120 長時間労働は過去の話? - 既に日本は労働時間の短い国

1. 平均労働時間を見てみよう!

前回は、経済統計における付加価値について改めて考えてみました。
付加価値とは、「事業(仕事)を通じて付け加えられた金額的価値」=私達労働者の仕事の価値そのものですね。
付加価値の合計がGDPですし、ある期間あたりの付加価値が労働生産性となります。

これから労働生産性についても、取り上げていきたいのですが、その前に今回は労働時間について確認していきたいと思います。
労働生産性を考えるうえで、労働時間が重要な要素となるからです。

日本人は、働きすぎと言われることが多いですね。
私も、子供のころから日本人の長時間労働が社会問題化している、という話を聞いて育ちました。

「24時間戦えますか?」のCMも何となく覚えています。
まずは先進国で日本人の労働時間がどの様な水準なのか見てみましょう。

平均労働時間 2019年

図1 平均労働時間 年間 2019年
(OECD統計データ より)

図1は先進国と言われるOECD各国の、労働者の年間平均労働時間です。

平均労働時間の長い国から順に並べています。
日本は1,644時間と、36か国中21番目の水準です。

なんと、現在は実は日本人の平均労働時間は、先進国の中でも短い方のようです。
ちなみに、OECDの平均は1,667時間、G7の平均は1,612時間です。

日本はイタリアやカナダ等よりも労働時間が短いようですね。
主要国では、韓国が1,967時間と非常に長い労働時間ですね、アメリカも比較的長く1,779時間、イタリアで1,718時間です。

やはりドイツや北欧諸国は労働時間が短いですね。
ドイツで1,386時間、デンマークでは1,380時間と日本人の8割くらいの時間しか働いていません。

「日本人は働きすぎ」というイメージからすると、意外な結果ではないでしょうか。

もちろん、パートタイムなども含めた全労働者の平均労働時間になりますので、パートタイム労働者の割合の大きい日本では数値が小さくなりがちなのかもしれません。
さらに、日本企業の特徴である「サービス残業」は、当然ですがこの統計結果には入らないはずですね。

2. 日本人は長時間働かなくなった?

日本人はブラック労働と言われるくらい、多くの時間働いているイメージでしたが、少なくとも最近はそれほど長い時間働いていないようです。
昔はどうだったのでしょうか?

時系列の推移についても見てみましょう。

平均労働時間 推移

図2 平均労働時間 推移
(OECD 統計データ より)

図2がOECD各国の平均労働時間の推移です。
青が日本、赤がアメリカ、水色がイギリス、緑がドイツ、紫がフランス、ピンクがカナダ、オレンジがイタリア、茶色が韓国です。

日本は1980年代まではやはり世界の中でも平均労働時間の長い国だったようですね。
例えば1980年では、アメリカが1,816時間に対して、日本は2,121時間と2割近く多く働いていたようです。

それが、2000年頃に逆転して、今ではアメリカの方が長く働いているようです。
グラフから見てわかる通り、日本人の労働者は1990年頃を境にして急激に労働時間が短くなり、その後も減少し続けています。

その間に、アメリカやイタリア、カナダよりも労働時間が短くなっているわけですね。
ドイツやイギリス、北欧諸国は昔から労働時間が短かったようです。

3. 平均労働時間の特徴

日本はバブル崩壊を境に、急激に労働時間が短くなったという事が言えそうです。
日本は労働生産性(時間あたりの付加価値)が低い特徴がありますが、以前は長時間労働で何とかこなしていた側面があったのかもしれませんね。
平均労働時間が短くなる事で、年間の稼ぎがその分伸びなくなっているという事も言えそうです。

このデータはあくまでも労働者の平均労働時間ですので、非正規労働者なども含まれている可能性があります。
つまり労働者の総労働時間を、全ての就労者数で割った数値です。

一方でブラック労働と言われているように、一部の労働者には過大な長時間労働という負担が強いられている側面もあると思います。
日本は経済が停滞する中で、需要(仕事)が少ないため、結果的に働く時間も短くなっているという事も言えるかもしれません。

日本の平均労働時間は、OECDの平均値と同じくらいでアメリカやイタリアを下回りますが、ドイツやフランス、イギリスなどはさらに労働時間が短いというのも特徴的です。
しかし、これらの国々は、年間に稼ぐ1人あたりGDPは日本より多いわけです。

仕事の価値が低いという日本経済の特徴は、この平均労働時間にもよく表れているのではないでしょうか。

皆さんはどのように考えますか?

本ブログは、にほんブログ村と人気ブログランキングにエントリーしております。
ランキング上位になりますと、さらなるアクセスアップに繋がります。

本ブログの趣旨にご賛同いただき、応援いただける場合は是非下記バナーをクリックいただき、ランキング向上にご支援いただけると大変うれしいです。

にほんブログ村 ランキング

人気ブログランキング

小川製作所ブログ
ブログ記事一覧へ

<ブログご利用の注意点>
・本ブログに用いられる統計データは政府やOECDなどの公的機関の公表しているデータを基にしています。
・統計データの整理には細心の注意を払っていますが、不整合やデータ違いなどの不具合が含まれる可能性がございます。
・万一データ不具合等お気づきになられましたら、「お問合せフォーム」などでご指摘賜れれば幸いです。
・データに疑問点などがございましたら、元データ等をご確認いただきますようお願いいたします。
・引用いただく場合には、統計データの正誤やグラフに関するトラブル等には責任を負えませんので予めご承知おきください。

120 長時間労働は過去の話? - 既に日本は労働時間の短い国” に対して2件のコメントがあります。

コメントは受け付けていません。