056 家計消費とGDPの関係 - 最大の支出項目は何か?
GDP支出面で見ると、家計最終消費支出はどの国でも最大項目ですが、所得水準の高い国ほどその割合は小さい傾向もあるようです。
1. 1人あたりGDPの国際比較
前回は、GDP支出面の項目ごとの推移をご紹介しました。
日本ではGDPの約55%程度が家計最終消費支出ですが、近年は横ばいで個人の消費が停滞していることが分かりました。
その代わり増えているのが、政府最終消費支出となります。
GDP支出面で最大の項目でもあり、国民生活の豊かさを表すともいえる家計消費ですが、日本の状況は先進国の中でどのような位置づけなのでしょうか。
消費増税に続いてのコロナショックで、ますます消費が冷え込むと言われる中で、現在の日本の消費の状況を見てみましょう。
図1 1人あたりGDP(名目)
(OECD統計データ より)
まず、GDPから見ていきましょう。
図1はOECD各国の1人あたりGDP(名目)です。
赤が2013年、青が2018年を表します。(数値は2018年の値です)
各国のGDPをその年の人口で割り、購買力平価換算した数値となります。
日本は41,300ドルです。
OECD36か国中21番目(2013年は18番目)の水準です。
G7平均が49,300ドル、OECD平均が47,600ドルですので先進国の中では水準が低い方になります。
増加率も6%程度で、他の国が概ね15~30%程度増加している中で低い成長率となっています。
この統計では、日本は既に韓国にも抜かれている状況ですね。
購買力平価によるドル換算は、アメリカの物価で揃えた場合の、数量的な経済規模を共通通貨ドルで比較する事になります。
購買力平価は、通貨コンバータであり、空間的デフレータと呼ばれているようです。
2. 家計消費支出の国際比較
図2 1人当たり家計消費(名目)
(OECD統計データ より)
図2は1人あたりの家計消費(Final Household Consumption)です。
日本は22,400ドルです。
OECD36か国中で21番目(2013年は12番目)の水準です。
G7平均が28,400ドル、OECD平均が23,700ドルなのでやはり先進国としては低い方の水準に属します。
GDPと同様に各国が概ね15~30%の増加がある中で、日本だけ変化がありません。
(よく見るとチリも同様です)
家計消費が停滞し、政府支出が増えてGDPが伸びているという事がここでも確認できますね。
もう一つの支出項目である総資本形成(投資)はむしろ減少しています。
日本のGDPが増えているのは、政府最終消費支出の増額分の寄与が大きいという事になります。
3. 1人あたりGDPと家計消費の関係
GDPに占める家計消費の割合を国際比較してみましょう。
図3 消費/GDP割合
(OECD統計データ より)
図3が2018年のGDPと消費の状況をまとめたグラフです。
青が1人あたりGDP、赤が1人あたり家計最終消費支出です。
1人あたりGDPが大きい順に並べています。
緑色の点が各国のGDPに占める家計消費の割合です。
概ね40~60%の間の数値となり、OECDの平均値としては52%となります。
日本の割合はこの統計では54%となりますので、先進国としては標準的な状況となります。
各国の消費/GDP割合を線形近似すると、GDPが高いほど家計消費の割合が減る傾向が確認できます。
個人の消費が経済を牽引すると言われるアメリカは約66%が家計消費と、1人あたりGDPの大きさの割には大きな値となっています。
4. GDPと消費の特徴
今回はGDPの最大項目である家計最終消費支出について着目してみました。
他の先進国では家計消費もGDPも直近5年間で15~30%増大しているのに対して、日本だけ個人消費が停滞(ほぼゼロ成長)しGDPも6%程度しか増加していません。
労働者の給与が上がらなければ、消費が停滞するのも道理です。
消費が停滞すれば、モノやサービスが売れなくなりますので、企業はさらにコスト削減を進め、労働者の給与が削られていくという循環になっているようにも見受けられます。
参考記事: サラリーマンの貧困化
皆さんはどのように考えますか?
参考:1人あたりGDPの推移
(2023年11月追記)
1人あたりGDPの推移を見てみましょう。
図4 1人あたりGDP 名目 購買力平価換算
(OECD統計データより)
図4が1人あたりGDPの購買力平価換算値の推移です。
日本は右肩上がりの成長が続いていますが、2012年頃からその成長度合いが緩やかになっています。
他国との差が大きく開いている状況ですね。
参考:現実個別消費
家計最終消費支出は、家計が支出する金額です。
政府最終消費支出は政府が支出しますが、受益者は全て国民(家計)です。
この中でも防衛や治安維持など国民全体が消費する集合消費支出と、医療費の給付など各家計が個別に消費する個別消費支出に分かれます。
家計最終消費支出に政府最終消費支出の内個別消費支出を加えたものが、現実個別消費と呼ばれます。
現実個別消費の方が、現実的な国民の消費水準が把握できることに、より具体的な豊かさを比較できますね。
図5 現実個別消費 1人あたり 購買力平価換算
(OECD統計データより)
図5が現実個別消費の人口1人あたりの推移です。
日本(青)はやや低めながらも2010年代初頭までは他国と同様に推移しますが、その後横ばい傾向となっていて、他国との差が広がっています。
図6 現実個別消費 1人あたり 2021年 名目 購買力平価換算
(OECD統計データより)
図6が2021年の1人あたり現実個別消費の比較です。
日本は28,262ドルで、OECD38か国中21位、G7最下位で、OECD平均値をやや下回ります。
アメリカとは2倍近くの差がついていますが、ドイツやイギリス、フランスとの差もだいぶ大きいようです。
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