002 働き盛りが貧困化する日本 - 男性労働者の年齢別平均給与
日本の男性労働者について、年齢階級別にみた平均給与の変化をご紹介します。
1. 男性の平均給与の変化
前回は、日本の男性労働者で平均給与が1997年のピーク値より下がっていて目減りしている状況を確認しました。
今回はもう少し男性労働者のデータを違う視点から見てみましょう。
参照するのは、前回同様に民間給与実態統計調査です。
図1 平均給与 男性 年齢階級別
(民間給与実態統計調査 より)
図1は年齢階級別の平均給与を1997年のピークに近い年(1999年)と近年(2017年)で比較しています。
5歳刻みでの変化を可視化してみましたが、全ての年齢層で平均給与が減っています。
特に目立つのが働き盛りの三十代後半~四十代前半です。
それぞれ、35~39才で約63万円(10.9%)、40~44才で約65万円(10.3%)も平均給与が減っています。
約20年の間に、増えるどころか、1割以上もお給料が減っている事になります。
主要国がこの20年ほどで平均給与を軒並み10~20%増やしているのに対して、むしろ減らしているのは日本だけです。
社会保障費など、お給料から天引きされる負担が増えていますので、可処分所得としては更に減っていると思います。
男性労働者の平均給与が下がっている要因は、比較的低所得な高齢労働者が増えたためと考えていたのですが、どうやらそうではなさそうですね。
各年齢層で平均給与が下がっていて、とりわけ働き盛りの層で減少幅が大きいという状況のようです。
2. 男性の労働者数の変化
図2 給与所得者数 男性 年齢階級別
(民間給与実態統計調査 より作成)
図2は男性の年齢階級別の労働者数(給与所得者数)を表しています。
1999年では各年齢層で満遍なく労働者が分布していましたが、2017年では大きくバランスが変化しています。
特徴的なのが、20代後半から30代前半の労働者が大幅に減っている事です。
25~29才では約130万人(36.1%)、30~34才では約57万人(16.3%)減少しています。
一方で、60歳以上の高齢者が約300万人から約500万人へと、大きく増加しています。
若年層の減少分をほぼ相殺する形で高齢の労働者が増えているようです。
3. 男性労働者の平均給与の特徴
今回の民間給与実態統計調査によれば、1999年の男性の民間企業に勤める労働者数は約2,839万人です。
それに対して2016年の労働者数は約2,862万人です。
約20年の間で、総数そのものに変化は無いように見えますが、その中身が大きく変化しているようです。
働き盛りで構成比率も高い30代後半~40代前半の労働者の給与が大幅に減り、大きく給与額の落ちる60歳以上の高齢者の労働者が大幅に増えています。
定年後の高齢労働者が増える事によって全体の平均給与が下がっているだけなら理解はできるのですが、図1を見る限りでは各世代それぞれで平均給与が減少してしまっていますね。
少子高齢化だけではない、労働者の所得低下の要因があるのかもしれません。
各年齢層でパートタイム労働者が増えているといった変化も考えられるかもしれません。
また、近年残業時間が減った事で、残業代で稼いでいた部分が減少している可能性も考えられます。
今後の更なる少子高齢化や人口減少を考えるならば、本来は少ない人数でも成果を出せる方向にシフトしていかなければいけませんね。
労働者数の減る若い層で給与が増えず、給与水準の低い高齢労働者が大きく増加し、働き盛りの世代で平均給与が大きく減少しています。
アンバランスな状況が進んでいるように見受けられます。
皆さんはどのように考えますか?
参考: 男性の年齢階級別平均給与の推移
(2023年7月追記)
本文(2019年作成)では、1999年と2017年の年齢階級別の平均給与を比較していますが、補足として時系列での推移もご紹介します。
図3 平均給与 男性 年齢階層別
(民間給与実態統計調査より)
図3が男性の年齢階層別平均給与の推移です。
どの年齢階層でも1997年をピークとして減少傾向が続き、2009年のリーマンショック後上昇傾向となります。
近年では1997年の水準に近づきますが、2019年のコロナ禍でまた減少しています。
2020年時点では、1997年のピーク値から目減りした状態となります。
特に40代では2010年以降の上昇傾向も見られず横ばいが続いています。
就職氷河期世代が多く含まれる影響が推測されますね。
図4 平均給与 女性 年齢階層別
(民間給与実態統計調査より)
図4は女性の年齢階層別平均給与です。
男性とは大きく異なる傾向です。
まず、全体的に男性よりも低所得です。
次に、年齢階層間の差がほとんどありません。
そして、男性で観測された1998年~2009年にかけての減少が観測されず、せいぜい横ばいです。
1997年から見ると、直近ではプラス変化しています。
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