224 非正規労働ばかり増える日本 - 雇用形態別労働者数の推移

日本では非正規労働者が増えていると言われますが、統計データを可視化する事で具体的な変化を確認してみます。

1. 有業者とは

前回は、民間給与実態統計調査より、男女別世代別に日本の労働者数の変化についてご紹介しました。
日本は女性や高齢の労働者が増え、2012年以降緩やかに全体の労働者数が増加しています。
一方で、給与総額がそれほど増えず、各世代では1997年のピークの平均給与も超えられていない状況が続いています。

また、30代の労働者が減少していて、40代も今後減少が予想されます。
今後は徐々に高齢化しつつ、労働者数も減少局面に入っていく事になりそうです。

今回は、労働者の雇用形態別の変化を見てみましょう。
参考にする統計データは就業構造基本調査です。
就業構造基本調査では、雇用形態別の有業者数について集計されています。
有業者とは、普段の状態で仕事を持っている人を指し、就業者数とほぼ同じ意味となります。

また、今回のデータには公務員も含まれるものと思います。

有業者は次のように区分されます。
・自営業主
家族従業者
会社などの役員
正規職員・従業員
パート・アルバイト
派遣社員・契約社員・嘱託
その他

このうち非正規雇用として扱われている雇用形態は次のものです。
・パート・アルバイト
・派遣社員・契約社員・嘱託
・その他

2. 雇用形態別有業者数の推移

まずは、男女合計での雇用形態別有業者数の推移を見てみましょう。

有業者数 男女合計

図1 有業者数 男女合計 推移
(就業構造基本調査 より)

図1が日本の有業者数の推移です。

日本の場合、全体として6500万人ほどの労働者(有業者)がいることになります。
傾向としては、自営業主及び家族従業者が徐々に減っていき、パート、アルバイトや派遣社員などの非正規雇用が増えているようです。

また、正規職員・従業員も1997年をピークにして、徐々に減少しています。
1997年は、平均給与やGDPでもピークとなり、その後の停滞の起点となった年ですね。

3. 雇用形態別有業者数の変化

日本経済のピークとなった1997年と近年とで、雇用形態別有業者のシェアについて確認してみましょう。

図2 有業者数 男女合計 1997年・2017年
(就業構造基本調査 より)

図2が1997年と2017年のシェアを表したものです。

正規職員・従業員や自営業主、家族従業者のシェアが低下して、パート、アルバイト、契約社員などのシェアが増加しています。
このような非正規雇用は、1997年に19%程度でしたが、2017年には32%程度にまで増大しています。

前回も見た通り、この間男性の現役世代が減少し、女性や高齢の労働者が増加しています。

3. 男性の雇用形態別有業者数の推移

それでは、男女別でもデータを見ていきましょう。

有業者数 男性

図3 有業者数 推移 男性
(就業構造基本調査 より)

図3が男性労働者の推移です。

全体としては1997年をピークにして減少していますね。
正規職員・従業員も1997年をピークに減少しています。
自営業主も徐々に減少していますが、その代わりパート・アルバイト、契約社員などが増えています。

4. 男性の雇用形態別有業者数の変化

続いて、1997年の2017年での男性の雇用形態別有業者数のシェアを確認してみましょう。

図4 有業者数 男性 1997年・2017年
(就業構造基本調査 より)

図4が1997年と2017年の男性労働者シェアの比較です。
1997年には正規職員・従業員のシェアが68%ですが、2017年には63%と減少しています。
その代わり、パート・アルバイトなどの非正規労働者のシェアは、8%程度から18%程度へと倍増していますね。

非正規労働者は女性にフォーカスされがちですが、男性でも増加しているようです。
もちろん高齢労働者で非正規雇用の増加が多いようですが、若年世代でも増えているようです。
世代ごとの雇用形態別有業者数については、次回詳細にご紹介します。

5. 女性の雇用形態別有業者数の推移

続いて女性労働者についても見ていきましょう。

有業者数 女性

図5 有業者数 推移 女性
(就業構造基本調査 より)

図5が女性労働者の推移です。
男性よりも顕著な変化が見られますね。

まず、全体としては増加傾向が続いていますが、その内訳を見ると、家族従業者が大きく減少していて、1980年代からパート、アルバイトなどが急増しています。

正規職員・従業員は1970年代からほぼ一定ですね。
正規職員・従業員の人数がほぼ変わらず、非正規雇用が一方的に増えている印象です。

1997年からの変化を見ると、自営業主及び家族従業者が約300万人減少、正規職員・従業員が約100万人減少して、非正規労働者が約500万人増加しています。
家族従業者が非正規労働者に置き換わったような面もありそうですが、それ以上に更に非正規労働者の増加が続いているようです。

6. 女性の雇用形態別有業者数の変化

続いて、1997年と2017年での女性の雇用形態別有業者数のシェアです。

図6 有業者数 女性 1997年・2017年
(就業構造基本調査 より)

図6が女性シェアのグラフです。

家族従業者をどのように考えるかで異なりますが、ここでは正規従業員と同等ととらえます。
もちろん、無給の従業者なども存在し、非正規雇用に近い側面もあると思います。

1997年には、パート・アルバイトなどの非正規雇用は33%程(家族従業者を合わせると45%)でしたが、2017年には50%(家族従業者を合わせると53%)に増加しています。

パートやアルバイトの増加も大きいですが、契約社員が5ポイント、派遣社員が2ポイント、嘱託が1ポイントといずれも増加しているのも特徴的ですね。

7. 日本の雇用形態別有業者数の特徴

今回は雇用形態別労働者数の変化について着目してみました。

女性や高齢労働者が増加する中で、非正規雇用の労働者が大きく増加しているようです。
正規職員・従業員についてはむしろ減少していますね。
ちょうどバブル崩壊の1990や1997年あたりを転換点として、労働形態の構成も大きく変化を始めたように見受けられます。

若年世代から労働人口が減っていく中で、1人あたりの生産性と対価を向上させて対応していくのが本来の姿と思います。
しかし、日本で起こっているのは、安い仕事を安いままにして、それを安い労働力で賄おうという逆の方向性のように見えます。

今後本格的に人口減少が進み、特に働き盛りの40代が減っていきます。
このようなビジネス観のままだと労働者も困窮していきますし、事業者側も事業の継続性が確保できないようにも思えます。

労働者への対価と待遇について考えさせられる統計データと思います。

皆さんはどのように考えますか?

参考:最新データ

(2024年11月追記)

有業者数 男女合計

図7 有業者数 男女合計
(就業構造基本調査を基に作成)

2017年から2022年にかけて有業者数は増えています。
正規の職員・従業員と役員が増え、自営業主が減っているようです。

有業者数 男性

図8 有業者数 男性
(就業構造基本調査を基に作成)

図8が男性の変化です。

2017年から2022年にかけて総数がやや減少しています。
自営業主の減少によるもののようです。

有業者数 女性

図9 有業者数 女性
(就業構造基本調査より作成)

図9が女性の変化です。

2017年から2022年にかけて、正規の職員・従業員が大きく増加し、非正規の職員・従業員がやや減少しています。

全体としても増加傾向が継続しているようです。

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