167 貿易でも存在感が薄れる日本 - 輸出・輸入の推移
1. 対GDP比では先進国で下から二番目の日本
前回は、国民の資産ともいえる生産資産について主要国の推移をグラフ化してみました。
住居、機械設備、一般建造物について、各国とも右肩上がりに増大を続けています。
一方で日本は、一般建造物は緩いながらも増大していますが、住居や機械設備は停滞が続いている事がわかりました。
フローであるGDP(のうち総固定資本形成)同様に、ストック面での生産資産も停滞しているという状況です。
日本国内が停滞しているのであれば、企業の合理的判断として海外に活路を求めるのは当然なのかもしれません。
日本の場合はこのような動機で、企業のグローバル化が進んできた側面もあるように思います。
経済統計でグローバル化が表現されるのは、貿易(輸出、輸入)の増大と多国籍企業の活発化で観測できると思います。
今回は輸出入について取り上げてみたいと思います。
以前、本ブログでも日本はGDPに占める輸出の割合が低いという事を取り上げました。
参考記事: 「支出面」で見る日本の経
参考記事: 日本は本当に「輸出大国」か?
まずは、この輸出対GDP比について、直近の状況を確認してみましょう。

図1 輸出対GDP比 2018年
(OECD 統計データ より)
図1が2018年の輸出対GDP比(輸出依存度)を割合の大きい国順に並べたグラフです。
上位にはルクセンブルクやアイルランドなどの人口が少なく経済規模の小さい国や、ハンガリー、リトアニアなど急激な経済発展中の国が並びます。
その中で、ドイツが47%(36か国中16位)、韓国が44%(同20位)と比較的高い水準を誇ります。
主要国では次いで、カナダ、フランス、イタリア、イギリス、そして日本、アメリカの順です。
日本は輸出額の対GDP比が18%と先進国では下から2番目の水準で、非常に少ないという事がわかると思います。
少なくとも、他の国々と比べれば、日本は貿易立国というよりは、むじろ内需主体の国と言っても良さそうです。
当然、天然資源などに乏しい国なので貿易は欠かせないわけですが、バランスとしては内需型経済という意味ですね。
2. 総額で見てみよう!
図1は輸出を対GDP比で表した指標です。
各国の水準を比較するために、経済規模(GDP)に対する輸出額の割合を比べたにすぎませんね。
それでは、金額として日本の輸出は大きいのかどうか、という観点でも見てみましょう。

図2 輸出 ドル換算 推移
(OECD 統計データ より)
図2は、OECD各国の輸出額をドル換算値にしたグラフです。
OECD非加盟国ですが、中国のデータもあったので一緒に掲載しています。
アメリカ、中国以外の各国に共通するのが、リーマンショックまでは右肩上がりに増大していますが、ショック後は停滞気味である点ですね。
総額で見ると、圧倒的にアメリカが多きかったのですが、近年中国に抜かれています。
次いでドイツの規模が大きく、その次にだいぶ離されて日本、フランス、イギリス、韓国と続きます。
日本は1990年代まではドイツと競い合って、2~3位の水準ですが、1990年代後半からドイツに大きく引き離されています。
輸出額では、アメリカ、中国、ドイツが非常に存在感が大きい事がわかりますね。
日本も金額としては大きい方ですが、これら3国と比較すると存在感が小さいようです。
3. 輸入額も見てみよう!
海外との貿易は、輸出だけではなく、輸入もありますね。
輸入額についても、同じように推移を見てみましょう。

図3 輸入 ドル換算 推移
(OECD 統計データ より)
図3が輸入額の推移です。
概ね各国とも輸入と輸出は同じくらいの水準で推移しています。
ただ、輸入で特徴的なのは、アメリカが非常に大きな水準であることですね。
中国との関係で比べても、アメリカは輸出よりも輸入の方が極めて大きい事がわかります。
日本は輸入ではイギリスに僅かに抜かれて5番目の水準ですね。
やはり、輸入額でもアメリカ、中国、ドイツが圧倒的に存在感が大きい事は変わりません。
4. 純輸出はほぼゼロ
それでは、輸出と輸入のバランスをその差し引きである純輸出という観点から見てみましょう。
純輸出はそのままGDP支出面に加えられる数値です。

図4 純輸出 ドル換算 推移
(OECD 統計データ より)
図4が純輸出の推移グラフです。
純輸出は輸出-輸入ですので、プラスになると輸出額の方が輸入額よりも大きい事を示します。
いわゆる貿易収支と言われるものですね。
日本、アメリカ、ドイツ、中国で非常に特徴的な推移になっています。
まず日本ですが、2000年くらいまでは基本的にプラスで、そのプラス額も他国と比べると非常に大きい事がわかります。
日本は輸出で稼いでいた、と言われるようなイメージはこのあたりの事を示しているのかもしれませんね。
ただ、その後ドイツの純輸出額に抜かれ存在感が薄れ、2010年代中盤には大きくマイナスという時期もありました。
一方で、アメリカは常に純輸出マイナスが続いていますね。
特に2000年代半ばからは非常に大きな水準でマイナス額が継続しています。
アメリカは輸出も多いけれど、それ以上に輸入の多い国という事が言えそうですね。
反対に、ドイツは2000年ころから、常に純輸出が大きくプラスの状態が続いています。
純輸出はそのままGDP支出面に加算される項目ですね。
ドイツは輸出によって大きくGDPを稼いでいる国とも言えそうです。
とはいえ、輸出と輸入はほとんどが相殺しますので、ドイツの純輸出額も240G$でGDPの6%程度です。
5. 日本は内需主体の国?
今回は輸出や輸入についてフォーカスしてみました。
日本は輸出で稼いでいるというイメージがあると思いますが、同じ工業立国であるドイツとは大きく引き離されていて、しかも純輸出で見ればほぼゼロとなる程度であるという事がわかりました。
輸出額では日本はGDPのせいぜい18%程度、純輸出でみるとほぼゼロとなります。
日本は外需よりも内需主体の国であると言えそうです。
日本は、貿易という観点で見ても、存在感が薄れている事がわかりますね。
また、とても重要な観点は、この輸出入やGDPには、日本企業が海外現地法人により行うビジネスが含まれていない事ですね。
海外現地法人は、日本企業の関連会社ではありますが、日本企業ではありません。
その企業で行われた生産活動は、当然現地国のGDPになりますね。
「日本は海外で稼いでいる」というのは既にそのような日本企業の多国籍化によるところが大きいのだと思います。
同じ工業国であるドイツは、海外現地法人による生産活動も増やしていますが、国内での生産活動や輸出も増やしています。
輸出入と多国籍企業化の2つのグローバル化について、日本は既に輸出入は既に存在感が低下していて、反対に多国籍企業化が大きく進んでいます。
国内経済=多くの国民は低所得化が進んでいます。
私にはグローバル化と国内経済のバランスが崩れているように見えます。
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