025 日本経済の不思議 - GDPの名目・実質と輸出依存度
フランスやイタリアなどの主要先進国や南欧諸国の経済の特徴を可視化し、日本経済の特殊性を確認してみます。
1. 主要先進国の経済の推移
前回は、主要国の名目GDP、実質GDPの成長率、輸出対GDP比、賃金対GDP比の推移を見ながら、日本と他の主要国との違いについて取り上げてみました。
今回はせっかくなので、他の国の状況についても取り上げてみます。
図1 GDP・輸出対GDP比・賃金対GDP比 フランス
(OECD 統計データ より)
図2 GDP・輸出対GDP比・賃金対GDP比 カナダ
(OECD 統計データ より)
図3 GDP・輸出対GDP比・賃金対GDP比 イタリア
(OECD 統計データ より)
まずは、G7各国です。
フランス、カナダ、イタリアのグラフを示しました。
名目GDP、実質GDPは2003年時点を100としての指数として表現しています。
輸出対GDP比(輸出依存度)、賃金対GDP比(労働分配率に相当)はその年の名目GDPに対する輸出額、賃金総額の割合を示しています。
各国とも2009年のリーマンショックで落ち込みはありますが、年々名目GDPが増加し、実質GDPが緩やかに増加しながら差が開いている状況ですね。
名目GDPに対する輸出額、賃金総額の割合については、以下の通りです。
輸出対GDP比:フランス26→31%、カナダ37→31%、イタリア23→31%
賃金対GDP比:フランス37-38%、カナダ43-44%、イタリア27-29%
イタリアが極端に賃金対GDP比が低い事がわかります。
カナダは輸出対GDP比を年々下げているようです。
また、イタリアは名目GDPが15年間で27%増加していますが、実質GDPはほとんど増えていません。
インフレにより、実質GDPが増加していくほどは成長していないようです。
また、イタリアは個人事業者が多い分だけ、賃金のGDPに占める割合は低いようです。
2. 南欧諸国の経済の推移
図4 GDP・輸出対GDP比・賃金対GDP比 ポルトガル
(OECD 統計データ より)
図5 GDP・輸出対GDP比・賃金対GDP比 ギリシャ
(OECD 統計データ より)
G7以外の特徴的な国も見てみましょう。
今回は、ギリシャとポルトガルのグラフを示します。
ポルトガルは比較的低成長で、2008年から成長の鈍化がみられますが2012年あたりから反転して少しずつ成長しています。
この間輸出対GDP比が27→44%と大きく伸びています。
逆に賃金対GDP比は38→35%と他の国と比べて落ち込みが大きいようです。
ギリシャはもっと不安定な印象ですね。
2008年までは順調に成長しているように見えますが、その後は大きく落ち込み、実質GDPのレベルではまだ2003年の水準まで回復していません。
どちらの国も近年輸出の割合を大きくしており、直近ではそれぞれ44%と36%です。
3. 日本経済の特殊な点
前回と今回で、色々な国についてGDPに対する輸出・賃金の割合と実質・名目GDPの成長率についてデータを見てみました。
日本の名目GDP、実質GDPの伸び(2003年→2018年)については、OECD36か国中で名目GDPが6.8%で35位(36位がギリシャ)、実質GDPが13.8%で33位です。
実質GDPについては前回見た通り、デフレ型経済成長で名目GDPよりも実質GDPの伸びの方が大きいといういびつな関係です。
実質GDPが成長しているといっても、その成長率は先進国で低い水準ですね。
輸出対GDP比は先進国で低い内需型経済で、賃金対GDP比は他国並みと言えそうです。
賃金対GDP比はいわゆる労働分配率に相当します。
日本の労働分配率は殊更低いわけではない事もわかります。
日本の経済状態はこのように特殊な状況が続いてきました。
デフレだから、消費税があるから、少子化が進んでいるから、など色々と意見の分かれるところではないでしょうか。
これまで統計データを見ていて思うのは、その理由の1つは企業が投資を増やさず、人件費を抑制し、社内留保や配当金、投資有価証券に充てている、という日本企業の特徴にあるように思います。
その結果、労働者の所得も上がらず民間消費が停滞し、仕事が増えないという循環が、経済停滞を長引かせているように思います。
もう1つ考えられるのは、企業活動のグローバル化に伴う国内経済の空洞化も大きいのではないでしょうか。
海外進出によって現地生産、現地販売が進めば、その企業の業績は上がるかもしれません。
しかし、その分の仕事が国内に還流しなくなり、国内の労働者や経済は取り残されます。
海外進出(対外直接投資)した企業は、現地法人からの配当金などで営業外収益がプラスになります。
企業の付加価値が上がらなくても、純利益が大きく増加している大きな要因がこの対外直接投資の拡大です。
国内経済の空洞化は、「何故工業立国日本では輸出が極端に少ないのか」という疑問とも符合するように思います。
次回以降で、企業のグローバル化について詳しく考えていきたいと思います。
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