123 企業の負債と資産 - 企業規模別の資産・負債・純資産

日本企業は負債が増えず、資産が増えることで差引の純資産が増加し続けています。企業規模別のそのバランスを可視化すると、特徴が見えてきそうです。

1. 日本企業の資産・負債・純資産

前回は、日本企業の資産、負債、純資産についてフォーカスしてみました。
日本企業は、大企業だけでなく、中小零細企業でも純資産が右肩上がりに増加している状況が分かりました。

今回は、企業規模別に資産や負債のバランスについて見ていきたいと思います。
参照する統計データは、法人企業統計調査です。

図1 資産・負債・純資産 全規模
(法人企業統計調査 より)

図1が、日本企業の資産、負債、純資産の時系列のデータを示しています。
上側(プラス側)が資産、下側(マイナス側)が負債を示しています。

黒い折れ線が資産から負債を差し引いた純資産を表します。
日本企業は1995年に、資産も負債もピークとなった後、やや減少に転じています。
負債はそのまま停滞傾向が続きますが、資産は2003年あたりから増加に転じ、1995年のピークを越えても増加し続けています。

負債は緩やかに増加傾向にも見えますが、1995年のピークを越えていません。

2018年では資産が1,800兆円、負債が1,040兆円、純資産が760兆円にものぼります。

日銀の資金循環統計と異なり、この統計には資産側に固定資産も含まれ、負債側に自社の株式は含まれません。

資産の内訳を見ると、流動資産はピークからは横ばいが続いていますが、固定資産は増加が続いているようです。

純資産は右肩上がりで増加していますね。
日本企業は、全体として負債は増やさず、資産が増加して純資産が増えている状況です。

2. 中小零細企業の資産・負債・純資産

次に、資本金1億円未満の中小零細企業についてデータを見てみましょう。

図2 資産・負債・純資産 積上げ 中小零細企業
(法人企業統計調査 より)

図2が中小零細企業(資本金1億円未満)に限定したグラフです。

資産は横ばい傾向で、負債が大きく減少し停滞しています。
純資産が増加しています。

全規模併記と比べると、明確に負債が停滞を続けている点が異なります。

2018年では資産は600兆円、負債が400兆円、純資産が200兆円といったあたりです。
企業全体に占めるシェアは、資産35.8%、負債38.9%、純資産31.6%です。

3. 中堅企業の資産・負債・純資産

次に資本金1億円～10億円の中堅企業のデータです。

図3 資産・負債・純資産 中堅企業
(法人企業統計調査 より)

図3が中堅企業のグラフです。

中小零細企業のグラフと比べると、負債が2010年代からやや増えている点が異なります。
資産が1995年のピーク後減少し、2010年代から増加傾向となっています。

2018年では、資産230兆円、負債130兆円、純資産100兆円といった具合です。
やや固定負債の割合が小さいようですね。

企業全体に対するシェアは、資産12.9%、負債13.0%、純資産12.9%です。

4. 大企業の資産・負債・純資産

最後に資本金10億円以上の大企業です。

図4 資産・負債・純資産 大企業
(法人企業統計調査 より)

図4が大企業のグラフです。

中小零細企業や中堅企業と大分様子が異なりますね。

まず資産が落ち込まずに右肩上がりです。
1990年から停滞が見られますが、2003年あたりから大きく増加しています。

負債も資産ほどではないですが、近年では増加傾向です。
資産は流動資産が停滞気味ですが、固定資産が大きく増大しているようです。

2018年では資産900兆円、負債500兆円、純資産400兆円です。
企業全体に対するシェアは、資産51.2%、負債48.1%、純資産55.5%です。

大企業は労働者数では全体の2割程度に過ぎませんが、純資産では半分以上を占めているという事になります。

5. 企業規模別の資産・負債・純資産の特徴

今回は、企業規模別に資産・負債・純資産のバランスをご紹介しました。

詳細は次回取り上げますが、中小零細企業も、中堅企業も、大企業も、企業規模関係なく純資産が増えていますが、その内情はやや相違がありそうです。

中小零細企業
　資　産： 停滞
　負　債： 減少→停滞(近年微増)
　純資産： 徐々に増加

中堅企業
　資　産： 停滞→増加
　負　債： 停滞
　純資産： 増加

大企業
　資　産： 増加
　負　債： 停滞→やや増加
　純資産： 増加

いずれにしろ、日本企業はどの企業規模でも負債があまり増えず、資産が増える又は維持する事で純資産が増大している状況のようです。

本来資本主義経済では、企業が負債を増やして投資を行い、生産性を高めていく事で、経済が成長していくものだと思います。
その場合観測されるはずの「負債を増やす」という現象が起こっていないわけですね。

企業が負債を増やして投資をしないから経済が成長しないのか、経済が成長していないから企業が負債を増やして投資をしないのか、どちらでしょうか。

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