008 はたして日本は先進国か - 1人あたりGDPと平均給与の関係
日本経済の立ち位置の変化を、1人あたりGDPと平均給与のバブルチャートで確認してみます。
1. バブルチャートとは
前回までに、OECDの統計データを用いながら、OECD加盟35か国の平均給与と労働生産性について見てきました。
いずれも日本は35か国中20位程度と、残念な順位となっていることがわかりました。
私が以前読んだ本に、FACTFULNESS(オーラ・ロスリング著, 日経BP社)という本があります。
そこでは世界中の統計データを、様々な見せ方で視覚的に表現しています。
その中でもバブルチャートは大変有効な表現方法という事を知りました。
バブルチャートとは、ある2つのを横軸と縦軸にして、それぞれの国の位置をプロットしたグラフです。
散布図の一種ですが、各国を表す丸の大きさを例えば人口に連動させて表現する事で、視覚的に理解しやすい表現として注目を集めています。
今回は、そのバブルチャートを活用して、日本の立ち位置を視覚的に整理してみたいと思います。
2. 1997年のバブルチャート
まずは、日本経済のピークとなった1997年のバブルチャートを見てみましょう。
図1 平均給与 1人あたりGDP バブルチャート 1997年
(OECD統計データ より)
図1にバブルチャートを示しました。
まずは日本経済のピークだった1997年のグラフです。
横軸は1人あたりGDP[ドル]、縦軸に平均給与[ドル]とし、各国の位置をプロットしています。
1人あたりGDPは、付加価値の総額であるGDPを人口で割った指標です。
1人1人の豊かさの平均値といった意味合いがあり、国民の豊かさを表す最も代表的な指標です。
各国を示す丸(バブル)の大きさは、その国の人口を示します。
右上に行くほど、1人あたりGDPや、平均給与、生産性が高い国である事を示します。
1人あたりGDP 平均給与
単位:ドル 1997年
35,035 - 38,823 日本
31,424 - 33,644 アメリカ
27,137 - 30,079 ドイツ
26,719 - 31,835 イギリス
24,233 - 27,055 フランス
21,902 - 28,251 カナダ
21,830 - 22,312 イタリア
19,800 - 22,468 OECD平均
まず1人あたりGDPと平均給与には強い正の相関が確認できます。
正の相関とは、どちらかが増えれば、もう一方も増えるという関係です。
つまり、1人あたりGDPの高い国は、平均給与も高いという事ですね。
グラフには、1人あたりGDPと平均給与それぞれについて、OECD平均値の線も引いてみました。
日本は当時経済水準の高いスイスやルクセンブルクに次ぎ、平均値を大きく上回る高い水準に達していたことになります。
最先進国の一角とでも言えるようなポジションだったわけですね。
3. 近年のバブルチャート
続いて、近年のバブルチャートについても眺めてみましょう。
図2 平均給与 1人あたりGDP バブルチャート 2019年
(OECD統計データ より)
図2が2019年のバブルチャートです。
やはり強い正の相関が確認できますが、G7各国の位置が大きく変化していますね。
右上の領域から、中心付近(平均値)に寄ってきています。
1人あたりGDP 平均給与
単位:ドル 2019年
65,240 - 65,836 アメリカ
46,467 - 47,490 ドイツ
46,332 - 52,134 カナダ
42,314 - 47,424 イギリス
42,257 - 41,457 OECD平均
40,292 - 40,384 日本
40,256 - 43,771 フランス
33,205 - 33,616 イタリア
とりわけ最先進国の一角であった日本の立ち位置の変化が大きいようです。
日本は、1人あたりGDPも、平均給与もやや平均値を下回るレベルです。
4. 日本経済の偏差値
今回は、1人あたりGDPと平均給与についての関係性をバブルチャートという表現方法から確認しました。
日本は1997年には、先進国の中でも極めて高い経済水準に達していたことが窺えますね。
その1997年のピークから日本は長い停滞が続きました。
他国は基本的に右肩上がりで成長していますので、相対的に日本の立ち位置が先進国中位にまで変化しています。
現在は、何とか中程度の先進国というポジションを確保できている状況と言えます。
図3 1人あたりGDP、平均給与、労働生産性 偏差値 日本
(OECD統計データ より)
試みに、1人たりGDP(青)、平均給与(赤)、労働生産性(緑)について、OECDの中での偏差値を計算したものが図3です。
労働生産性は労働時間あたりGDPを用いています。
偏差値ですので、50が先進国の中での平均値という事になります。
ここでの労働生産性は労働時間あたりGDPの数値です。
1人あたりGDP、平均給与、労働生産性
偏差値 日本
1970年 46, - , 40
1980年 47, - , 42
1990年 57, 55, 52
1995年 68, 67, 59
1997年 63, 63, 56
2000年 66, 67, 62
2005年 54, 54, 51
2010年 54, 54, 51
2015年 49, 49, 47
2019年 50, 49, 47
日本は1980年代後半のバブル期から、2000年代初頭までは先進国の中でも非常に高水準な経済状況だった事がわかります。
しかし、2000年ころから急激に偏差値が減少し、2012年頃からは50を下回る事が多くなります。
3指標とも連動して推移しているわけですが、労働生産性が他の指標よりも1段低い状態です。
とりわけ労働生産性が低いという日本経済の特徴がありそうですね。
ちなみに、ドイツについて同様のグラフを作ると、労働生産性の方が他2指標より高いようです。
5. 日本経済の変化の特徴
今回はバブルチャートで日本経済の変化を視覚的に表現してみました。
1990年代は先進国の中でも経済水準の高い状況でしたが、停滞が続いた末に近年では先進国の中でも低い水準にまで立ち位置が低下している事がわかりました。
とりわけ、労働生産性が低いという特徴があるようです。
もちろん、今後も停滞が続けば、他国は成長を続けているわけですから、更に下位にまで転落する可能性も高そうです。
このままだと先進国と言えるかわからない状況にまで追い込まれかねない瀬戸際かもしれないと危惧する声も多いようです。
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・本ブログに用いられる統計データは政府やOECDなどの公的機関の公表しているデータを基にしています。
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