011 お金以外の豊かさとは!? 労働時間編
OECDのWell-beingのうち労働時間の国際比較により、日本の立ち位置を確認してみます。
1. 平均労働時間の国際比較
前回は、平均寿命、生活満足度という指標について、OECD各国の傾向をバブルチャートでご紹介しました。
今回は、所得(お金)以外に豊かさを図る指標のうち、労働環境に関する指標をいくつか取り上げてみたいと思います。
国際比較をすることによって、日本の立ち位置も良くわかると思います。
もちろん人によると思いますが、収入が多くても、仕事に追われてばかりでは、あまり豊かな生活とは言えないのではないでしょうか。
今回は仕事に関する時間の指標について、バブルチャートを作成しましたので、ご紹介いたします。
図1 平均給与-平均労働時間
(OECD統計データ より)
まず図1ですが、労働者全体の平均給与に対する、年間の平均労働時間のバブルチャートになります。
丸の大きさはその国の人口の大きさを表します。
緩い負の相関があるようにも見えます。
平均給与が高いほど、平均労働時間が短い傾向にある事を示していると思います。
やや傾向から外れているのが、韓国、オーストリア、アメリカ、ドイツのあたりでしょうか。
特にドイツは、ダントツで平均労働時間が短い(1,360時間)ですね。
韓国は2,000時間を超えていますので、ドイツと比べて1.5倍程度の時間働いている事になります。
アメリカは給与水準の割りに労働時間が1739時間と長めですね。
日本はアメリカとほぼ同水準の1,709時間という結果でした。
全体としては、平均よりもやや長い数値になりますが、長すぎも短すぎもしない中程度の水準と言えるのではないでしょうか。
日本は長時間労働のイメージが強いかもしれませんが、パートタイム労働者も含めた平均労働時間で見ると平均並みという事になりそうです。
2. 長時間労働率の国際比較
続いて、長時間労働をしている人の割合についても可視化してみましょう。
図2 平均給与-長時間労働率
(OECD統計データ より)
図2には長時間労働率(原文ではEmployees working very long hours)を示しました。
この指標の定義は、1週間当たり50時間の労働時間を超える労働者の割合[%]となります。
図1の平均労働時間のグラフと比較いただいてかなり象徴的なポイントがいくつかあると思います。
1. メキシコ、トルコ、日本、韓国がかなり高い水準であること
2. 東欧諸国が軒並み低水準である事
3. 平均労働時間では日本と同水準のイタリア、スペインがかなり低水準であること
この数値が高いという事は、長時間労働を余儀なくされている労働者層の割合が多いという事ですね。
図1と図2で、日本とスペインやイタリアを比較すると、平均労働時間は同水準なのに、長時間労働率には大きな乖離が見られます。
平均労働時間はあくまでも全体の平均値です。
長時間労働率が高いという事は、一定の労働者層が平均を大きく超える長時間労働に従事する一方で、他方に平均値を大きく下げるだけの短時間の労働者層が存在する事を示します。
日本の場合は、非正規労働者やパートタイマーが多いと言われていますね。
逆にスペインやイタリアは、多くの労働者が平均並みの労働時間働いていると考えられると思います。
平均値だけでは詳細な状況を説明しきれないという良い事例ともいえるのではないでしょうか。
3. 余暇時間の国際比較
次に、余暇時間について見てみましょう。
図3 平均給与-余暇時間
(OECD統計データ より)
続いて、図3に余暇時間(原文では、Time devoted to leisure and personal care)のバブルチャートを示します。
メキシコやトルコの存在もあり、平均給与に対してやや正の相関があるようにも見えます。
さすがにフランス、ドイツ、スペインや北欧諸国は高い水準ですね。
日本やイタリア、イギリスは中程度の水準です。
アメリカがやや低い水準なのが少し意外ですが、平均労働時間の長さからしても妥当な位置かもしれません。
4. 労働時間の特徴
今回は労働環境に関する指標について取り上げてみました。
日本は、平均労働時間としては中程度ですが、長時間労働を余儀なくされている労働者層がOECD内でも高水準の割合で存在するようです。
厚生労働省の毎月勤労統計調査によれば、1990年代以降は一般労働者の平均労働時間はそれほど変化していません。
一方で、パートタイム労働者の増加が大きく、労働者全体としての平均労働時間が短くなっているという側面もあるようです。
平均労働時間の減少と、長時間労働者の多さはこのように分けて考えれば整合性がありそうです。
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