022 非正規社員という働き方 - 待遇別の給与分布
非正規社員や正規社員といった待遇別に、所得分布を確認してみます。
1. 待遇別の労働者シェア
前回は改めてサラリーマンの貧困化についてご紹介しました。
今回は、正規社員、非正規社員の違いについて見てみたいと思います。
出典は民間給与実態統計調査です。
この統計では非正規社員は、パートタイマー、アルバイト、派遣社員、契約社員、嘱託等と定義されます。
働き方改革が叫ばれる中で、非正規を自ら選んでいる人、やむを得ず非正規の働き方となっている人など、色々事情も異なっていると思います。
民間給与実態統計調査で正規、非正規の区分で統計がとられ始めたのが2013年分からのようです。
直近の2017年のデータを見てみましょう。
図1 給与所得者の属性別シェア
(民間給与実態統計調査 より)
ここでは、個人と法人企業のみのデータを示しています。
同じようなデータを扱っていても、統計によって数値は変化しますので、今回はあくまでも民間給与実態統計調査による結果を示している点に注意して下さい。
(個人は正社員の区分に含めてあります、特殊法人等については除外してあります)
まず、2013年のデータからの変化を見ると、この4年間でも給与所得者は増加しています。
その中でシェアが増えているのは非正規社員の男性(6.9%→7.7%)と、非正規社員の女性(15.6%→16.1%)です。
人数もシェアも減っているのが役員の男性、人数は増えているがシェアが減っているのが役員の女性と正規社員の男性です。
非正規社員の割合は2013年の22.5%から、2017年には23.8%に増加しています。
2. 男性労働者の待遇別所得分布
図2 待遇別 給与所得者数 男性
(民間給与実態統計調査 より)
図2は男性労働者の、役員、正規社員、非正規社員の待遇ごとに、所得階級別の給与所得者数の分布です。
男性全体に占める非正規社員の割合は12%程度です。
正規社員の平均値は544.0万円で、最頻値は400超~500以下となっています。
非正規社員の平均値は230.2万円で、最頻値は100超~200以下です。
もちろ非正規社員の中にはパートタイム労働者を多く含み、労働時間にも差があるわけですが、年収で見れば2倍以上の開きがある事になります。
3. 女性労働者の待遇別所得分布
続いて女性労働者の所得分布を見てみましょう。
図3 待遇別 給与所得者数 女性
(民間給与実態統計調査 より)
図3が女性労働者の待遇別、所得階級別の給与所得者数の分布です。
男性と女性で大きく傾向が異なりのがわかりますね。
女性は女性全体に占める非正規社員の割合は45%程度と約半分です。
女性は正規社員の平均所得が368.6万円に対して、非正規社員の平均所得は148.2万円とやはり半分以下です。
正規社員も非正規社員も、平均値が男性と比べてかなり低い事がわかります。
また、最頻値を見てみても、正規社員で300超~400以下、非正規社員で100超~200以下です。
非正規社員の場合、100超~200以下の次に多いのが100以下となっていて、男性と比べてもより低所得側に寄っている事になります。
正規社員、非正規社員で所得に大きな差があり、なおかつ男女差がかなり大きいという事もわかりますね。
4. パートタイム労働者の時給格差
もちろん非正規社員の中にはフルタイムではなく、パートタイムの雇用形態も含まれますので、単純な年収格差として捉える事は出来ません。
パートタイム労働者の時給がどれくらいフルタイム労働者と異なるのかも見てみましょう。
図4 日本 一般労働者・パートタイム労働者 平均時給
(毎月勤労統計調査より)
図4は日本の一般労働者とパートタイム労働者の時給を計算した結果です。
一般労働者は1998年から横ばいが続いていて、パートタイム労働者は少しずつ上昇傾向です。
一般労働者は時給2,600円くらい、パートタイム労働者は2022年で時給1,300円くらいです。
両者の格差とも言える時給比率を見ると、まだ50%を下回る状況ですね。
パートタイム労働なので年間の労働時間が一般労働者よりも短く、年収差があるのは当然ではありますが、時給そのものが大きく異なるという特徴があるようです。
以前ドラマで”スーパー派遣社員”が時給3,000円という「高時給」が明らかになり、一般社員が驚くという一幕が話題となりました。
そもそも一般労働者の時給自体が3,000円近くで、派遣社員を雇うほどの企業であれば恐らくもっと一般社員の給与水準は高いはずです。
その社員よりも優秀であれば3,000円の時給は全く高くないと思うのですが、とても不思議なシーンだと感じました。
図5 フルタイム労働者に対するパートタイム労働者の時給比率 2003年
(OECD Taxing Wages 2005より)
図5はフルタイム労働者に対するパートタイム労働者の時給比率を比較したものです。
日本は48%と極端に低いですが、他の主要先進国は60%を超えます。
スイスやイタリア、フィンランド、オランダでは90%以上です。
特に、スイスやオランダはパートタイム労働者が多い事でも知られていますが、時給で見るとフルタイム労働者と相応の水準のようですね。
日本はパートタイム労働者の仕事の価値が特に低いという特徴があり、しかもその割合が増加傾向にあるようです。
5. 日本の非正規労働の特徴
今回は、日本の労働者について待遇別の労働者数シェアや所得分布をご紹介しました。
非正規労働者は、正規労働者と比べて給与水準がかなり低いという特徴があります。
もちろん、パートタイム労働者を多く含む非正規労働者は、そもそも年間で働く労働時間が短くなる傾向となるので当然ではあります。
一方で、時給水準で見ても、パートタイム労働者と一般労働者の差が大きいという特徴もあります。
同一労働同一賃金が叫ばれる中で、待遇により時給が大きく異なるというのも、日本の労働環境の課題と言えそうですね。
企業による非正規雇用の正規化の取組もあるようですが、まだ一定層は本人が望まないまま非正規の働き方をせざるを得ない不本意非正規が存在すると言われています。
非正規雇用の増加の中には高齢労働者が非正規で働く分も含まれますので、その分も平均値の引き下げに大きく影響しているかもしれません。
ただし、男性労働者は各世代で低所得化しているのが特徴です。
非正規雇用や高齢労働者の増加以外にも、何か要因があるのでしょうか?
皆さんはどのように考えますか?
※ 非正規雇用については、下記の参考記事も是非ご参照ください。
日本の非正規雇用についての記事
参考記事: 非正規労働ばかり増える日本
参考記事: 男性でも進む非正規化
参考記事: 非正規ばかり増える女性労働者
参考記事: 豊かになれない日本の労働者
パートタイム労働に関する記事
参考記事: 日本はパートタイムが多い?
参考記事: 男性のパートタイム雇用率
参考記事: 女性のパートタイム雇用率
参考記事: パートタイムばかり増える日本
参考:非正規労働者の推移
図6 有業者数 推移 男女合計
(就業構造基本調査より)
図6は従業上の地位・雇用形態別に見た日本の有業者数の推移です。
ピンクがパート・アルバイト、水色が派遣社員・契約社員・嘱託の労働者数を示します。
1980年代からこれら非正規労働者が増加している事が良くわかりますね。
一方で、正規職員・従業員(青)は1997年の3,800万人をピークにして、2017年には3,500万人と目減りしています。
家族従業者(赤)が継続的に減っていて、一部が非正規労働に切り替わったような変化もありそうですね。
自営業主(緑)も減少が見られ、1980年頃からすると400万人ほど減少しているようです。
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