064 図面:図面には何が描かれている?

図面の見方

1. 図面に記載されている事

この記事では、機械部品図面の見方を解説します。

図面の図枠テンプレートは企業により大きく異なりますが、一般的に図面に記載される内容を把握しておくと、実際に図面を見る際にスムーズに理解できるはずです。

まずは下のようなサンプル図面で、一般的な図面の全体像を眺めてみましょう。

サンプル図面
サンプル図面

上図が一般的な機械部品図面のサンプルです。

中央に描かれているのが最も重要な形状などを定義する三面図です。
図面の外枠には図面座標が記載されています。

三面図、図面座標の見方については、以下の記事も是非ご参照ください。

三面図の読み方
三面図を読めるようになろう!
図面座標
図面座標を活用しよう!

今回は三面図と図面座標の他に、どのような情報が図面に記載されているのかをご紹介していきます。

大きく次のような情報が記載されています。

・表題欄
・一般公差表
・注記
・改訂履歴
・表面粗さ

以下では個々の記載項目について詳細に解説していきます。

2. 表題欄

表題欄には部品名称や、材質、表面処理など部品の仕様を規定する重要な情報がコンパクトにまとめられています。

一般的には次のような内容が記載されています。

表題欄
表題欄の例
項目説明
部品番号 (Part Number)部品の番号
部品名称 (Part Name)部品の名称
改定符号(Revision)改定符号・番号が記載 (改定欄の内容に対応)
材質 (Material)部品の材質の指示
表面処理 (Finish)部品の表面処理の指示
投影図法 (Projection)図面の投影図法 (3rd ANGLE = 三角法)
図面サイズ(Size)図面の用紙サイズ
縮尺(Scale)図面表記の縮尺
シート番号(Sheet)同じ部品番号でも複数枚のシートから構成される場合のシート番号
作成日(Date)図面(無改定)が作成された日時
作成者、確認者、認可者署名図面の作成者、確認者、認可者の署名

表題欄には管理、製作上必要な情報が凝縮されて記載されます。

上記以外にも、数量や重量、企業ロゴなどが記載される場合もあります。

3. 一般公差表

図面には一般的に、図中で指示されていない寸法へ適用する一般公差が指定されます。

JISなどの規格番号が注記などで指示される場合もありますが、一般公差表のような形で指示されることもあります。

一般公差表
一般公差表の例

一般公差表は、図中に明記されていない寸法すべてに適用される一般公差が記載されています。

この一般公差の水準によって、加工方法も変化しますので、設計の際には注意が必要です。

例えば、製缶加工品なのに500mmの寸法で±0.3mmなどの一般公差が指定されている場合は、加工不可と判断される場合もあります。

加工方法の違いによる一般的な加工精度を踏まえた上で、一般公差を設定するよう心掛けるとトラブルを未然に防げます。

4. 改訂履歴

改訂履歴には、図面が改定された履歴が記録されます。

改定履歴
改訂履歴の例

図面の表す改定符号は、表題欄の改定(Revision)部分と対応します。

また、改定内容は図中でも記載される場合があります。

改定箇所の例

上の例のように、一般的には改定した内容に近傍に改定符号をつけ、改定された内容である事が明記されます。

製作時に改定符号が合致するよう、製造現場との認識共有が重要です。

デジタルデータでやり取りする際などには、ファイル名に改定符号を盛り込むなど、取り違えの無い配慮をするとトラブルを防ぐことに繋がります。

5. 注記

三面図や表題欄だけでは表現しきれない指示は、注記にて記載します。

注記には一般公差や仕上の指示、洗浄・梱包などの取り扱い上の仕様・規格の他、各部品特有の指示が盛り込まれる場合があります。

注記の例

注記には製造・取り扱い時に守ってほしい要求事項を記載しますが、余り盛り込みすぎるとコストアップや工期の長期化に繋がりますので、特別な要求がない限りは製造方法に合わせた一般的に受け入れられやすい指示にとどめておくとトラブルを回避できます。

例えば、板金部品なのに、「指示無き角部はC0.2とする」などと指示をすると、製造現場からクレームが入る可能性があります。

このような場合、「指示無き角部は糸面取りのこと、バリ取り機の使用も可」などとすると、製造現場からも受け入れられやすい指示となります。

6. 表面粗さ

特に機械加工部品の場合などは、部品に適用する一般的な表面粗さが図中で指示される場合があります。

表面粗さ
表面粗さ表記の例

上記のように、指示の無い箇所全般に適用される表面粗さと、図面中に指示のある表面粗さが記載されるのが一般的です。

支持の無い箇所全般に適用される表面粗さは、素材のままとするのか、全体的に除去加工が必要なのかの判断に重要な意味を持ちます。

特に、「~」の記号は「除去加工なし」を意味し、素材のままで良い事を意味します。

( )内の図面中に指示される表面粗さは、加工の仕上げレベルを規定します。

Ra1.6程度であれば一般的な切削加工で十分ですが、より厳しい要求だと切削加工後に研削加工を入れる必要があるかもしれません。

この表記によって、材料の取り扱いや加工工程が決まってきますので、重要な記載事項となります。

今回は一般的な図面の見方について解説しました。

企業によってテンプレートや記載事項が異なりますので、あくまでも参考例としてお役立ていただければ幸いです。

機械部品の設計や製作に関するお問い合わせは、お気軽に下記お問い合わせ先よりご連絡ください。

小川真由プロフィール画像

< 筆者紹介 >
2004年慶應義塾大学大学院修了後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)の航空宇宙カンパニーに入社し新規航空機の開発に携わる。5軸加工を中心とした精密機械加工業者での修行を経て、株式会社小川製作所に合流。
製缶・溶接・研磨加工、精密機械部品の製造・供給、機械設計・開発支援の3つの事業を手掛ける。WEBメディアを中心に、情報発信も積極的に行う。2024年よりNews Picksのプロピッカーとしても活動。

<主なWEBメディア掲載実績>
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