201 労働生産性の産業別国際比較 - 各国の特徴と傾向

主要先進国の産業別に、労働生産性(労働者1人あたり付加価値)を国際比較してみます。産業ごと、国ごとの特徴が見えてくるかもしれません。

1. 工業の労働生産性

前回は、産業別のGDPと労働者数から、生産性(労働者1人あたり付加価値)を計算し、主要国で比較してみました。
各国で共通しているのは、情報通信業や金融業の労働生産性が高く、次いで工業や専門サービス業といった順番です。
一方で、一般サービス業や公務・教育・保健は比較的生産性が低い傾向のようです。

今回は、各国の労働者1人あたり付加価値について、ドル換算した数値を産業ごとに国際比較してみましょう。

まずは、比較的生産性の高い工業からです。

労働者1人あたり付加価値 工業

図1 労働者1人あたり付加価値 工業
(OECD統計データより)

図1が工業の労働者1人あたり付加価値について、為替レートでドル換算した数値です。
生産面でも個別産業ごとに購買力平価に相当する換算レートがあると良いのですが、そのような統計データは見当たりませんでした。

日本(青)は1990年代にかなり高い水準に達していますが、その後横ばい傾向が続いていて、近年ではドイツを下回ります。
主要先進国の中では低めです。

カナダは2010年前後でかなり高い水準に達していました。
アメリカは右肩上がりで上昇傾向が続いていて、2021年では18万ドルと日本の1.5倍以上の水準です。

イタリア以外は10万ドルをこえる水準となっています。

2. 情報通信業の労働生産性

続いて、生産性の高い情報通信業の労働生産性を見てみましょう。

労働者1人あたり付加価値 情報通信業

図2 労働者1人あたり付加価値 情報通信業
(OECD統計データより)

図2は情報通信業の労働者1人あたり付加価値です。

日本は横ばい傾向ながら近年までドイツを上回り、主要先進国では比較的生産性が高い方になります。
イタリアも他の主要先進国と遜色のない水準というのが特徴的ですね。

ただし、アメリカは圧倒的で、日本や他の主要先進国の2倍程度の水準に達しているようです。
2021年には25万ドルに達します。

2000年代以降各国で10万ドルを超えます。

3. 金融保険業の労働生産性

次に、情報通信業と共に生産性の高い金融保険業の国際比較です。

労働者1人あたり付加価値 金融保険業

図3 労働者1人あたり付加価値 金融保険業
(OECD統計データより)

図3が金融保険業の労働者1人あたり付加価値です。

やはりアメリカが圧倒的ですが、イギリスが停滞しながらもアメリカに近い水準に達しているのが特徴的です。
両国とも20万ドルをこえます。

日本も2010年頃まではイギリスに次ぐ水準に達していて、その後は減少、近年ではドイツやフランスと同程度です。

4. 建設業の労働生産性

続いて、公共性が高く中程度の生産性の建設業について見てみましょう。

労働者1人あたり付加価値 建設業

図4 労働者1人あたり付加価値 建設業
(OECD統計データより)

図4が建設業の労働者1人あたり付加価値です。

アメリカが他の産業ほどの圧倒感が無いのが特徴的ですね。
カナダやフランスが2010年代に高い水準に達していたようです。

日本は近年やや低めの水準となっています。

2021年でアメリカ、ドイツ、フランス、イギリスは8万ドル前後ですが、日本は6万ドル程度です。

5. 公務・教育・保健の労働生産性

次に公共的な産業である公務・教育・保健の労働生産性です。

労働者1人あたり付加価値 公務・教育・保健

図5 労働者1人あたり付加価値 公務・教育・保健
(OECD統計データより)

図5が公務・教育・保健の労働者1人あたり付加価値です。

1990年代の日本の高水準が特徴的です。
日本は為替の影響でアップダウンをしながらも、徐々に低下している様子も確認できます。

近年ではドイツやイギリス、イタリアと同程度の6万ドル強で落ち着いています。

イタリアがドイツやフランスよりも高い水準が続いている事も特徴的ですね。
イタリアは特定の産業で相対的に高い傾向があるようです。

アメリカはかなり高い水準に達していて、他の主要先進国の2倍近くの11万ドル程度となっています。

6. 一般サービス業の労働生産性

続いて、一般サービス業です。
一般サービス業は比較的生産性の低い産業と言われています。

労働者1人あたり付加価値 一般サービス業

図6 労働者1人あたり付加価値 一般サービス業
(OECD統計データより)

図6が一般サービス業の労働者1人あたり付加価値です。

日本は2000年代以降他の主要先進国と同程度で推移しているようです。
フランスやイタリアの水準がやや高いのが特徴的ですね。

2021年でフランスが7万ドル程度、ドイツ、イタリアが6万ドルていど、日本、イギリスが5万ドル強です。

やはりアメリカは高い水準で、近年では日本の2倍近くで10万ドル近くに達しています。

7. 専門サービス業の労働生産性

次に、士業・コンサルタントや業務支援的な産業である専門サービス業の労働生産性です。

労働者1人あたり付加価値 専門サービス業

図7 労働者1人あたり付加価値 専門サービス業
(OECD統計データより)

図7が専門サービス業の労働者1人あたり付加価値です。

圧倒的なアメリカの水準が目を引きます。
近年では日本の3倍ほどの水準で18万ドルほどに達しています。

専門サービス業はコンサルタントや士業などの専門職に加えて、労働者派遣業などの業務支援的な産業が含まれています。
アメリカは専門職の付加価値が圧倒的に高いか、業務支援的な産業があまり多くないなどの可能性がありそうですね。

フランスの水準がアメリカに次いで高い事も特徴的です。
日本は相対的に低めの水準が続いています。

2021年でアメリカが18万ドル弱、フランスが8万ドル弱、日本は5万ドル強です。

8. 産業別労働生産性の特徴

今回は、主要先進国の産業別の労働生産性についてご紹介しました。

各国で比較する事で、国ごとの産業の特徴が良くわかりますね。

ほとんどの産業で圧倒的に水準の高いアメリカですが、特に専門サービス業の生産性が他国よりも高く、建設業ではそれほど高くないといった特徴も見えてきました。

イギリスは主要先進国の中では、全体的にあまり生産性が高くない方ですが、金融保険業だけ圧倒的な水準です。

フランスはやや高めの産業が多く、ドイツはやや低めの産業が多いですね。

イタリアは全体的に低めの産業が多いですが、金融保険業、公務・教育・保健、一般サービス業が高めの水準です。

日本は主要先進国の中では近年低めの産業が目につきます。
やはり1990年代と比べると、相対的な水準が低下している印象ですね。

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