
ドル換算では日本より大きかったフランスやドイツでは、対GDP比では日本よりも下位となります。
1人あたりGDPがこれらの国の方が大きいからと言う事が考えられます。
いずれにしろ、日本のGDPの中で家計最終消費支出が半分以上を占める事は確かなようですね。
デンマーク、スウェーデン、ノルウェーといった北欧諸国が軒並み低い事も印象的です。
これらの国は、政府支出の割合が高い国々です。
高福祉国の特徴が良く出ているように思います。
5. 対GDP比の家計最終消費支出の推移
続いて、対GDP比での家計最終消費支出の推移を見てみましょう。
図4 家計最終消費支出 推移
(OECD 統計データ より)
図4は主要国の家計最終消費支出 対GDP比について推移を示したグラフです。
に恩は1970年代は主要国の中で最も低い割合だったようですが、年々少しずつ割合が増えていき、近年では中位に位置する様子がわかりますね。
韓国は急速に水準が落ちて下位になっているのが特徴的です。
アメリカは少しずつ上昇していて、イギリスとドイツは少しずつ減少しています。
イタリア、フランス、カナダはほぼ横ばいですね。
6. 家計最終消費支出の特徴
今回は、主要先進国の家計最終消費支出についてご紹介しました。
日本では家計の消費支出が最大の項目ではありますが、他の先進国でも似たような状況という事がわかりました。
ドル換算値で見ると、近年ではアメリカの半分くらいの水準です。
日本は2000年代中頃まで、総資本形成が大きく、その分家計最終消費支出は相対的に低い割合だった事もあると思います。
しかし、その消費も金額では先進国の平均くらい、順位だと下位になります。
所得水準も同様の事が言えると思いますが、日本経済は円建てで見ても1990年代にピークとなり、その後は停滞しました。
そして、停滞しているうちに、他国に追い抜かれて、現在の先進国中位~下位に立ち位置を低下させています。
日本では男性労働者の平均給与が減少しています。
収入が減れば消費はなかなか増えないはずですね。
家計の消費が最大項目ですので、消費が増えなければ収入も増えないという悪循環に陥っているようにも見えます。
皆さんはどのように考えますか?
参考:現実個別消費
GDPの支出面は主に投資(総資本形成)と最終消費に分かれます。
最終消費は更に、家計最終消費支出、政府最終消費支出、対家計非営利団体(NPISH)の最終消費支出に分かれます。
この区分は、誰が支出するのかというお金を出す側で集計したものです。
ただし、医療費などをイメージするとわかりやすいと思いますが、支出の際に家計と政府が分け合うような消費項目も多いですね。
国によってその分担割合も異なります。
このため、家計が実際にどれだけ消費したのかという、消費に焦点を当てた方が具体的な国民生活の水準を比較できるという考えがあるそうです。
これを、現実個別消費(AIC: Actual Individual Consumption)と呼ぶそうです。
具体的には、政府最終消費支出を、個別消費支出と集合消費支出に分け、家計(含むNPISH)の最終消費支出に加えたものが現実個別消費です。
家計が実際にどれだけのモノやサービスを消費したかを測る指標となります。
図5 現実個別消費 1人あたり 購買力平価換算 2021年
(OECD統計データより)
図5が人口1人あたりの現実個別消費の比較です。
人口1人あたりの購買力平価換算値です。
GDPにはGDPベースの購買力平価、平均給与には民間最終消費支出の購買力平価が用いられますが、現実個別消費には現実個別消費専用の購買力平価が存在するようです。
この3種類の購買力平価の時系列データがOECDで公開されています。
購買力平価は、通貨コンバータであり空間的な価格デフレータと呼ばれます。
購買力平価でドル換算すると、通貨単位を換算するだけではなく、物価水準を揃えた上での数量的(=実質的)な水準を比較する事になります。
為替レートは単純にその都度の金額的な比較になりますが、購買力平価は数量的な比較なのが大きく異なるポイントですね。
この人口1人あたりの現実個別消費を、現実個別消費の購買力平価でドル換算したものが、最も重要な経済厚生を測る指標の1つとして推奨されているようです。
2021年の水準で比較すると、日本は28,262ドルでOECD38か国中20位、G7最下位となり、平均値よりやや低い水準となるようです。
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