154 お金ばかり増える日本人 - 家計の資産・負債・正味資産
日本の家計は純金融資産が増え続けていますが、非金融資産まで含めた正味資産について確認してみます。
1. 家計の資産・負債・正味資産
前回は、民間と公的という部門別に国民の正味資産=国富についてのデータを見てみました。
特に民間部門においては、不動産バブルの裏で生産資産への投資が減り、正味資産が増えていない事がわかりました。
民間での投資が減り、国富が停滞している関係が良く分かったのではないでしょうか。
今回はもう少し細かく、民間部門の正味資産について個別に眺めてみたいと思います。
内閣府の国民経済計算において民間部門は、家計、民間企業、民間金融機関に分かれます。
今回は家計についてフォーカスしてみます。
図1 家計 資産・負債・正味資産
(国民経済計算より)
図1が家計の資産・負債・正味資産のグラフです。
金融資産と負債の差額が純金融資産で、破線で表現しています。
1993年までは1993SNA、1994年からは2008SNAという統計データを使っています。
生産資産(水色)は、生産活動によって生み出された資産の事です。
家計の場合はほとんどが住宅となります。
それ以外には、個人事業主としての機械・設備など生産資産も含まれるものと思います。
非生産資産(緑)は、生産活動によらない資産で、多くは土地ですね。
日本の土地の価値は、1980年代のバブル期に急激に高まり、その後目減りしていきます。
日本の家計の資産は、1990年のバブル崩壊以降ほぼ一定で停滞しています。
純金融資産(破線)は右肩上がりで増加しています。
生産資産が停滞し、負債も停滞しているようです。
資産と負債の差引である正味資産(黒線)は、非生産資産の減少と純金融資産の増加が相殺して停滞している状況が続いています。
2. 家計の項目別資産
積上げグラフだと詳細の変化が見えにくいので、それぞれの項目ごとのグラフも見てみましょう。
図2 家計 資産・負債・正味資産 詳細
(国民経済計算より)
図2が家計の資産と純金融資産、正味資産の項目ごとの推移グラフです。
金融資産と負債は、差し引きの純金融資産として表現しています。
OECDではFinancial net worth、国内統計では金融資産・負債差額とも呼ばれます。
やはり目を引くのはバブル期の非生産資産(緑)の高騰ですね。
1985年から1990年にかけて、600兆円程の資産が1500兆円程度まで急騰しています。
5年間で2.5倍ほどに増えています。
バブル崩壊後、非生産資産は徐々に減少し、1度2005年頃を底にして上昇基調に転じ、リーマンショックで減少傾向になった後、2013年頃を底にして再度上昇傾向に転じています。
不動産バブルの影響は2005年頃にほぼ解消したと考えられるかもしれません。
生産資産(水色)は、1990年代から停滞しています。
1993年から1994年で急激に増えているように見えますが、統計データの基準変更による影響と思われます。
それまでカウントしていなかった項目が追加されたのかもしれません。
生産資産が停滞する一方で、非生産資産の減少に歯止めがかかり、純金融資産が増えているので、2011年あたりから正味資産は増加傾向になっているようです。
3. 家計の資産・負債・正味資産の特徴
バブル期で高騰した時期に土地を購入した人がいれば、資産価値がその分目減りしたことになります。
非生産資産が減少しているのと対照的に純金融資産は、増加傾向が続いています。
最大項目は現金・預金ですが、年金受給権などの「今後受け取る予定のお金」や株式なども含まれています。
家計の純金融資産は、現在先進国でも高い水準ですが、その増加ペースは緩やかです。
図3 家計純金融資産
(OECD 統計データ より)
図2を見ると順調に増加しているように見える家計の純金融資産も、国際比較してみると増加率は緩やかであるという事です。
その結果、近年では様々な国に抜かれていて、「お金持ちの国」の座からも滑り落ちようとしている状況です。
参考記事: 意外と多い日本人の金融資産
家計の資産や負債で最も重要な変化が、生産資産が増加していないと言う事ではないでしょうか。
家計の生産資産のほとんどは住宅になります。
日本では新しい住宅があまり建てられなくなりました。
もちろん、少子高齢化で住宅を建てる現役世帯数が減少している事も大きく影響していると思いますが、労働者の所得が減り、住宅を買えない人が増えている事も大きいと思います。
住宅購入の大きな契機となる結婚や出産をする人も減っています。
参考記事: 家を建てなくなった日本人?
そして、金融資産の多くが高齢者に偏在しています。
年金受給権などはそもそも高齢者の増大によって増えている面もあり、貯蓄の7割以上は60歳以上の高齢者が所有している状況です。
ただし、その高齢層でもゼロ貯蓄世代が倍増していて、高齢者全員が豊かになっているわけではありません。
勤労世帯では中所得層が困窮し、ゼロ貯蓄世帯が増えて貧困化が進んでいるのも事実ですね。
参考記事: 低所得化でも豊かな家計の実態
一見停滞しているように見える家計資産ですが、バブルの影響を除けば、純金融資産が増えている分だけ増加していると見てよさそうです。
ただし、その中身を良く見てみると、必ずしもすべての国民が豊かになっているとは言えない状況ですね。
そもそも、生産資産が停滞している事からもわかる通り、現役世代も含めて住宅など固定資産への投資が減っています。
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・本ブログに用いられる統計データは政府やOECDなどの公的機関の公表しているデータを基にしています。
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