280 日本はパートタイムが多い? - パートタイム雇用率の国際比較

日本は女性や高齢の労働者が増え、パートタイム労働者の割合が上昇していると言われています。各国との国際比較を通じて日本のパートタイム雇用率を確認してみます。

1. パートタイム雇用率とは

前回は、ドル換算方法の違いによる1人あたりGDPの各国比較についてご紹介しました。
日本は購買力平価換算だと、既に韓国よりも低く、為替レート換算では2021年→2022年で大きく減少しています。
いずれにしろ、日本の経済水準が主要先進国の中でもかなり低くなっているのは事実のようです。

今回は、パートタイム雇用についての各国比較をしてみたいと思います。
日本では、家計を支えるためにパートタイムで働く女性が多いと言われます。
他国と比較する事で、このようなパートタイム雇用の水準は果たして日本特有なのかどうかが相対化できるのではないでしょうか。

パートタイムも含む日本の雇用形態別労働者シェアについては、以下の記事でもご紹介していますので是非ご参照ください。
 参考記事:非正規労働ばかり増える日本
 参考記事: 男性でも進む非正規化
 参考記事: 女性労働者の働き方の変化

OECDによるパートタイム雇用(Part-time employment)の定義は、「本業で労働時間が週に30時間未満の労働者(従業員、自営業者含む)」となります。
全労働者に占めるパートタイム雇用の割合がパートタイム雇用率となります。

今回は現役世代の男女合計、次回は男性、その次は女性と順番にご紹介していきます。

 参考記事:男性のパートタイム雇用率
 参考記事:女性のパートタイム雇用率

2. パートタイム雇用率の推移

まずは、現役世代のパートタイム雇用率について、各国の推移を確認してみましょう。

パートタイム雇用率 15~64歳 男女合計

図1 パートタイム雇用率 15~64歳 男女合計
(OECD統計データ より)

図1は15~64歳の現役世代について、男女合計パートタイム雇用率を比較したものです。

オランダが突出していたり、スイスが比較的高い水準なのが興味深いです。
日本は2000年頃はカナダやドイツ、イギリスよりも低い水準でした。
他国はこのあたりからパートタイム雇用率が停滞あるいは低下傾向が続いています。
日本は逆に増加傾向が続いていて、近年では22%程度とドイツ、イギリスよりも高い水準です。

とても印象的なのが、かつてはカナダやイギリスなどの方が日本よりもパートタイム雇用率が高かったという事ですね。
多くの女性が家計の補助のためにパートタイムで働くのが日本独特の傾向なのかと思っていましたが、他国と比較すればそれほど突出しているわけではなかったようです。

ただし、近年は増加傾向が続き主要先進国で最も多い割合となっていて、他国の傾向(停滞・減少)とは異なるのも興味深いですね。
日本は高齢労働者の増加により非正規労働者が増えている面もありますが、現役世代だけ抜き取ってもこのような状況のようです。

パートタイム雇用率 全年齢層 男女合計

図2 パートタイム雇用率 全年齢層 男女合計
(OECD統計データ より)

図2は現役世代に限らず、全年齢層パートタイム雇用率を比較したグラフです。
傾向はあまり変わりませんが、高齢層の労働者が増えている日本と韓国の水準が一回り高くなっているのが特徴的です。
他国が減少・停滞傾向なのに対して、この2国は上昇傾向です。
ドイツは2004年以降、イギリスは2012年以降、フランスは1997年以降停滞・減少傾向です。

2. パートタイム雇用率の国際比較

2021年のパートタイム雇用率を、OECD各国で比較してみましょう。

パートタイム雇用率 15~64歳 男女合計 2021年

図3 パートタイム雇用率 15~64歳 男女合計 2021年
(OECD統計データ より)

図3が2021年パートタイム雇用率の比較です。

日本は21.9%で、OECD37か国中4番目に高い水準となります。
オランダがダントツの35.1%というのが特に印象的です。

次いでオーストラリア24.5%、スイス23.7%、日本21.9%、ドイツ20.9%と続きます。
日本とドイツ、イギリスが比較的近い水準というのも意外でした。
OECDの平均値が14.1%なので、これらの国はかなりパートタイム雇用率が高いようです。

フランスは13.2%、韓国は12.8%と意外と低い水準です。

3. 日本の非正規労働者

日本の雇用形態別の労働者数も確認してみましょう。

図4 日本 有業者数 男女合計 従業上の地位・雇用形態別 1997年・2017年
(就業構造基本調査 より)

図3が日本の有業者数の変化です。
家族従業者もカウントされている点にご注意ください。

大きな変化としては、経営者(自営業主、役員)や家族従業員、正規職員・従業員が減り、非正規雇用が増えています。

高齢労働者も入れると、パート・アルバイトの割合は1997年で15%程度、2017年では23%程度で20年間で8ポイント増えている事になります。

非正規雇用が増える中で、パート、アルバイトの占める割合が大きいのが特徴ですね。
他にも派遣社員、契約社員、嘱託も大きく増加しています。

男女別、世代別で見ても非正規雇用が増えている状況です。

4. パートタイム雇用の特徴

今回は、OECD各国のパートタイム雇用率についてご紹介しました。

日本は先進国でやや高い水準から、上昇傾向が続いて近年では主要先進国で最も高く、OECDの中でも4番目に高い水準に達している事になります。

他の先進国では停滞・減少傾向なのに対して、逆行するような変化がみられるのが興味深いですね。
日本の場合パートタイム雇用は、正規雇用と比べると極端に平均賃金が低いという特徴があります。

少し古いですがOECDの統計データで、パートタイム労働者のフルタイム労働者に対する時給割合が公開されていました。

フルタイム労働者に対するパートタイム労働者の時給比率 2003年

図5 フルタイム労働者に対するパートタイム労働者の時給比率 2003年
(OECD, Taxing Wages 2005を基に作成)


パートタイム労働者のフルタイム労働者に対する時給割合
OECD TAXING WAGES 2005 2003年 単位:%
96 スイス
93 イタリア
92 フィンランド
92 オランダ
85 スウェーデン
81 フランス
78 ノルウェー
76スペイン
74 オーストラリア
74 ドイツ
66 カナダ
65 イギリス
48 日本

日本は48%程度と極端にパートタイム労働者の時給が低いという事になりそうです。
パートタイム雇用率が日本よりも高いスイスやオランダはかなり高い水準で、フルタイム労働者と遜色ありません。

日本ばかりがより低賃金のパートタイム労働を増やしているという事になりそうです。

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