039 日本経済の転換点はいつ? - 人口・GDP・平均給与の長期推移

日本の経済は長期的に停滞を続けてきましたが、人口、GDP、平均給与の長期推移と主要な出来事を照らし合わせることで、経済に変化を与える要因について考えてみます。

1. 日本の人口とGDP

前回は、日銀短観データより、販売価格DI仕入価格DI交易条件などのデータから、日本企業の経営者が値上げできない理由について考えてみました。
日本は値上げできそうなタイミングで、経済的なショックに見舞われ結局値段を下げざるを得ない、といった事が繰り返されてきたようです。
このように企業活動は、経済的な動きに大きく影響を受けているわけですね。

今回は、長期時系列データを概観して、これまでの日本経済の歩みを振り返ってみたいと思います。

日本 GDP 人口

図1 GDPと人口の長期時系列データ
(国民経済計算 より)

図1は内閣府で公表しているGDP人口の長期時系列データです。
1955年からの長期データとなります。
GDPについては1994年以前は1968SNA、1994年以降は2008SNAという異なる基準のデータを繋ぎ合わせています。

人口は1955年の時点で8900万人です。
2008年にピークの1億2800万人となり、直近の2018年では1億2600万人です。

GDPは1956年の時点で約8兆円でした。
高度経済成長期の終わる、第一次オイルショックの1973年の時点で112兆円となり17年間で約14倍となっています。

第二次オイルショックの1980年には約240兆円、バブル崩壊の1990年には約430兆円、経済的なピークとなる1997年には約534兆円となります。
その後横ばいが続きますが、2008年のリーマンショック後に約489兆円まで落ち込み、その後徐々に回復して2019年には549兆円となっています。
この間に主な出来事としては以下のようなことが起こっています。

1973年 第一次オイルショック、ドル円変動相場制への移行
1980年 第二次オイルショック
1985年 プラザ合意→バブル発生へ
1990年 バブル崩壊
1995年 阪神淡路大震災
1997年 アジア通貨危機、消費税3→5%
2001年 9.11
2008年 リーマンショック→超円高へ
2011年 東日本大震災

2. 日本のGDPの変化率

続いて、日本のGDPについて前年からの変化率を見てみましょう。
図1の傾きに相当する指標で、成長の勢いを可視化する事になります。

日本 GDP 前年からの変化率

図2 GDP成長率 (国民経済計算データ より)

図2は名目GDPの前年からの変化率です。

青がGDP、赤が1人あたりGDPとなります。

1973年までの高度経済成長期と呼ばれる時期には概ね1年に10~20%の経済成長がありました。
その後1997年頃までに向けて徐々に成長率が下がっていき、その後はゼロ近辺で上下している状況がわかります。

3. 日本の株価と平均給与

日経平均株価・平均給与・1人あたりGDP

図3 日経平均株価、平均給与、1人あたりGDP
(日本経済新聞社データ 他)

図3が日経平均株価平均給与1人あたりGDPの変遷をまとめたグラフです。
日経平均株価が左軸、平均給与、1人あたりGDPが右軸となります。
平均給与、1人あたりGDPともに1997年にピークとなり、その後減少した後、近年には持ち直している状況ですね。
2009年にリーマンショックで大きく落ち込んだこともありますが、2010年以降は上昇傾向が見られます。

それぞれの時期の具体的な数値を見てみましょう。

    日経平均 平均給与 1人あたりGDP
1955年  426円 / 20.7万円 / 9.4万円
1973年 4,306円 / 146.3万円 / 103.1万円
1980年 7,116円 / 294.8万円 / 205.2万円
1990年 23,848円 / 425.2万円 / 347.9万円
1997年 15,259円 / 467.3万円 / 423.4万円
2008年 8,859円 / 429.6万円 / 406.5万円
2018年 20,014円 / 440.7万円 / 434.1万円

2011年以降は平均給与も1人あたりGDPも増加傾向にありますが、1人あたりGDPの伸びに対して平均給与の伸びが緩やかな点が特徴的です。
過去ずっと1人あたりGDPよりも平均給与の方が高かったのですが、直近では逆転されそうな状況にまで肉薄しています。

4. 日本経済の変化とその要因

今回はまずは日本の経済指標について、長期データを見てみました。
1950年代からの長期的な変遷の中で、1990年代から明らかに停滞している状況がわかると思います。

この間起こった出来事としては、次のような事でしょうか。

・ 人口増加の鈍化→人口減少
・ 自然災害(東日本大震災など)
・ 金融ショック(バブル・バブル崩壊や金融・通貨危機など)
・ 紛争とオイルショック
・ 他国(主にアメリカ)との経済協定(プラザ合意など)
・ 国内の政策変更や規制緩和(消費税など)

これらが複合して進んでいるため日本だけ経済停滞が続いてきたのか、他にも何か見えない要因があるのかは私にはわかりません。
少しずつ経済統計を可視化しながら、私なりにも考えていきたいと思います。

皆さんはどのように考えますか?

参考:企業活動の変化

1970年代のオイルショック、1985年からのバブルとバブル崩壊を経て、1997年を転換点として日本は長期的な経済停滞へと入ったと考えられます。

特に変化したのは企業活動です。

図4 日本 法人企業 労働者1人あたり

図4は日本の法人企業について、労働者1人あたりの各種指標を1980年を100とした指数として表現したグラフです。

1997年あたりをピークにして停滞や減少している指標が多い事がわかりますね。

付加価値、平均給与はこれまで見てきた指標と符合しますし、資産のうち有形固定資産や、負債のうち借入金もこの頃から停滞傾向が始まります。

一方で、当期純利益や配当金、純資産、資産のうち有価証券他については、このあたり~2000年頃から増加傾向が始まります。

日本 資金過不足

図5 日本 資金過不足

図5は日本の家計、企業、政府、金融機関と海外の資金過不足をまとめたグラフです。

資金過不足は、可処分所得から消費と投資を行った残りで、プラスになればその分資産が運用され、マイナスになれば他の主体から調達されたことを表します。

マイナスだと資金不足(純借入)、プラスだと資金余剰(純貸出)となります。

日本の企業(赤)は1990年代初頭までは大きくマイナス(資金不足)でしたが、1998年から資金余剰側に変化します。
つまり黒字化する事になります。

家計(青)の資金余剰はその分目減りしているようにも見えます。
日本の家計はそれまでのように、大きく金融資産を増やせる主体ではなくなったことを表します。

また、政府はこの頃から急激に資金不足が増えています。
政府の負債残高が問題視されがちですが、主にこの頃から2004年頃までのバブル崩壊のリアクションとして挙動した分が、他の主要先進国よりも負債が多い分として蓄積したと理解する事ができます。

いずれにしろ、1997年を転換点として、日本の経済が大きく変化したことが良くわかりますね。

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