006 給与が増えないのは日本だけ? - 平均給与の国際比較

平均給与の国際比較について名目と実質の変化をご紹介します

1. 平均給与の国際比較

前回までは企業の内部留保や付加価値分配のバランスについてフォーカスしてみました。
今回はOECDの統計データを取り上げて、国際社会の中での日本の立ち位置を明らかにしていきたいと思います。

OECD(経済協力開発機構)は、日本、アメリカ、ヨーロッパを中心とした、比較的先進国と位置付けられる35か国程が加盟しています。
OECDのホームページ(http://www.oecd.org/)上では、様々な統計データが公開されています。

今回は、各国の平均給与について取り上げてみたいと思います。
また、長期間にわたる、国際比較を行う際には、物価と為替の影響を考慮する必要があります。

平均給与 名目値

図1 平均給与 名目値
(OECD統計データ より)

図1は、2000年を基準(1.0)とした場合の各国通貨ベースでの伸びを比較したグラフです。

このデータはパートタイム労働者がフルタイム相当の時間働いたと見做す調整が入った数値です。
パートタイム労働者の増える日本の数値は、やや嵩上げされて評価されやすくなっています。

日本以外の国は右肩上がりで上昇しています。
2000年からの18年間で、韓国で2倍、アメリカで6割、ドイツで4割以上の平均給与の伸びがみられます。

唯一下がっている国は、日本だけです。
2018年では2000年の94%の水準となります。

もちろん物価の影響もありますので、実質値を見る事も重要です。
物価が上がる以上の割合で給与が増えれば、変化率は増加するはずです。
逆に物価の上がり方が平均給与の上昇よりも大きければ、変化率は減少します。

平均給与 実質値

図2 平均給与 実質値
(OECD統計データ より)

図2は平均給与実質値です。

実質値 = 名目値 ÷ 物価指数

日本は、物価が減少し停滞していますので、名目値で減少しているにもかかわらず物価も下がった影響があり、実質値では変化無しの1.0です。
韓国は1.36、アメリカが1.17、ドイツが1.15と、実質値でも15%以上の平均給与の伸びがあります。
1を下回るのは、ギリシャ(0.97)、ポルトガル(0.96)、イスラエル(1.00)くらいです。

2. 平均給与の実質値

それでは、実際の平均給与そのものの水準は国際的にみてどの程度の位置づけなのでしょうか。

平均給与 実質 購買力平価換算

図3 平均給与 実質 購買力平価換算
(OECD統計データ より)

図3にドル換算した、実質平均給与の推移を示しました。
2018年の購買力平価でドル換算した国際比較となります。

日本は、この18年の間4万ドル前後での横ばいです。
アメリカ(53,904ドル→63,093ドル)、ドイツ(43,316ドル→49,813ドル)、韓国(29,082ドル→39,473ドル)はそれぞれ右肩上がりで上昇しています。

2000年の時点では、日本(40,468ドル)はドイツ(43,316ドル)とかなり近い平均給与でした。
2018年では、ドイツの方が2割以上も平均給与が高くなっています。

アメリカは今や日本の平均給与の1.5倍以上です。
さらには、日本は韓国にも肉薄されており、ほぼ変わらない水準となっています。

多くの国では実質値でも成長が続いているのに、日本は停滞が続いてしまっています。

3. 日本の平均給与の特徴

今回は、労働者の平均給与についての国際比較をご紹介しました。

日本の労働者の平均給与は、名目でも実質でも停滞が続いています。

実数を比べてみると、停滞が続いているうちに他の主要先進国との差が拡大し、韓国との差が縮まっています。

日本の経済停滞によって、所得水準が相対的に低下している事がわかります。

皆さんはどのように考えますか?

参考: 平均給与の最新データ

(2023年7月追記)

生活実感に近いとされる購買力平価換算による平均給与の最新状況をご紹介します。

平均給与 購買力平価換算

図4 平均給与 名目 購買力平価換算
(OECD統計データより)

図4は各国の平均給与の購買力平価換算による推移です。

日本は1990年代まではイギリスやドイツと同程度、その後はやや差が開いていき、最近では主要先進国中最も低い水準となります。

平均給与 名目 購買力平価換算

図5 平均給与 名目 購買力平価換算
(OECD統計データより)

図5はOECD各国の2022年の水準を比較したものです。

日本は47,499ドルで、OECD34か国中25位、G7中最下位で、OECD平均56,230ドルを大きく下回る水準となります。

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