213 借金を増やさない日本人 - 家計の負債国際比較

家計の負債についての国際比較をしてみます。日本の家計は1990年代までは大きな負債を抱えていましたが、近年では先進国中程度のようです。

1.日本の家計の負債

前回は、家計金融資産について、各国比較してみました。
日本は1990年代に極めて高い水準に達していて、その後は少しずつ増加傾向ではありますが、他国と比べると非常に緩やかな傾向であることがわかりました。
家計に蓄積される金融資産が近年は以前ほど多くないように見受けられます。

今回は、家計負債にフォーカスしてみましょう。
家計の負債の多くは、住宅ローンと考えられます。

まずは日本の状況です。

負債 家計 日本

図1 負債 家計 日本
(OECD統計データより)

図1が日本の家計の負債の推移です。
長期的に見ると、1990年代から停滞傾向が続いています。
リーマンショック後は緩やかな増加傾向が続いているようにも見えますね。

1993年から1994年の変化が大きいですが、これは1993SNAと2008SNAのデータの切り替わりによる影響と思われます。

2. 家計の負債の推移

続いて、家計の負債についてドル換算値での国際比較をしてみましょう。

家計 負債

図2 家計 負債 推移
(OECD統計データ より)

図2が家計負債の推移です。
やはりアメリカが圧倒的ですが、2007年を機に一度大きく低下しています。
2008年のリーマンショックの影響が確認できます。

日本は横ばいが続いています。
一方イギリスをはじめ他国は増加傾向ですので、日本との差も縮まっているような状況ですね。

3. 家計の1人あたり負債の推移

続いて各国の人口1人あたりの水準についても見ていきましょう。

負債 1人あたり 家計

図3 家計 負債 1人あたり
(OECD統計データ より)

図3が人口1人あたり家計負債です。

日本はやはり1990年代にアメリカを抜き高い水準でしたが、停滞が続くうちに、アメリカ、イギリス、カナダなどに抜かれています。

近年ではフランスや韓国を下回る水準のようです。

日本では家を建てる人が減っていますので、その影響も大きく関係していそうですね。
参考記事: 家を建てなくなった日本人?

他の主要先進国も、ドル建てで見るとリーマンショック以降横ばいに見えます。

4. 家計の1人あたり負債の国際比較:1997年

もう少し明確に、数値での比較をしてみましょう。
まずは日本経済のピークだった1997年です。

家計 負債 1人あたり 1997年

図4 家計 負債 1人あたり 1997年
(OECD統計データ より)

図4が1997年のグラフです。
日本は1人あたり2.2万ドルの負債です。

OECDの平均値の2倍以上の高水準でした。

5. 家計の1人あたり負債の国際比較:2019年

続いて2019年の国際比較です。

家計 負債 1人あたり 2019年

図4 家計 負債 1人あたり 2019年
(OECD統計データ より)

図4が2019年のグラフです。

日本は2.8万ドル程度で、1997年より若干増えてはいますが、OECDの平均値(2.9万ドル)を下回る水準ですね。

アメリカやカナダ、イギリスなどには大きく差を付けられています。

前回前々回で見てきたように、日本の家計は金融資産や純金融資産で見れば、現在もOECD平均値を上回り、今も比較的お金持ちの国です。

金融資産も負債も増加してはいますが、金融資産の増え方に対して、負債の増え方がかなり緩やかである事が考えられそうです。

6. 家計の負債の増加度合

続いて、自国通貨建てでの家計の負債の増加度合についても確認してみましょう。

家計 負債

図6 家計 負債
(OECD統計データ より)

図6が家計負債について、1995年を基準(1.0)とした場合の倍率です。

日本はほぼ横ばいで、近年やや上昇傾向がみられますが、1.2倍程度の低成長です。
ドイツも低成長ですが、1.7倍程度ですね。

アメリカ、イギリス、フランス、イタリアはリーマンショックの影響なのか、途中でやや停滞傾向となりますが、1995年に対して3.4~3.6倍程度に達しています。
カナダはリーマンショックの影響がみられず、右肩上がりで増加し続け5倍程度にまで成長しています。

7. 家計の負債の特徴

今回は、家計の負債についてご紹介しました。

日本は1990年代に家計の金融資産も負債も高水準に達しています。
その後、金融資産は緩やかながらも増加を続け、負債は横ばいを続けていたことになります。

お金は増えても、負債を増やしていないというのは大変特徴的な傾向ではないかと思います。

家計の負債は主に住宅ローンですので、適齢期の世帯数が減り家を建てる人が減っていることが大きな要因と考えられますね。
実は2人以上の勤労者世帯では、世帯主の収入が減る一方で、共働きが増えることで世帯収入は増えています。
そして特に40歳未満の若い世代での持家率は高まっているのですが、世帯数そのものが減少している状況ですね。
非婚化・晩婚化も進んでいます。
 参考記事: 収入増でも支出減の家計
 参考記事: 持家増で純貯蓄の減る家計

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