134 日本の設備投資は少ない? - 機械・設備投資の国際比較
目 次
1. 日本の総固定資本形成
前回は、日本全体で投資が減っている事を取り上げました。
住宅購入は家計による投資ですが、もっと大きな民間の投資は企業による設備投資ですね。
今回は設備投資についてフォーカスしてみましょう。
構造物や設備など主に高額な固定資産についての支出を総固定資本形成と言いますね。
日本の統計の場合、総固定資本形成は主体は民間と公的に分かれ、用途は住宅、企業設備、一般政府に分かれます。
まずは日本のGDPのグラフから見ていきましょう。
図1 GDP支出面 総固定資本形成 内訳
(OECD 統計データ より)
図1が日本のGDPのうち、総固定資本形成についてのグラフです。
GDP支出面は、民間最終消費支出、政府最終消費支出、総固定資本形成、純輸出に分かれますが、総固定資本形成はそのうちの大きな項目の一つです。
青が民間の合計、赤が政府(公的)の合計です。
さらに、住宅、企業設備、一般政府と別れます。
総固定資本形成 公的の住宅などは、例えば公務員の社宅等が考えられると思います。
企業設備も公的需要の設備であれば、こちらに含まれるようですね。
どちらも割合としては小さいです。
総固定資本形成で最も大きいのが、民間の企業設備ですね。
1991年以降は70~90兆円の間くらいで推移しています。
公的 一般政府は、道路や橋梁など、いわゆる公共投資が該当すると思います。
公的 一般政府は1997年をピークにして減少→停滞している様子が分かりますね。
その分、増加しているのが、政府最終消費支出で、両方合わせた公的需要が一定になるように推移しています。
2. 1人あたりの機械・設備投資の国際比較
上記はあくまでも、国内での推移となります。
それでは、他の先進国と比べて日本の設備投資の金額は大きいのか、小さいのか他の先進国との比較をしてみましょう。
図2 総固定資本形成 機械・設備 1人あたり 2018年
(OECD 統計データ より)
図2は総固定資本形成のうち機械・設備について、人口1人あたりのドル換算した金額を比較したものです。
ここでの機械設備は、民間も公的も含まれたものとなりますし、兵器なども含まれますので、国内GDPの区分の仕方とはやや異なります。
日本は3,164ドルとOECD35か国の中で12番目とやや大きな水準にある事がわかります。
ドイツが3,356ドルで11番目、アメリカが4,217ドルで5番目です。
3. 1人あたりの機械・設備投資の推移
図3 総固定資本形成 機械・設備 1人あたり 推移
(OECD 統計データ より)
図3は、主要国の数値を時系列で表現したグラフです。
為替レートの影響もありますが、特徴的なのは日本は1995年あたりまで極めて高い水準だったという事ですね。
その後停滞して、ドイツと同等程度になっています。
アメリカは右肩上がりですね。
それ以外の主要国は比較的足並みが揃ってやや上昇傾向です。
日本は1980年代後半で急激に増大しますが、他国はゆっくりと上昇基調といった印象です。
近年の日本の経済停滞を考えた場合、1995年に世界位一の物価水準を誇り、デフレと共にそれが他の先進国並みに落ち着いてきた事がポイントと思います。
その中で、このように機械設備が他国に先立っていち早く極めて高い水準に達しているという事は興味深いですね。
もちろん、円高による影響も大きいと思いますが、図1と比べるとその立ち上がり具合は為替だけではないようです。
4. 対GDP比の機械・設備投資の国際比較
それでは、別の観点からも眺めてみましょう。
図4 総固定資本形成 機械・設備 対GDP比 2017年
(OECD 統計データ より)
図4は機械設備の対GDP比で、機械・設備への支出がGDPの総額に占める割合を表現しています。
日本は7.9%とOECDの中で10番目と高い水準となります。
韓国は9.4%で4位と非常に割合が大きい事がわかります。
一方で、ドイツ(6.9%)、イタリア(6.7%)、アメリカ(6.5%)などとかなり水準が低く、イギリス(4.1%)、カナダ(4.1)に至っては最下位です。
実はGDPに占める割合でも、日本は先進国の中で大きい方だという事になりますね。
5. 対GDP比の機械・設備投資の推移
続いて、機械・設備投資について対GDP比の推移を見てみましょう。
図5 総固定資本形成 機械・設備 対GDP比 推移
(OECD統計データ より)
図5が主要国についての時系列グラフです。
趨勢的には各国とも右肩下がりですね。
各国とも支出の中で、機械・設備の投資にかける割合が減ってきているという事になります。
特に製造業からの脱却が進んでいるイギリスでは、その落ち方が大きいようです。
アメリカも金額としては右肩上がりですが、GDPに占めるシェアとしては低下傾向と言う事ですね。
日本も1991年のバブル崩壊をピークにして、右肩下がりです。
しかし、現在もなお韓国に次いで非常に大きい割合を占めているという事がわかりますね。
近年でも同じ工業立国であるドイツよりも高い水準となっています。
6. 機械・設備投資の成長度合い
最後に、自国通貨ベースでの機械・設備への支出の成長度合いも比較してみましょう。
図6 総固定資本形成 機械・設備
図6は総固定資本形成 機械・設備について、自国通貨ベースでの1980年の水準を基準(1.0)とした倍率を表現しています。
日本(青)は、1990年序盤まではドイツの成長度合いよりも高かったようですが、その後は横ばい傾向に変化し、近年では大きく差が開いています。
他国は更に機械・設備を増やしている状況がわかりますね。
7. 機械・設備投資の特徴
今回は総固定資本形成のうち機械・設備ついて、先進国との国際比較をしてみました。
国内のデータだけを見ると、順調に上昇していたのが急に停滞した印象を受けます。
ただ、海外との比較をしてみると様子は異なるようです。
海外諸国と比べると、1人あたりの投資額でも、GDPに占める割合でも、設備投資は高い水準にあるという事がわかります。
他国に先行して機械・設備に投資しその後停滞しつつもまだ高い水準を保っているという見方もできますし、停滞している間に他国に追いつかれ優位性が薄れているという見方もできるかもしれません。
あるいは、一時期に過剰に設備投資をしてしまったので、供給過剰となり設備がだぶつき、値下げ合戦に拍車がかかっているとも言えるかもしれません。
設備に頼った、大量生産のビジネスモデルでは既に優位性が薄れていると言う事かもしれませんね。
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