024 日本は本当に輸出大国か!? - GDPの名目・実質と輸出依存度

日本は輸出が多いイメージがありますが、具体的にはどれくらいの水準なのか、統計データで確認し国際比較してみます。

1. 日本経済の推移

前回は、内閣府の国民経済計算の統計結果から、日本のGDP輸出依存度の推移を見てみました。
日本のGDPは停滞していて輸出依存度はGDPの18%程度である事、物価が下落して停滞しているため実質GDPは成長していることがわかりました。
今回は、国際比較をすることで、この日本の状況がレアケースなのか、一般的なのか、確認してみたいと思います。
参照するのはOECDの統計データ(OEC.Stat)です。

GDP・輸出割合の推移

図1 日本 GDP成長率・輸出対GDP比・賃金対GDP比の推移
(OECDデータより)

図1は2003年から2018年の日本の名目GDPの指数(赤)、実質GDPの指数(青)、そして輸出対GDP比(黒)、賃金対GDP比(緑)です。
名目GDP、実質GDPは2003年の数値を100とした指数として表現しています。

実質値を表現する場合は、評価する基準の年を統一した成長率の方が比較しやすいため、今回はこのようにしてみました。
輸出対GDP比、賃金対GDP比は各年の名目GDPに対する割合を示します。
輸出対GDP比は輸出依存度とも呼ばれます。
賃金対GDP比は生み出された付加価値がどれだけ労働者に分配されているのかを示す労働分配率に相当する指標です。

着目したいのが、名目GDPと実質GDPの成長率です。
日本は名目GDPの伸びに対して、実質GDPの伸びが高く差が広がっているように見えます。
この間日本の物価が下がっている期間があったため、名目よりも実質の方が成長率が高いという事がわかります。

輸出対GDP比を見ると12→18%に増加しています。
2000年代後半にかけて少しずつ輸出の割合が増え、その後は横ばい傾向である事がわかりますね。

賃金対GDP比は42~43%でほぼ一定の割合で推移しています。
2012年以降名目GDPは微増していますので、この期間で見れば賃金の総額も微増していると考えてよさそうです。
ただし、労働者数が増えている事もあり、平均給与がピークよりも目減りしているのは、これまで見た通りです。

2. 主要先進国の経済の推移

GDP・輸出対GDP比、賃金対GDP比 アメリカ

図2 アメリカ GDP・輸出対GDP比・賃金対GDP比の推移
(OECDデータより)

GDP・輸出対GDP比、賃金対GDP比 ドイツ

図3 ドイツ GDP・輸出対GDP比・賃金対GDP比の推移
(OECDデータより)

GDP・輸出対GDP比、賃金対GDP比 韓国

図4 韓国 GDP・輸出対GDP比・賃金対GDP比の推移
(OECDデータより)

GDP・輸出対GDP比、賃金対GDP比 イギリス

図5 イギリス GDP・輸出対GDP比・賃金対GDP比の推移
(OECDデータより)

図2~5までに、同じように整理したデータについて主要国の同様のグラフを示します。

2003年からの名目GDPの伸びはアメリカ79%、ドイツ53%、韓国121%、イギリス69%です。
実質GDPの伸びはアメリカ34%、ドイツ25%、韓国68%、イギリス25%です。
各国とも名目GDPの伸びに対して、実質GDPは名目GDPとの差が緩やかに広がる形で上昇しています。
つまり物価が少しずつ上がっている緩やかなインフレという事になります。

日本は名目GDP7%、実質GDP14%の伸びで、名目GDPに対して実質GDPの伸びの方が大きいです。
赤い線と青い線の位置関係が日本だけ逆になっている事で確認できます。

こうやって他の国と比較してみると、いかに日本の状態が他の主要国と異なる事がよくわかります。

3. 輸出対GDP比の国際比較

GDPに対する輸出額の割合も見てみましょう。
日本12→18%に対して、アメリカ9→12%、ドイツ41→42%、韓国38→39%、イギリス23→30%です。
アメリカは極端に割合が低いですが、その他の主要国は日本よりも明らかに大きな数値です。
ドイツ、韓国は輸出規模の大きい国と言えそうです。

輸出対GDP比 2018年

図6 輸出対GDP比 2018年
(OECD統計データ より)

2018年のOECD各国について輸出対GDP比をまとめたのが図6です。

ドイツや韓国以上に輸出対GDP比の大きな国はたくさんある事がわかりますね。
ルクセンブルク227%、アイルランド120%、東欧諸国は軒並み80~100%程度の数値です。
その他の国も概ね20%台後半以上の割合です。

日本とアメリカは極端に低い数値となります。
日本は輸出大国か?という問いに対しては、日本は総額では確かに多いのかもしれませんが、国内経済の規模に対してはかなり少ない国であることがわかります。

例えば自動車産業など本来は輸出が主だった産業の現地生産化が進んでいますので、その分輸出が目減りしている可能性もあるかもしれません。

日本はこのように以前から輸出依存度の低い内需型の経済と言えますが、貿易を軽視して良いわけではありませんね。
資源や食料など輸入に頼らなければいけないですし、いわゆる加工貿易も主要な産業の1つのはずです。

4. 日本の経済と輸出の特徴

賃金対GDP比も見ていきましょう。
日本42-43%、アメリカ45→43%、ドイツ41-42%、韓国38-39%、イギリス42→41%です。
数字だけ見ると日本は他の国と同じ水準のような感じがしますね。

ただ、この賃金対GDP比はGDPに対する賃金総額の割合です。
名目GDPの上昇に伴って賃金総額を上げていかないと、この数値は同じ水準では推移しません。

日本はほとんどGDPが増えていないが、賃金割合は一定のためほとんど賃金は増えていないと考えられます。
他の国は名目GDPが増加しているのとほぼ足並みをそろえて賃金が増えている事になります。(賃金対GDP比がほぼ一定)

上記をまとめると、国際比較により次のようなことが言えると思います。
・ 日本は長期間物価停滞が続いており、かつ名目GDPが増加していない
・ 日本の賃金対GDP比はほぼ一定で推移しており、賃金総額はほとんど増えていない
 (労働者数の増加を考えれば1人あたりではむしろマイナス)
・ 日本は輸出対GDP比が18%程度であり、他の国と比べると低水準

少しずつ、日本経済の特徴が見えてきたような気がします。

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・本ブログに用いられる統計データは政府やOECDなどの公的機関の公表しているデータを基にしています。
・統計データの整理には細心の注意を払っていますが、不整合やデータ違いなどの不具合が含まれる可能性がございます。
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