157 安くなった日本人 - 平均給与の国際比較

日本の経済は長期間停滞が続いたとされますが、特に平均給与が一時期より目減りしている事が特徴的です。国際比較により、日本の立ち位置の変化を確認してみます。

1. 平均給与とは

前回は、民間企業正味資産にフォーカスしてみました。
バブル崩壊以降、日本の民間企業の正味資産は変わっていません。
日本の企業は、生み出す付加価値(GDP)が殆ど変わらず、従業員の給与も停滞しています。
一方で、海外展開や金融投資を進める事で、営業外収益が増え、利益が上がるようになりました。
それらを株主への配当や、社内留保として蓄積していますが、国内への設備投資は増やしていません。

今回は改めて労働者の平均給与のデータを確認してみたいと思います。

OECDのデータでは、Average Annual Wagesというデータベースで、各国の自国通貨建てでの平均給与が公開されています。

これによれば、平均給与とは次のように計算しているそうです。

国民経済計算(National accounts)に基づく賃金・俸給(Wages and salaries) を、経済全体の平均雇用者数で割り、全雇用者の週平均労働時間に対するフルタイム労働者の週平均労働時間の割合を掛けることで得られる。」

つまり、計算式にすると次のような計算となります。

平均給与 = 賃金 ÷ 労働者数 xフルタイム労働比率

フルタイム労働比率 = フルタイム労働者の週平均労働時間 ÷ 全雇用者の週平均労働時間

フルタイム労働比率とは、パートタイム労働者の労働時間をフルタイム相当働いたと見做す調整を行う係数だと理解すれば良いのではないでしょうか。

2. 平均給与の推移

まずは、平均給与の推移を確認してみましょう。
経済指標の中で、労働者の給与の変化が最も重要な指標の1つと思います。

平均給与 名目

図1 平均給与 推移 名目 ドル換算
(OECD 統計データ より)

図1が、OECD各国の労働者の平均給与(Average annual wages)について、ドル換算値をグラフ化したものです。

購買力平価による換算値は正確な実態を表しているとは限らないため、本ブログでは為替レートによるドル換算値を基本とします。
為替レートの推移を頭に思い浮かべながら眺めていただければ幸いです。

日本(青)は、1995年頃に一度ピークを迎え、先進国の中で極めて高い水準に達していたことがわかります。
その後ほぼ横ばいで推移しているうちに、他国に追い抜かれたり、追いつかれたりしていますね。

直近の2019年ではOECDの平均値をも下回り、中程度の立ち位置に埋もれていることがわかります。
為替レートによるドル換算値なので、どうしてもグラフがジグザグして見難いですが、傾向は見て取れますね。

2. 平均給与の国際比較:1997年

推移グラフだけではわかりにくいので、各年ごとに切り取ったグラフを眺めていきましょう。

まずは日本経済のピークとなった1997年のグラフです。
この年は、日本円での平均給与でピークとなった年です。
(為替の影響もあり、ドル換算だと1995年がピークです)

平均給与 名目 1997年

図2 平均給与 1997年 名目 ドル換算
(OECD 統計データ より)

図2が1997年のグラフです。

日本(青)は38,823ドルで、OECD35か国中で3位の高水準でした。
OECDの平均値がこの時22,468ドルですので、その1.5倍以上もの高水準ですね。

アメリカ(赤)やドイツ(緑)よりも大分差をつけて、G7の中でも第1位となっています。

3. 平均給与の国際比較:2010年

もう少し時間の進んだタイミングの順位も見てみましょう。

平均給与 名目 2010年

図3 平均給与 2010年 名目 ドル換算
(OECD 統計データ より)

図3が2010年のグラフです。
2010年は2008年のリーマンショックから経済が落ち込み、回復の兆しが見えてきた時期ですね。
日本では、円高が進んでいて、ドル換算値ではやや数値が高めの時期です。

この時日本人の平均給与は、48,305ドルです。
OECD35か国中で13位にまで順位を落としています。
G7でもカナダとアメリカに抜かれ、イギリス、フランス、ドイツに追いつかれつつありますね。

OECDの平均値は39,639ドルで、平均値に大分近づいてきました。

4. 平均給与の国際比較:2019年

平均給与 名目 2019年

図4 平均給与 2019年 名目 ドル換算
(OECD 統計データ より)

そして、図4が直近の2019年のグラフです。

日本は40,384ドルで、OECD35か国中20番目、G7で6番目、OECD平均値41,457ドルすら下回る水準にまで落ち込んでいます。
OECDはいわゆる先進国と呼ばれる国々で構成されていますが、その中で平均以下の状況です。

5. 平均給与の名目成長度合い

つづいて、自国通貨ベースでの平均給与の伸び具合を比較してみましょう。

平均給与

図5 平均給与 名目値
(OECD統計データ より)

図5が1997年を基準(1.0)とした平均給与の倍率です。
自国通貨ベースの数値から計算した数値です。

日本はピークとなった1997年から見ると目減りして横ばいの状況です。
他国は基本的に右肩上がりで成長している事がわかります。

カナダ、ドイツ、イタリア、フランスで2倍前後、イギリス、アメリカは2.5倍以上です。

日本は確かに1990年代に極めて高い水準に達したわけですが、その後は停滞が続いています。
他国はその間にしっかりと成長しているわけですね。

6. 平均給与の実質成長度合い

つづいて、物価の影響を除いた実質の成長度合いです。

平均給与 実質値

図6 平均給与 実質値
(OECD統計データ より)

図6が実質値の2000年を基準(1.0)とした倍率です。
やはり日本は横ばいが続いています。
経済が不安視されているイタリアも同様に停滞が続いているのが特徴的ですね。

他の国々は実質的にも成長が続いています。

7. 平均給与の特徴

今回は各国の平均給与について比較してみました。

日本は平均給与で見ると、かつては先進国の中で極めて高い水準に達していたわけですが、現在は普通より少し下の先進国にまで立ち位置を低下させてしまった事になります。

国内で経済が停滞しているうちに、成長が当たり前の世界の中では相対的な水準が低下している事になります。
人口が多いので、まだ世界第3位の経済大国ではありますが、1人あたりの指標で見た時の国際的な立ち位置をもっと意識すべきかもしれませんね。

また、平均給与については、比較的低所得な女性や高齢の労働者が増えたので平均値が上がらないといったご指摘も良くいただきます。
確かにそのような面もあると思いますが、そもそも男性労働者が各世代でピーク値よりも減少しているという事実についてはあまり知られていないようです。

平均給与 男性

図7 日本 平均給与 男性 年齢階層別
(民間給与実態統計調査 より)

図7は男性の各世代の平均給与の推移です。
どの世代でも1997年をピークにしていったん減少し、2010年から上昇傾向となっていますが、ピーク値を超えられていません。
当時からすれば、目減りした状態が続いている事になります。

皆さんはどのように考えますか?

参考:最新データ

(2023年9月追記)

平均給与 名目 為替レート換算

図8 平均給与 名目 為替レート換算
(OECD統計データより)

図8が最新の2022年まで平均給与の為替レート換算値を延長したグラフです。

日本は停滞傾向が続いた後、2021年→2022年で為替レートが円安に大きく振れたこともあり、2022年はドル換算値で大きく減少しています。
他の主要先進国も為替レートの変動を受けやや減少している傾向です。

平均給与 名目 為替レート換算 2022年

図9 平均給与 名目 為替レート換算 2022年
(OECD統計データより)

図9が2022年の平均給与について、OECD各国の水準を比較したグラフです。

日本は34,39ドルで、OECD34か国中21番目、G7中6番目で韓国を下回り、OECD平均値を大きく下回ります。
既にアメリカの半分未満で、ドイツやフランスとも大きな差が開いています。
為替レートが134円/ドル程度(年平均)まで円安になったことが大きな要因ですが、それだけ国際的に安くなったことを示す事になります。

平均給与 名目 購買力平価換算

図10 平均給与 名目 購買力平価換算 2022年
(OECD統計データより)

図10は購買力平価にてドル換算した平均給与の比較です。
購買力平価で換算すると、新興国ほど高めの数値となる面もあり、日本の順位はさらに下がります。

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