021 続・サラリーマンの貧困化 - 企業規模による給与分布
日本の労働者の所得階級別分布について、企業規模別の変化を可視化してみます。
1. 中小企業の男性労働者の給与分布
前回は各国の税収について整理してみました。
今回は、中小企業と大企業の給与格差についてもう少し詳細に見てみたいと思います。
以前、サラリーマンの貧困化について触れてみました。
参考記事:サラリーマンの貧困化
参考記事:働き盛りが貧困化する日本
以前の記事で取り上げたのは、サラリーマン全体として平均給与が減っており、1990年代の水準に比べると低所得化しているという事でした。
今回は、中小企業と大企業との給与の違いについて見ていきたいと思います。
今回取り上げるのも民間給与実態統計調査です。
具体的に企業規模ごと、所得階級ごとの分布の変化を見ていくと、色々と傾向が掴めるかもしれませんね。
まずは、中小企業の男性労働者から見てみましょう。
図1 給与所得者数 中小企業 男性
(民間給与実態統計調査 より)
図1は中小企業の男性労働者について、所得階級別の分布をグラフ化したものです。
1999年(青)と2017年(赤)での比較です。
企業規模は資本金1億円未満+個人を中小企業、1億円以上を大企業としています。
厳密には業種によって、区分する資本金の金額が変わるのですが、今回はざっくりと1億円で区切っています。
平均給与で見ると、502.7万円から459.5万円に、約43万円下がっています。
給与所得者数は、約1,260万人から約1,470万人と210万人程増えています。
分布の変化を見てみると、600万円以下の階層で人数が大幅に増えていますが、600万超えの階層では減っています。
2,500万超が若干ながら増えているのも印象的ですね。
2. 大企業の男性労働者の給与分布
続いて、大企業で働く男性労働者の分布を見てみましょう。
図2 給与所得者数 大企業 男性
(民間給与実態統計調査 より)
図2が大企業の所得階級別の給与所得者数のグラフです。
図1の中小企業のグラフとも比較しながら眺めてみると色々な発見がありそうです。
平均給与は676.0万円から652.0万円に、約24万円下がっています。
実は大企業でも平均給与が減っているというのは意外ですね。
大企業と中小企業の平均給与差は1999年で173.3万円ですが、2017年では192.5万円と大きくなっています。
つまり、大企業と中小企業の格差が開いている事になります。
次に所得者数の変化を見てみましょう。
大企業の男性労働者は、約999万人から約965万人と、34万人程減っています。
大企業で働く人数は減っていますが、中小企業で働く人数が増えているという違いがある事になります。
全体の中で中小企業で働く人数の割合は、1999年で55.8%、2017年で60.4%と5ポイント近く増加しています。
所得階級の分布状況も見てみましょう。
大企業の場合は、300万円以下の階層で人数が増えていますが、300万超えの階層で軒並み人数が減っています。
高所得者層の人数が減り、中~低所得者層の人数が増えている状況ですね。
男性の労働者は中小企業で増え、大企業で減っています。
ただし、中小企業は大企業よりも給与水準がかなり低いわけですね。
そして、中小企業も大企業も給与水準が低下しています。
3. 女性労働者の給与分布
図3 給与所得者数 中小企業 女性
図4 給与所得者数 大企業 女性
次に女性のデータを見てみましょう。
中小企業も大企業も大幅に人数が増えています。
中小企業では、約794万人から約944万人に、150万人程増えています。
大企業では、約364万人から約478万人に、134万人程増えています。
男性と違って、中小企業も大企業もほとんどの所得階層で人数が増えていますが、特に200万円以下の階層での増加が大きいようです。
平均給与では中小企業では253.3万円から253.4万円とほぼ変化が無いのに対して、大企業では299.1万円から310.3万円と11.2万円増えています。
中小企業と大企業との所得差は、1999年で45.8万円ですが、2017年では56.9万円と増加しています。
男性ほどではありませんが、中小企業と大企業との格差は開いていると言えそうですね。
4. 労働者の所得分布の特徴
今回は、男女別、企業規模別で見た労働者の給与分布についてご紹介しました。
日本全体としては、平均給与がやや減少し横ばい傾向が続いてきました。
その中で、次のような変化が進んでいた事になりそうです。
① 企業の規模関係なく、男性の給与水準が低下している
② 大企業よりも平均給与の低い中小企業に労働者が移っている
③ 平均給与の低い女性の労働者が増えている
もちろん、働き方の多様化が進み、雇用形態も変化している中での統計結果となります。
労働世代の男性の人口が減っていますので、必然的に高齢者や女性労働者が増えているという影響も考えられそうですね。
それでも高所得者層が減り、低所得者層が大きく増加している事がよくわかりました。
中小企業と大企業の給与格差は大きく、しかも開いている実態もわかりました。
このような中で、中小企業の経営者としては、どうすれば良いのでしょうか。
① 給与が低いまま、皆が我慢しながら事業を続ける
② そのような労働環境から従業員を開放して、より高収入な環境に労働力の移動を促す(廃業、リストラなど)
このような2択を迫られていると感じる経営者さんも多いのかもしれません。
私は、次のような選択肢を選んでも良いのではないかと思います。
③事業内容を高付加価値に変化させ、従業員の給与を上げていく
皆さんはどのように考えますか?
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