127 物価水準とGDPの関係 - 強い経済を維持できなかった日本?
1. 1人あたりGDPで見る豊かさの変化
前回は、物価水準についてフォーカスしてみました。
日本は1995年にアメリカの約2倍という極めて高い物価水準に達し、その後徐々に減少して現在は先進国平均並みにまで落ち着いています。
この間、日本はデフレと共に経済成長が停滞して、他の国から置いていかれている状況ですね。
今回は、経済の重要指標であるGDPと物価水準との関係について注目していきたいと思います。
まずは、国の豊かさを示す1人あたりGDPについて見ていきましょう。

図1 1人あたりGDP 1997年
(OECD統計データ より)
図1が1997年の1人あたりGDPの国際比較グラフです。
1997年は日本経済がピークだった年です。
それぞれの年のドルで表した名目値になります。
この年、日本はOECD 37か国中で4番目に高い水準の35,035$です。
アメリカは31,424$で6位、ドイツは27,137$で9位、韓国は12,398$で24位といった状況ですね。
OECDの平均は21,681$です。
この時、日本はOECD平均値の1.6倍程の水準に達していたわけですね。

図2 1人あたりGDP 2019年
(OECD統計データ より)
図2が2019年のグラフです。
日本は名目値としては成長はしていますが、それ以上に他国が成長している状況です。
日本は、40,287$で19位と中位にまで後退します。
アメリカは、65,143$で6位を維持し、ドイツは46,467$で13位、韓国は31,842$で22位です。
OECDの平均は39,560$で、日本の数値とほとんど変わらない状況になってきています。
日本はOECDの中で、豊かな国から普通の国となっているというわけですね。
2. 物価水準と1人あたりGDPの関係
それでは、物価水準と1人あたりGDPとの関係について見ていきたいと思います。

図3 物価水準と1人あたりGDPの相関
(OECD統計データ より)
OECDの平均値に対して、それぞれの国の物価水準と1人あたりGDPがどの様に変化したのかを相関図にまとめてみました。
絵具を塗りたくったようなグラフとなって煩わしいと思いますが、どうぞご容赦ください。
1997年から2019年までの、各国の物価水準と1人あたりGDPの関係を、OECDの平均値を100とした時の数値の変化として表現しています。
37か国全ての動きをまとめていますが、明らかに強い関係が見て取れますね。
つまり、物価水準とその国の豊かさ(1人あたりGDP)とは、強い相関があるという事が言えそうです。
物価水準が高ければ、1人あたりGDPも高く、物価水準が低ければ、1人あたりGDPも低いという相関関係ですね。
日本は2000年に物価水準のピークがあり、それなりに高い水準の豊かさに達していましたが、徐々に左下に移動している状況がわかると思います。
物価水準が下落し、1人あたりGDPもOECDの平均値に近づいています。
韓国は逆に、物価水準が上がりながら、1人あたりGDPが増加しています。
ルクセンブルクがかなり外れたところにいますが、物価水準の割にはかなり高いGDPの国と言う事になりますね。
スイスは物価水準もGDPも高い国ですし、アメリカも右上の領域をキープしています。
同じ工業国のドイツは、比較的原点付近でまとまっている感じですね。
平均的な物価水準の割には、1人あたりGDPが高めの領域で推移しています。
もちろん、ドル換算した1人あたりGDPも、物価水準も、当該国の通貨とドルとの為替レートに影響を受けますので、留意が必要です。
3. 物価水準の高さは何を意味する?
1人あたりGDPと平均給与は強い相関がありますので、当然ながら労働者の所得水準も国際的に見れば下がっているという状況ですね。
現在は、物価水準も1人あたりGDPも先進国の平均レベルにまで落ちている状況です。
ここからわかるのは、かつての経済強国としての日本は既に影を潜め、先進国として普通レベルの国(ただし落ち目)の国となっているのが現状と言えるのかもしれません。
今後成長軌道に乗ることができるのか、このまま歯止めがきかずに国際的に立ち位置を低下させていくのか、まさに今が転換期と言えるのかもしれませんね。
もう少し細かく見ると、図3で実は物価水準はまだ110程度で、平均値から見れば割高です。
放っておけば、更に衰退(グラフの左下への移動)が続く可能性も示唆されているように思います。
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