019 切削:5軸加工機って何?
切削加工の先端技術である5軸加工を実現できる5軸加工機の特徴についてご紹介します。
1. 5軸加工機とは?
切削加工機械の中でも、最先端の加工機の1つが5軸加工機です。
マシニングセンタの形態の1つですが、一般的な3軸加工機よりも優れた点が多いため、5軸加工機として別枠で捉えられることも多いですね。
今回は5軸加工機とはそもそもどのようなものが、何ができるのかをご紹介しましょう。
上図は、一般的な3軸加工機(左)と、5軸加工機(右)の内部構造の違いを説明したものです。
3軸加工機は、これまでもご紹介してきた通り、素材を固定するテーブル面と、エンドミルを回転させながら動く主軸を備えるシンプルな構成です。
5軸加工機は、更にこのテーブルがA軸とC軸という回転軸中心に回転できる機構を備えています。
上図右は、5軸加工機でも典型的なクレードルタイプを描いていますが、各メーカーで様々な機構の5軸加工機が出されています。
2. 5軸加工機はどうやって動く?
5軸加工機はこのような機構を備えている事で、どのように動くのでしょうか?
上図は5軸加工機の典型的な動作と加工方法を表現したものです。
5軸加工機の典型的な使い方は、左側のような固定5軸加工です。
素材を加工したい方向に回転させ固定した上で、主軸を動かし加工します。
その角度で加工が完了したら、そのまま次の角度に回転して・・・と繰り返すことで多面を段取替えなしで加工し続けられることになります。
多面体の加工や、斜め方向からの加工などを1回の段取で行うことができますので、複雑な形状の加工でも大幅に工程を短縮できることになります。
中央の同時5軸加工とは、固定5軸加工のようにある角度でテーブルを固定するのではなく、主軸とテーブルが連動して動く加工です。
インペラやブレード加工など、同時5軸加工でないと作れない形状もあります。
Youtubeなどで5軸加工のサンプル動画などをご覧になった方も多いと思いますが、非常にダイナミックな動きをしますね。
当然、そのNCプログラムを作るのは非常に高度なCAMと職人の技術が必要となります。
5軸加工機の中には、上図右側のようにC軸を高速で回転させて、まるで旋盤のように使えるものも存在します。
円筒形の部品などは、旋削加工と切削加工を1つの機械、1回の段取りで実現できるため、場合によっては非常に生産性の高い加工を実現できることになります。
3. 5軸加工で何ができる?
5軸加工機械は複雑な形状を加工できる優れた機械ですが、具体的にはどのようなものに用いられるのでしょうか?
少しだけ具体例をご紹介しましょう。
典型的なのは、上図のような航空機部品です。
航空機部品は極限まで強度を確保した上での軽量化が計られるため、複雑な形状が多いのが特徴ですね。
曲面や斜面、斜め穴などが多いです。
このような部品を製作するのに、一般的な3軸加工機を使っていては大変です。
アンダーカットによる削り残し部分を考えながら、何度も段取替えをして加工する事になります。
また、形状が複雑なため、固定する方法も工夫しなければいけません。
場合によっては、固定するための治具を切削加工で削り出す場合なんかもあります。
5軸加工であれば、テーブルにとりつく面以外の5面はすべて1回の段取りで加工する事が出来ますので、大幅に工程が短縮でき、更に加工精度も確保しやすいのです。
このような、複雑形状の加工程、5軸加工機は威力を発揮します。
同時5軸加工で実現できる形状で典型的なのは、上図のようなインペラですね。
皆さんも切削加工品のサンプルなどでよく目にするのではないでしょうか。
インペラは、複雑な形状の羽が折り重なるように並ぶ形状です。
ある角度から削っても、必ずどこかしらがアンダーカットとなって削り残しが出てしまうのです。
固定5軸加工でも、何回も角度を変えながら加工する事は出来ますが、NCプログラムの作成などは困難を極めます。
このような時に用いられるのが同時5軸加工です。
5軸加工の中でも1ランク上の加工方法と言えます。
5軸全てが連動して曲面形状を削り残すことなしに、なおかつ工具とワークが干渉しないように加工するわけです。
そのためのCAMも固定5軸とは全く異なります。
同時5軸加工を使うような局面は、かなり限定的ですが、非常に強力な加工方法であることは確かですね。
4. 5軸加工機の特徴
5軸加工機は、複雑形状を加工する5軸加工が実現できる工作機械です。
このような5軸加工機を使う事で、機械部品設計の幅が拡がります。
一方で、5軸加工機は一般的なマシニングセンタ(3軸加工機)と比べると高価ですので、時間単価は高めの設定となります。
また、3軸加工機と比べると機構が複雑な分だけ機械そのものの剛性が低く、重切削を苦手としています。
必ずしも5軸加工機が万能ではない事は踏まえておいた方が良いでしょう。
5軸加工機の可能性も含めて、加工方法を踏まえた設計についてはお気軽にお問い合わせ下さい。
機械部品の設計や製作に関するお問い合わせは、お気軽に下記お問い合わせ先よりご連絡ください。
株式会社小川製作所
取締役 小川真由
< 筆者紹介 >
2004年慶應義塾大学大学院修了後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)の航空宇宙カンパニーに入社し新規航空機の開発に携わる。5軸加工を中心とした精密機械加工業者での修行を経て、株式会社小川製作所に合流。
製缶・溶接・研磨加工、精密機械部品の製造・供給、機械設計・開発支援の3つの事業を手掛ける。WEBメディアを中心に、情報発信も積極的に行う。2024年よりNews Picksのプロピッカーとしても活動。
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