314 雇用者の労働時間あたり付加価値 - 生産性の国際比較

労働生産性の指標として、企業で働く雇用者の稼ぐ労働時間あたり付加価値について計算してみました。

1. 雇用者労働時間あたり付加価値とは

前回は、生産性の指標として、自営業者を除外した雇用者の1人あたり付加価値について国際比較してみました。
日本は横ばい傾向が続いているため、近年先進国の中で順位を低下させているようです。
2021年の水準では、平均値を下回り、先進国の中でも低位となります。

雇用者と言っても、その中にはパートタイム労働者が含まれます。
近年日本ではパートタイム労働者の割合が増加しているため、雇用者1人あたりで見ると日本の水準は劣後しやすいのも事実ですね。
今回は、雇用者の労働時間あたり付加価値で国際比較をしてみたいと思います。

雇用者 労働生産性

図1 雇用者 労働生産性 日本
(OECD統計データより)

図1が日本の雇用者の労働生産性です。
雇用者の付加価値は、GDPから家計の営業余剰・混合所得を差し引いたものです。
自営業者の混合所得や、持家の帰属家賃といった雇用者が稼いでいない付加価値を除外したことになります。

青は前回ご紹介した雇用者1人あたり付加価値です。
長期的に見れば横ばい傾向が続いています。

赤が今回取り上げる雇用者の労働時間あたり付加価値です。
雇用者1人あたり付加価値と比べるとリーマンショック後の増加傾向が強い事がわかりますね。
リーマンショック期を除けば、長期的に増加傾向を示しているようにも見えます。
2021年では5,000円に迫るといった状況です。

2. 雇用者労働時間あたり付加価値の推移:為替レート換算値

それでは、この雇用者の労働時間あたり付加価値について、国際比較をしてみましょう。
まずは金額的な水準比較となる為替レート換算値です。

雇用者 労働時間あたり付加価値 為替レート換算

図2 雇用者 労働時間あたり付加価値 為替レート換算
(OECD統計データより)

図2は雇用者 労働時間あたり付加価値為替レート換算値の推移です。

日本(青)は1990年代に高い水準に達しますが、その後は横ばい傾向で、近年はOECD平均値を下回り差が開いているような状況ですね。
イギリスの水準がやや低く、OECDの平均値と同じくらいです。

1990年代の日本の水準が高かった時期でも、この指標ではフランスと同程度であった事になります。

3. 雇用者労働時間あたり付加価値の国際比較:為替レート換算値

続いて、雇用者労働時間あたり付加価値の為替レート換算値の国際比較です。

雇用者 労働時間あたり付加価値 為替レート換算 2021年

図3 雇用者 労働時間あたり付加価値 為替レート換算 2021年
(OECD統計データより)

図3が2021年の比較です。
日本は2022年に大きく円安が進みドル建ての数値がかなり低下するのですが、その前の2021年の時点でこの水準となります。

日本は45.2ドルでOECD31か国中17位、G7中最下位で、OECD平均値を2割ほど下回ります。

時間あたりの水準の方が1人あたりよりも低いという特徴がありそうです。

逆に、フランスやドイツは時間あたりの水準がかなり高くなるのが興味深いですね。
フランス、ドイツは平均労働時間の短い国です。

4. 雇用者労働時間あたり付加価値の推移:購買力平価換算値

続いて、物価を揃えた上で数量的(=実質的)な比較をする購買力平価換算による国際比較です。

雇用者 労働時間あたり付加価値 購買力平価換算

図4 雇用者 労働時間あたり付加価値 購買力平価換算
(OECD統計データより)

図5は雇用者 労働時間あたり付加価値購買力平価換算の推移です。

日本の場合購買力平価でドル換算すると、1990年代の高い水準が均され、水準がかなり低くなるという傾向があります。

日本は2000年頃まではOECD平均値と同じくらいで推移しますが、その後はかなり差が開いていき、近年では他の主要国とも極端に大きな差があります。

時間あたりの購買力平価では、ドイツとフランスの水準が高く、さらにイタリアもアメリカと同程度であるというのがとても印象的です。

5. 雇用者労働時間あたり付加価値の国際比較:購買力平価換算値

続いて、雇用者労働時間あたり付加価値の購買力平価換算値について、国際比較してみましょう。

雇用者 労働時間あたり付加価値 購買力平価換算 2021年

図5 雇用者 労働時間あたり付加価値 購買力平価換算 2021年
(OECD統計データより)

図5が購買力平価換算値2021年の比較です。

日本は48.6ドルで、OECD31か国中23位、G7最下位でOECD平均値を大きく下回ります。

スペイン、チェコ、イスラエルなどの国々よりも劣後している事になります。

近年の傾向としては、購買力平価換算の方が日本の順位が低くなるようです。

6. 雇用者労働時間あたり付加価値の特徴

今回は、雇用者の労働時間あたり付加価値についてご紹介しました。

日本は円建てで見れば近年上昇傾向が続いてはいますが、為替レート換算でも購買力平価換算でも、先進国では低い水準という事になりそうです。

労働時間あたりで見ると、フランス、イギリスの水準が高い事が特徴的です。
今回は自営業者を除外している影響か、イタリアの水準が高いのも印象的でした。

雇用者に限定した生産性で比較しても、日本は先進国の中ではかなり劣後しつつある状況がわかりました。

仕事の価値を上げ、経済が活性化していくと良いですね。

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