017 お金以外の豊かさとは!? まとめ編
OECDのWell-beingについての指標を総合し、日本の立ち位置を確認してみます。
1. 金融資産の国際比較
前回までにOECDの統計データを見ながら、「お金以外の豊かさとは何か」を考えてきました。
平均寿命、自然環境、労働環境などについても日本の立ち位置を確認しました。
また、全ての指標について、平均給与との相関も見てきました。
概ね平均給与=経済的な豊かさと、それぞれの指標とでは正の相関が見られる結果でした。
次のような統計結果も見てみましょう。
図1 平均給与-金融資産
(OECD統計データ より)
図1は、平均給与と金融資産のバブルチャートとなります。
横軸に平均給与[ドル]、縦軸に金融資産[ドル]、バブルの大きさが人口を表します。
金融資産(原文は、Household Net Financial Wealth)は、SNA(System of Natioal Accounts)にて定義されている指標で、現金・預金、株式や債券以外の有価証券、授受可能な債権、家計負債の正味額です。
ドルに変換した金額です。
平均給与に対して、明らかな正の相関が見られます。
突出しているのはアメリカ(176,076ドル)ですね。
1世帯あたり、2000万円程度の金融資産を保有しているという事になります。
日本(97,595ドル)も平均給与の割りには高い水準となります。
平均すると1世帯で1,000万円以上の金融資産がある事を示します。
OECD全体の内4番目の高水準です。
逆に、ルクセンブルク、アイスランド、ノルウェーなど、給与水準の高い国々でも、それほど高くない水準の国もありそうです。
2. 各国の豊かさの特徴
さて、今まで国際比較をしながらお金以外の豊かさについて見てきました。
なんとなく、日本の国際的な位置づけも見えてきたのではないでしょうか。
あくまでもOECD35か国中での比較となりますが、次の事が言えそうです。
日本人の多くは、
「中程度の給与水準」のわりには
「長寿命」で「教育水準が高く」、
「長時間働く人が多い」ながらも「失業率が低く」「比較的安心して仕事ができる」労働環境があり、
「そこそこ安心・安全」で「それなりに良い環境」で生活できているが、
「現在の生活にはあまり満足していなく」て「政治的な関心が低い」人が多けれど、
「金融資産を多く持つ」人が多い。
ちなみにアメリカ人を表現してみると次のような感じですね。
「高水準の給与の人が多い」割には、
「それほど寿命が長くなく」て「思ったほど教育水準た高くない」けれども、
「それなりの時間労働に費やし」て「若干不安定ながらもそこそこ安心して仕事ができる」労働環境があり、
「安心・安全とは言い難い」住環境と、「それほど悪くない」自然環境の中で暮らし、
「それなりに満足」で「それなりに政治的にも関心がある」人が多く、
「最も多くの金融資産」を持っている。
日本と比較されることの多い韓国は次のような感じでしょうか。
「まだまだ給与水準は高くない」が、
「比較的寿命が長く」「高い教育水準」を誇り、
「長時間がむしゃらに働き」、「失業してもすぐに次の仕事が見つかる」ような労働環境で、
「安心・安全とは言い難い」住環境、「住みやすいとは言い難い」自然環境の中で暮らし、
「現在の生活にはあまり満足しておらず」「政治的な関心が強い」人が多いが、
「あまり多くの金融資産を所持していない」人が多い。
あくまでも、平均値で見ているだけですので、実際の状況とは異なる部分も多いと思いますが、中々面白い傾向と思います。
各国それぞれで比較してみてわかる事は、全ての項目を高水準で満たしている国は無いという事です。
いずれ各国の項目ごとのレーダーチャートをまとめたいと思います。
3. 豊かさの国際比較
今まで、OECD各国の豊かさ(Well-being)に関する指標をご紹介してきました。
所得に関する項目: 「平均給与」「金融資産」
健康に関する項目: 「平均寿命」「生活満足度」「余暇時間」
労働に関する項目: 「労働市場の不安定さ」「就業率」「長期失業率」「平均労働時間」「長時間労働率」
環境に関する項目: 「大気汚染度」「水質」「安全度」「殺人件数」
教育に関する項目: 「教育水準」「学業スコア」
政治に関する項目: 「投票率」「政治への関与度合」
図2 平均給与-総合ポイント
(OECD統計データ より)
このシリーズで最後となりますが、図2に平均給与に対する総合ポイントのバブルチャートを示します。
今まで見てきた全ての項目(Well-being)についてOECD 35か国での偏差値を取り、それらを全て合計した数値となります。
数字が大きくなるほど悪化するようなネガティブな項目については最大値との差分を取ってからの偏差値としています。
お金以外の評価項目も数値化し、豊かさを総合して比較する指標とも言えると思います。
正の相関が認められますが、デンマーク、ノルウェーのあたりを頂点にして、若干への字型にも見えますね。
経済的な豊かさの増加に対して、頭打ちになっているにも見えます。
ただし、日本はまだ右肩上がりの途上にあり、OECDの中でも平均的なポジションであることもわかりますね。
必ずしもこの数値が国家の優劣を示すものではありませんが、一つの参考にはなると思います。
1位はデンマーク(1037.3)、2位はノルウェー(1029.5)、3位はスイス(1021.4)、4位はスウェーデン(1015.8)、5位はオランダ(1014.7)です。
日本は924.7で、18位という結果でした。
北欧諸国の数値が高い事が目を引きますね。
4. Well-beingの特徴
今回までに、OECDのWell-beingについて各項目の国際比較をしてきました。
今回は最終的な総合値の国際比較をしました。
すべての項目で、平均給与との相関を確認し、多くの項目で強い関係がある事がわかりました。
ここで言えそうなおは、必ずしも豊かさはお金だけではない、だけどお金があった方が豊かな生活を実現しやすいという結論になりそうです。
日本は現在(2019年時点)のところ、先進国では平均並かちょっと良いくらいの豊かさと言えそうです。
ただ、この平均給与は他国は成長する中で、日本だけ停滞しています。
このまま給与水準が先進国の中で低下していく事が続けば、相対的に様々な豊かさも失われていく可能性も示唆されているのではないでしょうか。
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<ブログご利用の注意点>
・本ブログに用いられる統計データは政府やOECDなどの公的機関の公表しているデータを基にしています。
・統計データの整理には細心の注意を払っていますが、不整合やデータ違いなどの不具合が含まれる可能性がございます。
・万一データ不具合等お気づきになられましたら、「お問合せフォーム」などでご指摘賜れれば幸いです。
・データに疑問点などがございましたら、元データ等をご確認いただきますようお願いいたします。
・引用いただく場合には、統計データの正誤やグラフに関するトラブル等には責任を負えませんので予めご承知おきください。
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