005 内部留保は衰退への道? 分配編

1. 付加価値分配の変化とは!?

前回は、法人企業統計調査のうち、企業全体の「損益」を示すフロー面を取り上げました。

日本企業は売上高が上がらないながらも、原価低減により営業利益を確保し、税率の低下も相まって、当期純利益が増大しています。
さらに、そのうち配当金を増やしながら、社内留保を増やしていくという企業の姿勢を見てきました。

今回は、「法人企業統計調査」から、「付加価値」の内訳を詳細にみていく事にします。
付加価値は、売上高から外部購入費用を差し引いたものですね。
私たち経営者から見れば、「粗利」に近いものです。
経済指標としてよく耳にするGDP(国内総生産)も、日本全体の付加価値を合計したものですね。

日本 法人企業 付加価値分配

図1 日本 法人企業 付加価値分配 全産業
(法人企業統計調査 より)

図1が付加価値の分配についてのグラフです。
棒グラフの合計値が付加価値の総額、水色がそのうちの人件費、オレンジが支払利息等、紫色が動産・不動産賃借、緑色が租税公課、黄色が営業純益を示します。
営業純益=営業利益-支払利息等です。
単位は[兆円]です。

まず目につくのが、付加価値がほぼ横ばいでほとんど増えていないという事です。
昨今「失われた20年」と言われるように、日本経済は停滞が続いていると言われますね。
日本の経済停滞とは、GDP=付加価値の停滞に他なりません。
それが、企業部門の付加価値停滞としても確認できるわけです。

次に、営業純益の増大です。
1997年の時点で16.1兆円だった営業純益が、直近の2017年では61.2兆円となり、35.1兆円増加(3.8倍)しています。
営業純益は営業利益-支払利息等となっておりますが、支払利息等は1997年の17.0兆円から6.2兆円に激減しています。
支払利息の減少は、以前ご紹介した通り借入金の停滞や、金利の低下などが考えられそうですね。
この支払利息の寄与も大いにありますが、それ以上に営業純益が増大しているのです。

更に気になるのが、水色の人件費がほぼ横ばいである事です。
人件費には、役員や従業員の給与と、福利厚生費が含まれます。
付加価値に対する人件費の割合を折れ線グラフ(赤色)でプロットしてみました。
いわゆる労働分配率と呼ばれるものですね。

1997年で73.7%ですが、直近の2017年では66.2%と実に7ポイント以上も下がっています。
2008年、2009年のリーマンショック前後で一度急激に上がりますが、趨勢的に減少していることがわかります。
人件費を増やさずに利益を増やしている、逆に言えば付加価値総額に対する人件費の割合を減らしているわけです。

支払利息が激減している背景についても考えてみましょう。
ここで考えられるのは、①企業の借り入れそのものが減少している、②金利が下がっている、という2点でしょうか。
金利については、後日考えるとして、企業の借り入れについて少し取り上げてみます。

2. 企業が借金をしなくなった!!

法人企業統計調査 貸借の中から、固定負債の中の長期借入金、流動負債の中の短期借入金を抜き出してみます。

日本 法人企業 借入金 推移

図2 日本 法人企業 借入金推移
(法人企業統計調査 より)

長期借入金はほぼ横ばいで推移していますが、短期借入金については趨勢的に減少を続けています。
借入金合計で見ると、近年では増加しつつありますが、ピークと比べると実に100兆円減少していることがわかります。

今まで見てきた通り、内部留保が積みあがっている状態ですので、運転資金などの資金需要が減り、借入金が減少しているという事なのでしょう。
資本主義経済の仕組みは、事業者が借入をおこして、投資を行い、生産性を向上させて、付加価値や利益を増大させるというものです。
借入=融資は、現代の貨幣感で言えば、信用創造と言われる通り、経済の中で流通する貨幣を生み出す行為です。
借入金を増やす程、経済の中で流通する貨幣が増えるという事になります。

その借入金が、20年間で100兆円減少していますので、日本経済全体から100兆円が消失してしまった事を意味します。
やや家計的な感覚から乖離しますが、企業が借入金を増大させながら、事業投資を進め、ビジネスを大きくして利益を増大させる事が、資本主義経済の本来の成長の仕方ですね。
借入金の分だけ、経済全体のパイが大きくなるとも言えます。

日本の経済では、企業部門の余力が増える一方で、労働者の低所得化が進んでいます。
消費者でもある労働者の所得が減れば、消費も減るのは当然ですね。

今後継続的に豊かになっていくには、少しずつでも労働者の所得が上がっていく事が必要と思います。
企業部門の状況を見る限りでは、それが可能なのではないでしょうか。

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